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カテゴリ : Exotic Grammar

掲載: 2011年01月05日 11:43

更新: 2011年01月06日 12:54

ソース: intoxicate vol.89 (2010年12月20日発行)

text:片山杜秀

赤穂浪士とサンタクロース

赤穂浪士と聞くと、サンタクロースを思い出します。

サンタクロースはひとりだけれど、赤穂浪士は47人もいる。サンタクロースは子供たちへのお土産をそりに満載して家々を回ってくれるけれど、赤穂浪士は槍の先に吉良上野介の白髪首ひとつをぶらさげて、主君浅野内匠頭の墓前にだけ捧げる。だいぶん違うようでもあります。

でも、どちらも雪の日にプレゼントをする話ではありませんか。いい子にしていればサンタさんが来る。一生懸命苦労すればかたきを討てる。しかも報いのあるのは雪の日だ。足もとが悪い。寒い。動きにくい。ところが肝腎なことは、そんな面倒な日にこそ、意表を突いて起こるものなのです。それでこそドラマです。

赤穂浪士の物語は、講談、浪曲、小説、映画……、あらゆる媒体を通じ、日本人の魂をうち続けてきました。そして、その大もとには『仮名手本忠臣蔵』という長大なお芝居があります。歌舞伎でもさかんに上演される。しかし、元は文楽。人形浄瑠璃です。

人形浄瑠璃とは何か?

浄瑠璃とは、役者と歌手の中間みたいな、太夫と呼ばれる演者が、だいたい三味線の伴奏で、ふしを付けて物語る芸能のこと。琵琶法師の『平家物語』の弾き語りが大本とも言います。

今日の人が映画やテレビドラマを観るように、昔の人だって面白いお話を見聞きしたい。でも、能のような本格的芝居に接するには、舞台も居るし、人手もお金もかかる。そこで琵琶法師をはじめとする語り物の芸人の出番。長大な物語を説明から台詞から楽器伴奏からひとり何役で全部やってくれる。安上がりだ。

そのうち、沖縄経由で日本本土に三味線が伝来する。琵琶より手軽。音色は柔らかで艶やか。表現も闊達。結構づくめ。安土桃山時代から、日本中に三味線が広がる。語りと伴奏を琵琶法師のようにひとりでなく分業し、太夫と三味線のふたりで物語る、いろんな節回しの浄瑠璃ができてくる。

けれど、人間はだんだん贅沢になります。どんなうまい太夫と三味線で物語を聴いていても、それだけでは物足りない。視覚も欲しい。そこで人形。浄瑠璃に合わせて太夫の横で動かす。源平の武将やお姫様の人形を操る。視聴覚あいまった方が楽しい。こうして人形劇と浄瑠璃がくっついて、人形浄瑠璃の誕生です。関ヶ原の合戦よりも前に、その原型は登場していました。

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