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シャムキャッツ

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2011年12月01日 16:45

更新: 2011年12月01日 16:45

ソース: bounce 338号(2011年11月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武



ただのグッド・ミュージックにはしたくない……!?



シャムキャッツ_A



オワリカラやSEBASTIAN Xなど新宿を拠点とする若手バンドが集合した『TOKYO NEW WAVE 2010』や、アンダーグラウンドで活躍するハードコア・バンドを中心としたオルタナ・フェス〈東京BOREDOM〉への参加、またceroや昆虫キッズといったバンドとの交流——これら新潮流の交点としていま注目を集めているシャムキャッツが、“渚”“サマー・ハイ”という2枚のシングルに続くミニ・アルバム『GUM』を完成させた。彼らが初作『はしけ』を発表したのは2009年の春だが、それ以降の道のりは決して平坦ではなかったようだ。

「『はしけ』を出した後、バンドがあんまり上手く動かなくなって、ライヴも練習もそんなに楽しくない日々がありまして。CDを出す前は何も考えずに勝手にやってたんですけど、いろんな日程がどんどん決まっていっちゃうのが自分たちのリズムに合わなくて、ちょっと疲れちゃったんです。それで、まずは一度自分たちだけでやろうと。バンドの出音とかグルーヴ、自分たちの核が何なのかっていうのを確認したかったし」(夏目知幸、ヴォーカル/ギター)。

こうして昨年は自主制作で3枚のデモを発表した後、今年からuminecosoundsの古里おさむをプロデューサーに迎えて共同作業を開始。一発録りでバンドのグルーヴを閉じ込めると共に、デジタルとアナログが同居した独自の質感も手にしている。

「古里さんはソロの時からずっと好きなんです。全部カセットテープで録音した独特な音色の音源とかを出してて、その雰囲気もすごく良くて」(菅原慎一、ギター)。

「理想を言えば、最初からアナログで録ったほうが人の表情が見える音になるんですよね。今回に関しては、プロトゥールスで録った後に全部のトラックをアナログのリールに通してて、2つの音を使い分けてミックスしてるんです」(夏目)。

アナログの質感を纏ったサイケデリックな音像に加え、“渚”“サマー・ハイ”というシングル・タイトル、それに続く『GUM』にも〈海〉をモチーフとした歌詞が散見されることから、近年のチルウェイヴ系などアメリカ西海岸のバンドとのシンクロが感じられるが、これには彼らの出身が関係しているようだ。

「出身が浦安なんで、もともと海に近いんですよ。その雰囲気っていうか、埋立地の感じを出してやろうっていう気持ちはありました。埋め立て地って歴史がないわけで、俺らが第一世代みたいなもんなんですよ。そのルーツのないことの寂しさみたいな感じはあるんじゃないかな」(夏目)。

『TOKYO NEW WAVE 2010』に参加していたバンドの多くは、新宿をはじめとした都市生活者としての音楽を鳴らしていたが、シャムキャッツがそのなかで少し異色なフィーリングを醸し出していたのは、この出自の影響が大きかったのだろう。眼前に広がる海の開放感と、埋立地であるがゆえの寂しさの同居は、まるで男女の始まりから終わりまでを描いたようなアルバムのムードにも反映されているように思う。

「男の子が3か月間ぐらいでいろいろなことを感じていく流れにしようっていうアイデアはありました。『GUM』っていうタイトルも、男の子が勝手に遊んでる感じっていうか、タバコはまだ吸ってなくて、ガムを噛んで退屈してる感じがいいなって」(夏目)。

どこかで社会に適応することを拒む男の子的な感覚というのは、DIYを大事にするバンドの根底に流れているもので、だからこそ彼らはハードコア〜オルタナ寄りのバンドが集まる〈東京BOREDOM〉との接点もあるのだろう。しかし、最終的に彼らは自分たちがやっているのはポップスであるということを否定しない。

「〈メロディーを放棄するなんてあり得ない!〉って一時期言ってたよね?」(菅原)。

「言ってた(笑)。せっかく音楽をやるんだったら、メロディーを作るべきなんじゃないかって意識があるんですよね。ワーワー叫んでるなかに微妙に潜んでるメロディーとかも好きなんですけど、自分がやるんだったら歌じゃないとっていうのはあります」(夏目)。

交流の深いceroや昆虫キッズと共有するものを挙げるとすれば、やはりこの〈歌〉〈メロディー〉という部分が特に大きいだろう。作り手もリスナーの趣向も多種多様化し、さまざまなスタイルの音楽が溢れ返るいまだからこそ、改めて正攻法を大切にしようという彼らの姿勢は信用に値する。

「でも、〈グッド・ミュージック〉にはしたくないっていう意識もあるんですよね。いまって社会的にそういうのが欲しいっていうノリになってると思うんですよ。そこにちょっと反抗したい気持ちがあって、どこか歪なものとして残したいんです。ただ、グッド・ミュージックに反抗するっていう意味で、次は結構なグッド・ミュージックを作ってやろうっていう気もあるんですけどね(笑)」(夏目)。

ポップスへの愛情と、消えない反抗精神。シャムキャッツ、愛すべきバンドだ。



▼シャムキャッツの作品を紹介。

左から、シャムキャッツの2009年作『はしけ』(Wowee)、2011年のシングル“サマー・ハイ”(POT)


▼ウミネコサウンズの2009年のミニ・アルバム『宇宙旅行』(CINRA)

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