ルー・リード 追悼の言葉(3)
だが、『ザ・ウォール』はパーソナルな作品だとすると、『ベルリン』は客観的にその時代が見られる作品だろう。僕は小学生の頃、よく家族とMax's Kansas Cityというニューヨークのレストランで晩ご飯を食べていた。そこにはウォーホルのテーブルがあり、ウォーホル周辺の人々がしょっちゅう来ていた。シンガーのジャニス・ジョップリンもそこで見かけた。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドもそこでハウス・バンドをやっている時期があった。僕にとって『ベルリン』は、この頃の僕の周辺で見ていた人々を最もよく表しているアルバムだ。シンガーのニコは、ここに収録されている《The Kids》や《Caroline Says》は自分についての歌だと語っていたが、他にもこのように生きていた人は当時たくさんいた。ルー・リードは小説家のように、この頃の人々を描いている。
デヴィッド・ボウイのプロデュースした『Transformer』のメイキングのDVDが発売されている。それを見ると、良い音楽プロデューサーとはどういう人かがよく見えてくる。必要なところに、ボウイが素晴らしいバック・コーラスを歌っている。それが曲を生き生きさせる。ルー・リードの素晴らしい作品をリスト・アップしたら、切りがない。アメリカの作家セルビーの ラフなストリート言語を使った文学の影響が感じられる『Street Hassle』も最高傑作の一つだ。フリー・ジャズの名プレイヤー、ドン・チェリーをゲストに迎えた『The Bells』も隠された名盤。クセナキス、ラ・モンテ・ヤングの影響が感じられる『Metal Machine Music』。ポップ・ソングライターとしての名作『Cony Island Baby』。詩人としての言葉の美しさで知られる《Romeo Had Julliet》が収録されている『ニューヨーク』。ウディ・アレンのようにコメディアンのような話しをしながら歌うライヴ版『Take No Prisoners』。それぞれは全く違うタイプのアルバムだが、どんなアルバムをとっても、必ずその良さがある。
ルーは最後まで新しいチャレンジに向かっていく人だった。
Lou Reed(ルー・リード)[1942-2013]
1942年 3月2日 NYブルックリン生まれ。65年にジョン・ケイルらと共にヴェルヴェット・アンダーグラウンドを結成。アンディ・ウォーホルに認められニコをゲスト・ボーカルに迎え、67年ウォーホルのプロデュースの「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ」でデビュー。ルーは70年にバンドを脱退。71年にRCAとソロ契約。72年、『ロックの幻想』でソロ・デビュー。その後も『トランスフォーマー』、『ベルリン』など、ロック史に残る名盤を数多く発表。その挑戦的ながらポップさを兼ね備えた音楽性と陰翳と知性に富むヴォーカル・ポエトリーリーディング、人間の暗部を深く鋭く見つめる独特の詩世界は後のパンク・ロック、オルタナティヴ・ロックに大きな影響を与えている。10月27日享年71歳で亡くなった。
寄稿者プロフィール
AYUO(あゆお)
作曲家・作詩家・Vocals, Irish Harp, Bouzouki, Open-tuning Guitar, Dance. ニューヨークで育ち、60年代の実験音楽、アートに影響受ける。18枚のアルバムを日米で発表。
www.youtube.com/user/NovaCarmina
http://ayuoworldmusic.wordpress.com/
LIVE INFORMATION
2014/1/21(火)19:30 開演 会場:渋谷Last Waltz:
『Lou Reed のBerlin全曲アコースティック・パフォーマンス
- ガーシュイン、ポーター, Ayuoの曲と共に』
演奏:Ayuo: Vocals, Dance, Guitar,瀬尾真喜子:Piano
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