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私の「1990年代~2010年代JAZZ名盤」(新宿店)

ジャズの黄金時代といわれた50年代、60年代は遠い昔となってしまった90年代。これまで様々なモードやスタイルを通過しつつもリスナーに対してその時代時代に常に新鮮なサウンドをもたらしてきたジャズ。この年代以降においては、もはやジャズが他ジャンル、多ジャンルの要素を取り込んだうえで提示するのではなく、それぞれのミュージシャンが自分自身のなかにある音楽性を独自の表現方法でアウトプットしたものが、リスナーそれぞれが認識する〈JAZZ〉との接点となった。これまで〈幻の名盤〉とされていたものや〈レア盤〉の再発も急激に進み、ある意味でジャズは〈平等〉になりつつある。自分だけの名盤を探すのはこれからだ、なんて言ってもみたくなる。

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新宿店/塩谷邦夫
TOWER VINYLバイヤー

Us3『Hand On The Torch』

ロンドンのHIP HOPユニットUS3、ジャズ名門ブルーノートより93年発表のデビュー・アルバム。なんとそのブルーノート音源を自由にサンプリングしてOKというから驚いた。そして実際にラジオから流れてきた“カンタループ”を耳にして驚いた。なんとハービー・ハンコックの有名曲“Cantaloupe Island”そのまんま使い!サンプリングというもの自体はビースティ・ボーイズなんかですでに知ってはいたけれど。これは斬新だった。誰にでも分かる元ネタの引用。しかも聴きやすいし、元ネタ探しが楽しめる(今でも)。そしてブルーノートの狙い通り、ロンドンに少し遅れて日本でも〈踊れるジャズ〉を探し回る人が増えた。その頃、少し価格帯の下がったジャズ名盤帯シリーズがCDショップにはずらりと並んでいた。時を同じくして、中古LPはその値段をじわりと上げた。


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Guru『Jazzmatazz』

米国東海岸のHIP HOPユニット、ギャング・スターのMCグールー。彼のライフワークともいうべく〈ジャズマタズ〉シリーズの第一弾が本作。ジャズを筆頭に先達が残したブラック・ミュージックへのリスペクトに溢れた内容はもちろんのこと、賛同するミュージシャン達を集めて実りのある共演の場を作ったことがすごい。ドナルド・バード、ロイ・エアーズ、ロニー・リストン・スミス、ブランフォード・マルサリス、コートニー・パイン、ロニー・ジョーダン、DCリー、エンディア・ダヴェンポート、カーリーン・アンダーソン、MCソラーなどなど。亡くなる3年前のVo.4('07)まで続いたこのシリーズ。他の作品も聴くべき所は多いが、やはりこの一枚は別格だ。“イントロダクション”、やっぱりかっこいいな。


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Robert Glasper Experiment『ブラック・レディオ』

常に第一線を走り続けるピアニスト/コンポーザー、ロバート・グラスパー。本作は2012年にリリースしたブルーノートでの4枚目。その内容は、ジャズとともに彼を培った重要な要素であるR&Bに大きく深く踏み込んだグラスパーの世界観がストレートに表現されたもの。エリカ・バドゥ、ミシェル・ンデゲオチェロ、ミュージック・ソウルチャイルド、レイラ・ハサウェイらをゲスト・ヴォーカルに招き、オーガニックなネオソウルの感覚が色濃いなかで、初期デヴィッド・ボウイの“ヘルミオーネへの手紙”やニルヴァーナの“Smells Like Teen Spirit”のカヴァーもそこにしっかりと馴染ませている。グラスパー自身によるセルフ・プロデュース作だ。翌年、第二弾『Black Radio 2』が発表された。


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Esperanza Spalding『Junjo』

バークリー音楽大卒業後に弱冠20歳にして同大学で最年少講師として教鞭を執った才媛ベーシストのデビュー・アルバム。編成は3人。作曲者としてもクレジットされているキューバ生まれの2人、ピアノのアルアン・オルティス、ドラムのフランシスコ・メラ、そしてエスペランサのダブル・ベース。冴えわたるベース・プレイがとにかく眩い。後にヴォーカルも積極的に取り組んでいく彼女だけれど、ここではスキャットのみ。でもその歌声がまた眩い。新しい才能が世に出た瞬間の記録とは、こういうことをいうんですね。チック・コリア作の“Humpty Dumpty”、エグベルト・ジスモンチ作の“Loro”、ジミー・ロウルズ作の“The Peacocks”など取り上げる曲のセンスも新鮮に感じる。この後、リリースの度に彼女の表現領域は意欲的な拡がりをみせ続けている。


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Kamasi Washington『ザ・エピック(3CD)』

フライング・ロータス主宰のブレインフィーダーから発表した3枚組のスタジオ・フル・アルバム。テナーサックス奏者カマシ・ワシントンの実質的なデビュー作といっていいだろう。170分を超えるヴォリュームのレコーディングには総勢60名以上ものミュージシャンが参加している。サンダーキャットやケンドリック・ラマーなど80年代生まれのLA気鋭のミュージシャン連中だけでなく、スタンリー・クラークやハーヴィ・メイソンといったレジェンド達も信頼を寄せるジャズ・プレイヤーである彼が鳴らすのは、21世紀のスピリチュアル・ジャズ。もちろん、あの時代の一部のそれとはわけが違う。あくなき自己探求を繰り返し排他的な世界へと迷い込んでしまうものではないのでご安心を。スケール感のあるコーラスとアンサンブルが演奏者とリスナーの幸福な共存を包み込むかのよう。


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Brad Mehldau『The Art of the Trio Vol.2』

稀代のピアニスト/コンポーザー、ブラッド・メルドー。本作はラリー・グレナディア(b)、ホルヘ・ロッシ(ds)とのトリオ編成で97年から01年にわたってワーナーから発表した〈アート・オブ・ザ・トリオ〉シリーズの2弾。97年、NYヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音だ。メルドーの才気溢れるフレージングと対をなす自由闊達なロッシ、そして絶対に二人を離れさせないグレナディア。“The Way You Look Tonight”では小気味よさをもって、“Moon River”では雄弁さをもって、このピアノ・トリオの魅力がダイレクトに伝わってくる。他の4枚もそれぞれ聴き所が多い。パット・メセニーとの共演作や、音楽を手掛けた映画『ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール』のサウンドトラック盤などと併せて、ぜひチェックを。


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上原ひろみ『スパイラル <通常盤>』

2003年、TELARCから世界に向けた衝撃のデビュー・アルバム『Another Mind』で我々の前に登場した天才ピアニスト。翌年の次作『Brain』に続いて発表されたのが本作『Spiral』('05)。前作に続いてのドラム、ベースとのトリオ編成。確かなテクニックで刺激的な演奏を存分に聴かせてくれる。オープニングを飾るタイトル曲“スパイラル(螺旋)”。この概念をこれ以上の饒舌さで表現した音楽を自分は他に知らない。続く〈三人編成のオーケストラための音楽〉群でも楽曲の深みは以前にも増し、曲調はさらに独創的に。そしてラスト、縦横無尽にシンセ弾きまくりの“リターン・トゥ・カンフー・チャンピオン”!このプレイを聴いてからあらためて彼女のピアノを聴いてみると、そのアグレッシヴさが、さらによく分かる。


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Diana Krall『ザ・ガール・イン・ジ・アザー・ルーム <限定盤>(LTD)』

93年のデビュー以来、順調にキャリアとセールスを積み上げてきたカナダ生まれのダイアナ・クラール。2004年発表の今作は、これまでのキャリアの中では異色作かも。前年に結婚したエルヴィス・コステロとの共作が6曲、他にモーズ・アリソン、トム・ウェイツ、ジョニ・ミッチェル、そしてコステロのカヴァーありと。彼女の魅力である中低音域のハスキーな歌声がブルージーなアルバムの雰囲気に見事にマッチ。唯一無二の世界を作り上げている。プロデュースは彼女自身とトミー・リピューマ。また本来のスタイルが楽しめる、ドラムレスのトリオ編成でインティメイトにスウィングする『Love Scenes』(97)、クラウス・オガーマンのアレンジによるストリングスをバックにボサノヴァを歌う『Quiet Nights』など他の作品もぜひ聴いてほしいな。


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Norah Jones『ノラ・ジョーンズ(+1)』

名門ブルーノートからの鮮烈過ぎるデビュー・アルバム。全米総合チャートでNo1を獲得、グラミー賞では最優秀アルバム賞を含む8冠に輝いた。彼女が奏でる音楽自体は極めてオーセンティックなもの。フォークやカントリー、ブルース、ジャズなど自身が幼少期から影響を受けてきた音楽をストレートに表現したものだ。初めて聴いた時から、てらいのない、自然体さが誰の耳にも溶け込んでゆく。そして最大の魅力はやはり優しく包み込むような、そのスモーキーな歌声。ジェシー・ハリス作の“Don't Know Why”や自作のタイトル曲“Come Away With Me”はスタンダード・ナンバーの仲間入りをするまでにそれほど時間は掛からないと思う。瑞々しい感性の新しい名曲と、ハンク・ウィリアムズやホーギー・カーマイケルの名曲が並ぶ素敵な一枚。


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Rachael & Vilray『Rachael & Vilray(EU)』

2016年に米国音楽の良心Nonesuchからメジャー・デビューを果たしたマルチ・ミュージシャン集団レイク・ストリート・ダイヴのヴォーカリスト、レイチェル・プライスがギタリスト/シンガー/作曲家のヴィルレイと結成したデュオ、レイチェル&ヴィルレイの1stアルバム。古き良き時代のジャズを彷彿とさせるアコースティックなサウンドが流れ出すと、そこがどんな場所であろうとも瞬く間に〈あの時代〉へとタイムスリップ。レイチェルのチャーミングで少しレイジーな歌声、控えめでツボを押さえたギターとピアノ、そしてオリジナル曲のレベルの高さ。まさに〈未来のスタンダード・ソング〉。細野さんとミハルさんのSWING SLOWやクロード・ソーンヒル、ランディ・ニューマンやピザレリなんかと続けてゆったりと聴きたい。レコード棚の並び、チェックしなきゃです。


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タグ : タワレコ名盤セレクション

掲載: 2020年06月17日 14:58

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