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特集

The Records of Gustav Leonhardt/グスタフ・レオンハルトのレコード(3)

合奏音楽のレコード~1960年代

1960年以降、レオンハルトは、録音活動に関しては、テルデック(独テレフンケン+英デッカ)とドイツ・ハルモニア・ムンディ(DHM)の2社の間でほどよいバランスを取りながら行われた。チェンバロ独奏のものはDHMの方が多いとはいえ、テルデックにもかなりのものがある。アンサンブルに関しては、アーノンクールとの共同作業はその後もしばらく続くが、レコードにおける共演はバッハやモンテヴェルディの大曲が多くなる(《ヨハネ受難曲》、《オルフェオ》、《聖母マリアの夕べの祈り》等)。これらは何れもテルデックである。テルデックにおいて圧倒的に存在感が大きいのは、リコーダーのフランス・ブリュッヘンとの共演である。チェロはほとんど常にアンナー・ビルスマ。ブリュッヘンとアーノンクールのグループによるヴィヴァルディの《室内協奏曲集》という面白いレコードもあった。このブリュッヘン、ビルスマにヴァイオリンのヤープ・シュレーダーを加えてクワドロ・アムステルダム(アムステルダム四重奏団)というグループが結成され、テレマンの《パリ四重奏曲》とクープランの《諸国民》を全曲録音した。

レオンハルト・コンソートのレコードも、全てテルデックから出た。ビーバー、シュメルツァー、ムッファトなどのオーストリア音楽は、アーノンクールのコンツェントゥス・ムジクスと共通のレパートリーだが、アーノンクールとレオンハルトでは随分印象が違う。レオンハルトの演奏の方が軽快で溌剌としている。また、レオンハルト・コンソートには、ウィリアム・ローズやヘンリー・パーセルなどイギリスのコンソート音楽の素晴らしいレコードがあった。これら、17世紀の渋い合奏音楽は誠に滋味豊かなもので、今日、コンサートにおいてもなかなか聴く機会の少ないものだ。

レオンハルト・コンソートと共に録音したバッハの《チェンバロ協奏曲》(全曲)は注目すべき企画であった。全曲とは言っても、一番有名なニ短調(BWV1052)だけは、アーノンクールがタヘッツィのチェンバロ独奏で録音した。それ以外の協奏曲は全てレオンハルトによるもので、4台までの全てのチェンバロ協奏曲、未完のニ短調(BWV1059)、そしてブリュッヘンとの共演による《フルート、ヴァイオリン、チェンバロのための三重協奏曲BWV1044》も含まれている。

一方、DHMの方には、ヴィオラ・ダ・ガンバのヨハネス・コッホや、ケルンの古楽奏者を中心に結成された「コレギウム・アウレウム」と共演したものがあり、特にコッホと共演したバッハの《ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ》(全3曲)のレコードは名演の誉れ高いものであった。コレギウム・アウレウムの《ブランデンブルク協奏曲》(全曲)は全体的には折衷的な演奏だが、レオンハルトが独奏を担当した第5番は秀逸。同楽団とはJ・S・バッハやC・P・E・バッハのチェンバロ協奏曲でも共演したが、特にC・P・E・バッハの《チェンバロ協奏曲ニ短調Wq.23》は鮮烈なまでの快演であった。

古巣のバーゼルのグループ、スコラ・カントールムの創立者であり恩師エドゥアルト・ミュラーの盟友でもあったアウグスト・ヴェンツィンガーの合奏団からも時折声をかけられたに相違なく、彼等との共演の様子は、レオンハルトがバッハに扮した1967年の映画『アンナ・マクダレーナ・バッハの日記』(DVD~紀伊國屋書店)で見ることが出来る。

1970年頃になると、クイケン兄弟が仲間に加わる。ハルモニア・ムンディから出た『ヴェルサイユの音楽』(マレー、フォルクレの弦楽器作品を収録)、テルデックのラモー《コンセールによるクラヴサン曲集》(シギスワルトとウィーラントのクイケン兄弟にブリュッヘンのトラヴェルソが加わった)の2枚のレコードは、大勢の日本の若手古楽器奏者を刺激して、ベルギー留学に赴かせるきっかけとなった。その後、73年と74年には、兄弟のそれぞれとバッハの《ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ》(全6曲)、《ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ》(何れもDHM)の全曲録音を行っている。

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カテゴリ : BLACK OR WHITE

掲載: 2012年07月24日 14:58

ソース: intoxicate vol.98(2012年6月20日発行号)

文・渡邊順生(チェンバロ・フォルテピアノ奏者)

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