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特集

寺山修司──偉大なる挙動不審者(5)

このうした動きには、寺山的なものをみてとることもできるが、完全に政治的なもの、同時に「妖しさ」「怪しさ」を脱色した広告代理店的「フラッシュモブ」への動きを感じさせずにはおれない。いわゆる「取り込み」の問題だが、寺山自身も、さきの「序論」の最後の方でこのように書いている。

私は、(中略)産業社会が抹消しようとするものを称揚し、産業社会から脱けでようとして、結果として、その共犯者となってしまうような愚の二回性に奉仕する気はさらさらない。もはや、ハプニングは、相対的な安定を保つ市民社会にとって、異物でも何でもなく、ただの退屈しのぎの「補完物」としてしかうつらなくなってしまっているのである。
同時に、シンボル的(儀式的)な演劇の不毛性もまた熟知している。それは、人間社会が、終末的、増幅的な方向にむかっているのに対する防衛的反作用であり、あらゆるものが死を目ざしている、という事実を知性が了解したときから、不滅なものの表徴として生みだされた。しかし、演劇は死にむかってゆく時代への反作用効果として、シンボル的に機能するするのではない。時代とともに、死にむかいつつあるものが、不滅の表徴としてのシンボルを作りだし、神話化してゆく過程さえも異化し、破滅して、まさに醒めて狂うための集団的な祭儀をくり広げようとするのである。
(前出「序論」、18ページ)

フラッシュモブにはまだこのような妖しさがないといってもいだろう。寺山的なものとは、こうした明晰な呪術性であり、その志向への問いかけは継続して有効であるだろうし、むしろ、〈演劇〉という枠を越えながら、より強烈に蘇りつつあるというだろう。本稿では、あえて映像作品にはふれなかったが、『さらば箱舟』の驚くべき新しさには、あらためて瞠目してしまった。メタファーとしての貞操帯、乱舞する怪人たち…。

エッセイスト、旅人としての寺山の挙動不審性にも、『アメリカ地獄めぐり』『花嫁化鳥 日本呪術紀行』などを通してふれたかったが紙数が尽きてきた。本稿で書いてきた影響圏・系譜学の記述の継続として今後に期したい。

今も継続し、あるいはまったく新たに蘇りつつ寺山的なるもの。何が寺山的なものであるのかを再確認するためにも、あるいは、寺山的ではないとしても、この時代に有効な方法を模索するためにも再発見しないわけにはいかない。

寺山修司(てらやま・しゅうじ)
 1935年12月10日、青森県生。詩人、演出家、写真家、映画監督。1967年「演劇実験室◉天井棧敷」を設立、主宰。世界屈指の前衛劇団として国際的に活躍。代表舞台に「毛皮のマリー」「奴婢訓」「レミング」。映画監督としても「書を捨てよ町へ出よう」「田園に死す」の他、実験映画も次々に発表。1983年5月、47歳で急逝。1997年に、青森県三沢市に、寺山修司記念館開館。2013年は寺山修司没後30年企画が、国内外で多数開催予定。


寺山修司没後30年記念認定事業

演劇

■寺山修司没後30年・パルコ劇場開場40周年記念公演「レミング 世界の涯まで連れてって」
作:寺山修司 演出:松本雄吉(維新派)
上演台本:松本雄吉/天野天街(少年王者舘)
出演:八嶋智人 片桐仁 常盤貴子 松重豊 ほか
◎4/21(日)~5/16日(木)会場:パルコ劇場(東京)
◎5/25(土)会場:中日劇場(名古屋)
◎6/1(土)、2(日)会場:イオン化粧品 シアターBRAVA!(大阪)

■劇団☆A・P・B-Tokyo「青ひげ公の城」
作:寺山修司
◎4/25日(木)~30(火)会場:ザムザ阿佐谷

■月蝕歌劇団「百年の孤独」
作:寺山修司 原作:ガルシア・マルケス 演出:高取英
◎7/11(木)~15(日)会場:ザムザ阿佐谷

■演劇実験室◉万有引力「邪宗門」
作:寺山修司 演出・音楽:J・A・シーザー
◎7/24(水)~28(日)会場:座・高円寺1

■Project Nyx「宝島」
作:寺山修司 構成・美術:宇野亜喜良 演出:金守珍
◎2014年2/7(金)~16(日)会場:東京芸術劇場

展覧会

■「寺山修司の原稿と本」
◎4/6(土)~7/28(日)会場:三沢市寺山修司記念館
 
■寺山修司と天井棧敷◉全ポスター展
◎4/10(水)~5/19(日)会場:ポスターハリスギャラリー

■「寺山修司」展
◎6/9(日)~10/27(日)会場:ワタリウム美術館

■ハービー・山口写真展 ~ 寺山修司と出会ったロンドン
◎8/1(木)~11/24(日)会場:三沢市寺山修司記念館
◎11/30(土)~12/27(金)会場:ポスターハリスギャラリー

映画祭

幻想と詩とエロチシズムの「寺山修司◎映像詩展」
◎6/1(土)~7(金)会場:名古屋シネマテーク
◎6/8(土)~21(金)会場:大阪シネ・ヌーヴォ

最新情報はこちら▶http://posterharis.com/


寄稿者プロフィール
東琢磨(ひがし・たくま)

1964年広島生まれ。東京生活を経て現在、広島在住。音楽批評。著書『ラテンミュージックという「力」』『全-世界音楽論』『おんなうた』『違和感受装置』『ヒロシマ独立論』。共著・編著に『「平和構築」って何ですか?』『フードジョッキー』『音の力』『残傷の音』『世界音楽の本』『広島で性暴力を考える』『広島の現在と〈抵抗としての文化〉 政治、芸術、大衆文化』『「大震災」とわたし』ほか。
近況:4月から広島女学院大学で「パフォーミング・アーツ論」担当。近刊に『ヒロシマ・ノワール』『ヒロシマ 忘却の記憶』(共編著)。著書の刊行に合わせて、6月に哲学者・川本隆史らとのシンポジウムが既に福岡で企画されている。その他、7月に東京、9月には北海道での各種イベントに参加予定。ローカルとローカル、日常のなかの文化/生活全般に関心がシフトしてきているが、「ヒロシマ」をテーマにした仕事にもう少しで一区切りを打ち、芸能史・身体文化全般の仕事に取り組みたいと考えている。

カテゴリ : BLACK OR WHITE

掲載: 2013年05月09日 21:21

ソース: intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)

文・東琢磨

インタビュー