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特集

激動の2011年、日本のロックの未来はどっちだ!

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2011年12月01日 16:45

更新: 2011年12月01日 16:45

ソース: bounce 338号(2011年11月25日発行)

座談/岡村詩野、加藤直子、金子厚武  構成/編集部




加藤「毎年恒例になりましたが、ここでは来年以降のブレイクが期待される、今年注目の若手ロック・バンドは誰だ!?&来年に向けての展望ということでお話を窺えればと」

金子「具体的にこういうサウンドが……みたいな傾向はわかりづらいですよね。そういう意味での明確なトレンドはそんなにない気がする」

岡村「そうね、音楽性というよりもっと嗅覚的な、曖昧な形でバンドが集まったりしている感じはあるけど。最近はライヴハウスの数がやたらと増えて、生で音楽を聴かせる場がとにかく多いから、盤よりもむしろライヴで楽しむ、現場の空気を味わいたい人たちが多くなっている感じがあるよね。たぶん夏フェスとかが定着したことで、各地に小〜中規模のフェスやイヴェントが企画されているし、特に東京あたりはそれがまた矮小化されて日常的に行われている。そういうことも理由としてあるんじゃないかな」

加藤「盤は買ってもらわないと本当に困るんですけどね……。それはともかく、ライヴを見せる場がこれまで以上に多くなったことで、音楽性に限らず〈匂い〉が通じているバンド同士が集まりやすくなっているっていう。それがなんとなくこちらからしてみればシーンというか、〈塊〉として見えているという状況なんですかね」

金子「去年の〈TOKYO NEW WAVE〉だったらオワリカラを中心とした新宿MARZやMOTIONあたりで演っている一群があったけど、他にもTHEラブ人間や撃鉄がいる下北沢とか、ひらくドアや井乃頭蓄音団なんかの中央線周辺だったり。地域性って言うとデカイですけど、そういう小さい塊みたいなのはより見えてきてるのかな」

加藤「いわばかつての〈AIR JAM〉みたいなノリですよね。音楽性はバラバラだけど、なんだか集合体として見えている感じが」」

岡村「アーティスト同士の繋がりは昔より密だよね。それがいい場合もあれば、見ていて内輪っぽいと思う時もあるんだけど。それにアーティストもイヴェント出演に積極的で、小規模なものでも気軽に出たりするから、わりとリスナーとアーティストの垣根がそんなにないっていうか、良く言えばいっしょになってひとつの現場を作ってる感じがするんですよ。だからそういう場にフィットできる、そういう場を盛り上げられるアーティストやバンドがやっぱり現状は強いっていうのがあるような気はするね。そういう人たちが頭角を現してるイメージはあるかも」

金子「良くも悪くも音楽性よりキャラクターというか」

岡村「アーティストシップとか、カリスマ性とかスター性っていうのがあまり必要とされていない雰囲気っていうのがあるかもわからない。手が届かない人たちよりも、リスナーと地続きでいっしょに楽しめるほうに興味を持ちがちというか」

金子「そこから一歩抜きん出る人たちがいるといいですよね」

加藤「インディー臭いバンドが本物、カッコイイとされている感じがあるというか。まあ、いまに限ったことじゃないかもしれないけど——ところで、個人的に今年気にしてたアーティストってどのあたりですか?」

岡村「私は八丁堀にある〈七針〉に出ることが多いバンドかな。ceroやシャムキャッツ、ALFRED BEACH SANDAL、あとスカートとか、昆虫キッズあたりの、ロックに極端なこだわりを持たない、あまり通過していない人たち。七針ってライヴハウスとも言い切れない場所なんだけど、渋谷とか下北沢とか、ライヴハウスが充実しているエリアじゃないところなのもおもしろいなと」

金子「あとはミーマイモーとか。確かに七針は今年注目されました」

岡村「このへんの東日本ぽい雰囲気がいいよね。言い方は良くないかもしれないけど、粗野で野蛮な感じがしない。特有のインテリジェンスがある」

加藤「NYで言うならマンハッタンじゃなくてブルックリンみたいな感じでしょうか(笑)」

金子「ど真ん中じゃない感じ、ちょっと実験的なことをやったりしてることも含めてそうかも。僕は、ブルックリンという名前が出てきたからじゃないけど(笑)、いまのUSインディーの流れにある、例えばCzecho No RepublicとかNOKIES!あたりのヴァンパイア・ウィークエンド系、ちょっとトロピカルなギター・ポップをやってるバンド、あとはHOTEL MEXICOやFriendsとかのグローファイ系が興味深かったですね。2000年代まではストロークス、リバティーンズ、アークティック・モンキーズとかに影響を受けたバンドがたくさん出てきたけど、今年はもうそのへんがひと段落して、近年の世界的なトレンドが本格的に日本へも来たなっていう印象はすごいある」

岡村「実際にそのバンドはいまのUSインディーに影響を受けているの?」

金子「HOTEL MEXICO、Friendsは確実にそうですね」

加藤「まだかなり一部って感じはしますけどね。これから増えていくのかもしれないけど」

金子「そうですね。今年いろいろ取材をしているなかで聞いたのは、わりとキャリアのあるアーティストのなかにはいまのUSインディーがおもしろいってことで自分たちの楽曲にその要素を反映させているケースがあったりしたけど、若いバンドには意外と少なかったな。それも不思議だけど」

岡村「あと、今年は女王蜂とか撃鉄が広く注目されたのも大きいんじゃない?」

加藤「とりあえずヴィジュアルとかパフォーマンスのインパクトで魅せる、キャラが立っている人たちですよね」

金子「あと匿名性を持たせているのも多いですよね。相対性理論的な、顔を出さないもの。宇宙人とか、メジャー・デビューしたandropとか」

加藤「andropは顔出ししない、というわけじゃないですけどね。あとパスピエというのもいます」

岡村「まあ見せ方はどうあれ、曲が書けないとどうにもならないな、というのは逆に痛感する。メロディーメイカーとしての資質がちゃんとあるバンドが求められる傾向が、どんどん強くなってる気もする、単純に」

金子「岡村さんが若手で気になってるソングライターは?」

岡村「私は圧倒的にTHEラブ人間の金田(康平)くんとシャムキャッツの夏目(知幸)くん。この2人はメロディー自体がダントツにキャッチーで開かれていると思う。例えば音の質感とか雰囲気とかで〈あのバンドね〉ってわかる人たちはいるけれど、曲が印象に残るバンドって実はそんなにいないと思うのよ。アレンジがまだまだでも、エッジーさがなくても良くて、出てきた頃のスピッツみたいな、ちゃんと曲が書ける人たちがもう少しいるといいかなっていう気はしますね」

加藤「確かに、長く一線で活躍している人は、インパクトというよりは、〈いい曲〉を確実に作ってきている人ですもんね——ということで、最後になりますが来年に向けて読者の皆さんに注目してほしいアーティストを訊きたいのですが」

金子「僕は、Turntable Films。HOTEL MEXICOをリリースしているSECOND ROYAL所属のバンドで、新旧のUSインディー、フォークやカントリーにも精通してて、シャムキャッツとかceroあたりとも繋がっているから、立ち位置的にもおもしろいです。来年には新作が出ると思うので」

岡村「私はさっき名前を出したけど、スカートかな。スカートの澤部(渡)くんは曽我部恵一や岸田繁、前野健太に追いつきそうなソングライターの素質を持ってる人だと思う。耳もいいから制作の仕事もできるし、結構万能なアーティストとして活躍していくんじゃないかな。あと、どついたるねん、カメラ=万年筆といったあたりにも期待してる」

加藤「私は……もちろん、おもしろいなと思うアーティストはたくさんいるんですけど……んー……(悩みすぎ)」

岡村「上の世代のアーティストが怯えるぐらいの逸材が出てきてほしいよね」



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