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特集

Claudio Abbado――類ない「Horizontal Maestro」(3)



vsカルロス・クライバー(1930-2004)

ベルリン・フィルの足跡ひとつ挙げても、アバドが放つ穏やかな傘寿(80歳)の輝きと、カルロス・クライバーの悲劇的な晩年との落差は大きい。アバドは元々、カルロスに自分とは全く違う個性の輝きを見出し、尊敬もしていた。1981年のミラノ・スカラ座の初来日ツアーで、芸術監督のアバドは「セビリアの理髪師」(ロッシーニ)と「シモン・ボッカネグラ」(ヴェルディ)、カルロスは「オテロ」(同)と「ラ・ボエーム」(プッチーニ)を振り分けた。イタリアの「顔」であるヴェルディにもかかわらず、シェフが通好みの渋い「シモン」で、ゲストがプラシド・ドミンゴ主演の華麗な「オテロ」という対照は際立った。

94年のウィーン国立歌劇場日本公演ではアバドが「フィガロの結婚」(モーツァルト)と「ボリス・ゴドゥノフ」(ムソルグスキー)を担当。カルロスは「ばらの騎士」(R・シュトラウス)でついに偉大な父、エーリヒ・クライバーの境地に到達したとでも考えたのか以後、オペラの指揮をやめてしまった。カリスマ性で他を圧倒した点では、カルロスもトスカニーニ、カラヤンの側のマエストロだ。楽員と同じ地平に立ち、ホリゾンタルかつ双方向のコミュニケーションのうちに柔らかな音楽をつくるアバドは明らかに、21世紀を先取りした指揮者だった。筆者がまだ新入生だった36年前、早稲田大学の音楽同攻会(鑑賞サークル)で「アバドやベルナルド・ハイティンクは将来、巨匠と呼ばれる」と発言したら、エフゲニー・ムラヴィンスキーらに心酔していた先輩たちが一斉に爆笑。「お前、趣味悪いなあ。聴力検査でも受けたら?」と一蹴された。確かに今のアバドは巨匠と呼ばれているが、そんな古風な呼び方自体、「クラウディオ」にはふさわしくない。不思議な指揮者である。



Claudio Abbado(クラウディオ・アバド)
指揮者。1933年ミラノ生まれ。父親が院長を務めていたヴェルディ音楽院で学び、54年からウィーン音楽アカデミーで学ぶ。58年クーセヴィツキー賞受賞。63年ミトロプーロス・コンクールで優勝。65年、カラヤンの推薦で出演したザルツブルク音楽祭で高い評価を得る。以降、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場音楽監督を経て、89年ベルリン・フィルの音楽監督に就任。2001年のシーズンかぎりで辞任を表明。レパートリーは現代から古典、イタリア・オペラからドイツ・オペラまでと高いレベルで幅広い。



LIVE INFORMATION


ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 松島 2013
会場:
宮城県松島町 西行戻しの松公園ほか
会期:9/27(金)~10/13(日)
アーティスティック・ディレクター:ミヒャエル・ヘフリガー(ルツェルン・フェスティバル芸術監督)磯崎新(建築家)アニッシュ・カプーア(彫刻家)坂本龍一(音楽家)梶本眞秀(アーク・ノヴァ実行委員長)
http://ark-nova.com/matsushima/  

9/27(金)
 グスターボ・ドゥダメル ワークショップ プログラム
9/28(土)
 仙台フィルハーモニー管弦楽団 グスターボ・ヒメノ(指揮) ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」Op.43序曲、 交響曲第6番 ヘ長調Op.68「田園」(予定)
9/29(日)
 坂田藤十郎 他 歌舞伎/日本舞踊 坂田藤十郎「島の千歳」、長唄舞踊「勧進帳」 出演:坂田藤十郎/若柳吉蔵/尾上菊之丞/花柳基
10/5(土)6(日)
 定禅寺ストリートジャズフェスティバル アンコールライブ イン 松島 会場:アーク・ノヴァ コンサート・ホール、瑞巌寺参道、観光桟橋広場(予定)
10/12(土)
 ルツェルン祝祭管弦楽団 クラウディオ・アバド(指揮)
10/13(日)
 坂本龍一 アペトペスッペ!プログラム
 プログラムディレクター:坂本龍一
 出演:東北ユースオーケストラ、坂本龍一、大友良英



寄稿者プロフィール
池田卓夫(いけだ・たくお)

1958年東京生まれ。81年に早稲田大学政治経済学部を卒業し日本経済新聞社へ記者として入社。フランクフルト支局長時代に「ベルリンの壁」崩壊、ドイツ再統一を現地から報道した。音楽についての執筆は高校生で始め、86年から『音楽の友』誌に寄稿。『intoxicate』でも前身の『musée』創刊の96年から筆者。オペラや室内楽の制作も手がけ、会津若松市で昨年初演したオペラ『白虎』ではエグゼクティブプロデューサーを務めた。

カテゴリ : BLACK OR WHITE

掲載: 2013年09月09日 18:00

更新: 2013年09月09日 18:00

ソース: intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)

文・池田卓夫(音学ジャーナリスト)

インタビュー