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特集

ヤン富田とペーター・フィッシュリ、ダヴィッド・ヴァイス

バナー写真
左:《庭園にて》2008-10
ヴィデオ ヴィデオ・スチル
©The artists.
Courtesy The artists; Galerie Eva Presenhuber, Zürich; Sprüth 
Magers Berlin/ London; Matthew Marks Gallery, New York

右:ヤン富田
写真:グレート・ザ・歌舞伎町

今日は、〈ユーモア〉について少し考察してみよう。音楽において〈ユーモア〉というと僕は真っ先にヤン富田(先生)を思い出す。ブルース・ハークやレイモンド・スコットにも通ずる上質ユーモアのセンスを持つ1952年東京生まれのヤン富田、彼が1992年にリリースした2枚組『ミュージック・フォー・アストロ・エイジ』は1作目にしていきなりジャンルを超えて殿堂入りしてしまった名作だ。エレクトロ・アコースティックやミュージック・コンクレート、実験音楽を飲込みながらも、ジャズ、クラブミュージックの軽快さとユーモアを兼ね備えたこんな作品がかつてあっただろうか。パッケージを開ける前、帯には「遂に完成しました。末長くご愛聴下さい。むずかしい内容ではありません。」、──そこからまずやられる。ヤン富田は不思議な存在だ。

日本初のヒップホップ・アルバムとされる、いとうせいこうの『MASS/ AGE』をプロデュースしたり、高木完などと日本の初期クラブシーン形成に大きく関わっていたかと思うと、20世紀現代音楽の極みの一つであるジョン・ケージの『4分33秒』を堂々と自身のアルバムで演奏(もちろん無音のトラック)、また、そのダブ・ヴァージョンも収録するという破天荒なことをやってのけてきた。相当実験的なことをやっているにもかかわらず、〈実験性〉が持つ取っ付きにくいエッジの強さをうまくユーモアで包み込んで、聴き手を楽しませ、和ませてしまう(聴き手は知らないうちに感性を大きく揺さぶられている)。決して4つ打ち音楽ではないのにクラブミュージック畑から絶大な支持を得ているのも納得出来る。

また、スティールパンというそれまであまりなじみのなかったエキゾチックな楽器をメイン楽器として導入、現地トリニダード&トバコにも行き録音をし、エレクトロニクスと大胆に組み合わせることであの音色の持つ独特の宇宙感を存分に引き出すことに成功している。日本のファッション/ポップ・カルチャーをバック・グラウンドに登場し、これまで常にその分野で影響を与え続けてきたカリスマ的存在。ポップ・カルチャーは、移り変わりが激しいので数年も経つと、あっという間に流行が代わり、使い古しとなったものはどうしても〈時代感〉を醸し出してしまう。

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カテゴリ : Exotic Grammar

掲載: 2010年11月19日 18:30

更新: 2010年11月19日 21:47

ソース: intoxicate vol.88 (2010年10月10日発行)

text:町田良夫(音楽家/美術家)

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