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カテゴリ : スペシャル

掲載: 2013年10月30日 18:01

更新: 2013年10月30日 18:01

ソース: bounce 360号(2013年10月25日発行)

インタヴュー・文/加藤直子



ラウド・ロック・シーンみたいなものから遠ざかりたかった



SiM_A



「去年からフェスにいろいろ出させてもらいはじめて、その時は今年の半分ぐらいの本数だったんですけど、フェスの雰囲気に圧倒されちゃっていまいち結果を残せた感じがしてなくて。でも今年はツアーで53本こなした直後だったからすごい自信を持ってフェスの臨めて、先輩たちも〈今年は自信があるのがすごくいいね、堂々としてるね〉って言ってくれたんです。それはたぶんお客さんにも伝わってると思うし、何かしら残せたんじゃないかなっていう気はしてますね」(MAH、ヴォーカル)。

「去年までは〈観てみようかなー〉ぐらいの人が多かったと思うけど、今年は待っててくれてる感があった。あきらかに味方が多かったです」(SHOW-HATE、ギター)。

いまや飛ぶ鳥を落とす勢いで注目度を高めているSiM。夏フェス・シーズンを終えて間もないタイミングでの取材だったことから今夏の感想を訊いてみたところ、この発言の通り確かな手応えを得られたようだ。しかし、〈レゲエ・パンク〉を掲げてスクリーモやメロコアなどにレゲエ/スカをプラスした音楽性を突き詰めてきた彼らの道程は、決して華々しいものではない。2008年に『Silence iz Mine』でCDデビューしたものの、なかなか結果が出ない日々が続き、辛酸を舐めてきた。そんな彼らの運命を変えた一曲、“KiLLiNG ME”をリード・ナンバーとする前作『SEEDS OF HOPE』で一気に名を上げ、あれよあれよとラウド・ロック・シーンの台風の目となる。そして、レゲトン風のサウンドも採り入れた“Blah Blah Blah”、初の日本語詞に取り組んだミディアム“Same Sky”でバンドの新機軸を見せた今年4月のシングル『EViLS』のヒットを経て、これと同タイミングでレコーディングしたという3枚目のニュー・アルバム『PANDORA』をリリース――これはSiMが新たな地平を見る作品となることは間違いない。

「ラウド・ロック・シーンみたいなものから遠ざかりたかったんですよね。同じようなバンドが増えてきたので差別化を図りたかったというか。俺らはもともと〈レゲエ〉が核にあるんですけど、それがちゃんと伝わらずに、〈ラウド・ロック〉という括りのなかで埋もれるのも嫌だったし、もどかしかった。“Blah Blah Blah”がちょっと突き抜けた感じになったのにはそういう意図があって。“Same Sky”もそうで、レゲエとロック・バラードが混ざったような曲は他のラウド・ロック・バンドに〈こんな曲書けないだろ?〉っていうのをガツンと出したくて。で、今回のアルバムではエイジアン・ダブ・ファウンデーションやペンデュラムとかのテイストを採り入れながら、よりロックな感じを上手く出したかった」(MAH)。

どれもキャッチーで、さまざまな趣向が凝らされているものの見事にSiM色に染められた楽曲が並ぶなか、今回は昨年のミニ・アルバム『LiFE and DEATH』収録の“Amy”で見せていた、ブロステップやドラムンベースを盛り込んだナンバーが特に目立つ。このスタイルの幅をより広げようという意図があったそうだが、ワブル・ベースをみずから鳴らしていたのには、ちょっとびっくり。

「とあるエフェクターを買って、初めて“Amy”で使ったんです。同期を使うのはバンド的に好きじゃないから、自分たちで演奏することにはこだわっていて。あの音を出すのは簡単ですよ……と言いたいところですが、8時間くらい練習しました(笑)。その流れで、こういうのを入れた曲をもっと増やそうと」(SIN、ベース)。

シンセも入ったドラムステップ風の“Keep It Burnin’”をはじめ、とにかくさまざまな試みが曲ごとになされていて、展開が読めないナンバーも盛りだくさん。特に読めなさ度No.1なのが“March of the Robots”で、イントロではドゥーム・メタル的な重く淀んだ曲と思わせながら、メロコア~スカとみるみるその様相を変えていく感じが実に痛快だ。

「こういうのいちばん得意なんですよ。この曲は、マネージャーに聴かせた時もAメロになった瞬間〈マジか〉って言われて(笑)。これもラウド・ロックから一歩飛び出したいみたいなところで作りました。絶対俺らしか思い浮かばないだろう、みたいな。すごい気に入ってますね。こういった遊び心みたいなものはいままでもあったんですけど、メンバー間の意思疎通がそこまで噛み合ってなくて。でも今回はすごく噛み合ったから、上手く(各々の意向の)間を取りながらもやりたいことはすごくできました」(MAH)。

また、これまでの作品にも収められているダブ曲〈DUBSOLUTiON〉シリーズの最新版“DUBSOLUTiON #4”、演歌を思わせる歌メロや痺れるギター・ソロなどを盛り込んでこれまでになくエモいパワー・バラードとなった“Rosso & Dry”など、サウンドの振り幅も広い。

「“DUBSOLUTiON #4”は今回のアルバムのスタイルに合わせた曲にしているけど、オーガスタス・パブロっぽいピアニカを入れたりして俺たちのルーツを知ってもらおうというのもあります。“Rosso & Dry”は初期の頃にあったジャズ・レゲエっぽい曲がベースになっていて。歌詞は“Same Sky”の後日談なんですよ。その“Same Sky”を出した時もそうだったけど、“Amy”や“KiLLiNG ME”みたいにアッパーな曲しか知らない人には違和感があるかもしれない。でもここまで(振り切った)のは初めてなので、すごく気に入ってます」(MAH)。

「MAHくんから〈このギター・ソロは井上陽水の“傘がない”のソロみたいなイメージなんだよね〉って言われて。チョーキングから入るんですけど、自分の好きなように弾いてます。型にハマるのが嫌いなんで、音符とかは気にせずに」(SHOW-HATE)。

と、ここまでサウンドの話を中心にしてきたが、メンバーに新作でいちばん注目してもらいたい点を訊くと、意外なほど歌詞を意識して作っていることがわかる。

「歌詞に合わせてフレーズを考えたり、歌詞の物語の背景が見えるような作り方をしてるので、歌詞を読みながら後ろの音と重ね合わせて聴いてほしい」(SHOW-HATE)。

「いままでずっといろんなことに挑戦してきて、その積み重ねが今回に繋がっているので、このアルバムで初めてSiMを聴く人も、いいと思ったら前の作品も聴いてほしいなって思います。歌詞カードもライヴのMCに寄せた作りにしているので、これでSiMのライヴにも興味を持ってもらえたら。あとコーラスもやるんで、ライヴで歌を殺さないようなプレイを……というのは考えました」(GODRi、ドラムス)。

「歌詞にしろ何にしろ、全曲一貫してるのは人間っぽさを出したいってところ。プレイ中のミスも味になると思うし、そういうとこで人間味が出るかなとミステイクもOKにしていたり、勢いが出ればいいじゃんってっていうのを考えて作りました。〈ここ危なくね?〉っていうところも探してみてほしいです」(SIN)。

「歌詞なんだよな……結局。ブックレットを見てほしいですね。今回はCDを買った人にしかわからないようなことがたくさん詰まっているので、音を楽しむだけでももちろんいいんですけど、やっぱり音と歌詞を合わせて100%だから、できればCDを手に取って、デザインなども含めて楽しんでもらいたいです。歌詞だけじゃないメッセージも入っているし、本当にこだわり抜いて作ってるから」(MAH)。

歌詞のなかでももっとも印象的なのはラストの“Upside Down”。他とはだいぶ歌詞のタイプが違う。SiMというバンドのこれまでが赤裸々に綴られた私小説的な内容で、いまの彼らだからこそ言える、彼らが言うからこそ信じられる言葉に溢れている。勇気や希望という記号では表せない何かが、きっとリスナー自身の心に灯るはずだ。

「『SEEDS OF HOPE』を2011年に出して、そこからライヴのお客さんが増えはじめたんですが、それまでに6年かかってるんですよ。6年間は10人、20人しか呼べなくて、金もないしバンドが忙しくてバイトもできないなか、レーベルをクビになって……という過去がある。その後いまの事務所から声をかけてもらって、そこからやっと順調にいくようになったんだけど、やっぱり軌道に乗ってからしか知らない人がいまは多いんですよね。CDのセールスが『SEEDS OF HOPE』とその前とではかなりの差があることからもわかる。そういう人たちにこそSiMのこれまでを知ってもらいたいんです。いまの状況があたりまえじゃないんだっていうのを。本当は〈大手レコード会社をクビになった〉なんて言わないほうがいいのかもしれないですけど、俺はこういった経験を隠す必要はないと思うし、包み隠さず言うことで“Upside Down”に出てくる〈自分の人生を生きる〉っていう言葉がよりリアルに感じられるんじゃないかな。それを実践してる人間が作ったアルバムだからっていう意味で、言葉に説得力を持たせられるかなと。たぶんライヴで歌っていくたびに気が引き締まると思うんですよね。今後大事な曲になっていくはず――そういえば、1月にワンマン・ツアーをやるんですけど、ファイナルは新木場STUDIO COASTで2デイズなんですよ。実はコーストには思い出がすごいあって、まだ前のメンバーで活動していた2008年に、サム41のジャパン・ツアーの前座をいきなりやらされたんですよ。会場はパンパンだったのに、俺らのライヴ中、そのお客さんは微動だにしなかった。それがすんげえ悔しくて、その後〈あいつらにギャラが入るなんて許せない〉とか、ギャラなんてもらってないのに言われたりもした。だからコーストにはすごく思い入れがあるんですよね。1月にあのステージで“Upside Down”を歌ったらきっといろいろ思い出しそうだな。良い意味でひとつ区切りになる気がしますね。それをみんなで共有できるのって、夢があるなと思うんです」(MAH)。



▼文中に登場するSiMの作品を紹介。
左から、2008年作『Silence iz Mine』(FOUR-SiCKS)、2011年作『SEEDS OF HOPE』、2012年のミニ・アルバム『LiFE AND DEATH』(共にgil soundworks)、2013年のシングル『EViLS』(ユニバーサル)

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