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特集

JAPANESE HIP HOP――(1)



数年前は画期的に思えたミックステープも手法自体の目新しさは希薄になり(ANARCHYは逆に話題となったが)、各々が動きを模索していた雰囲気もある2013年。なかでは、弟のLIL KOHHという副産物もあって大きな注目を集めたKOHHがどう動くのか、新年に期待がかかる。サウンド面ではUS同様にロウなサンプリング志向への揺り戻しが90年代育ちとそれ以降の世代の両方に波及した結果、例えばFla$hBackS周辺とヴェテラン世代に近いトーンが感じられたりしたのも興味深かった。2014年は〈高校生ラップ選手権〉のような基盤作りの成果も出てきそうだ。*出嶌



RHYMESTER 『ダーティーサイエンス』 NeOSITE

万能感に寄りかからない絶妙なバランスは、前年のシングル“The Choice Is Yours”のアンセミックなカッコ良さを生んだIllicit Tsuboiの手腕の賜物でもある。センスのいい“ナイスミドル”など佳曲が並ぶなか、2曲で存在感を出しまくるMAKI THE MAGICに泣き笑いだよ。*出嶌

 

ISSUGI 『EARR』 DOGEAR/Pヴァイン

仙人掌やMr.PUGの初ソロ作も到着して賑わいを見せたMONJU周辺において、2013年も大活躍だったのがこの男。紫煙のように緩く立ち昇るラップは本作でさらに濃さを深め、16FLIP制作によるビートを抽出したインスト盤も登場。BudaMunkとのタッグ作も文句なしの黒さだった。*北野

 

Fragment 『感覚として。+ササクレ』 術ノ穴

バンドものを手掛けたりと2013年も話題作を輩出したご存知・術ノ穴の主宰。アイドルからの引き合いが増えたリミックス仕事も含め、よく名前が見られた彼ら最大のトピックはやはり本作。男汁満点のスリリングなものから夢見心地なファンシーな曲まで、幅広い作風で楽しめた。*加藤

 

KLOOZ 『DECORATION』 DREAM BOY

所属レーベル主宰のKEN THE 390らとのDREAM BOYSでも作品を残した彼の明るいキャラと風貌は、本作のカラフルな内容と共にシーンではむしろ貴重。ライミングを通じ、あくまでラップとしての妙味を引き出す作りは、歌寄りのスタイルに頼りがちな昨今こそ聴かれるべき。*一ノ木

 

DyyPRIDE 『Ride So Dyyp』 SUMMIT

前作に色濃かった孤独な闇を自分の一部としてやりすごす2作目なれど、いまだ晴れないその霧は日本語ラップ界を見渡しても独特。SIMI LABメンバー随一と言えるリリックの密度とグルーヴに流されないトラック群は、良い意味で笑って済まされない切実さを伴っていた。*一ノ木

 

SIMON 『B.U.I.L.D.』 STREET OFFICIAL/NEW WORLD

USのエイサップ・タイ・ビーツを起用するなどトレンドを見据えた作りで、現行シーンの先頭をひた走る存在感はもはや不動。“IN THE BOX”で起用したSONPUBは、その仕上がりと共にシーンの本流とは距離があった彼自身の名もクローズアップさせることに。*一ノ木

 

SNEEEZE 『ASYMMETRY』 Manhattan/LEXINGTON

ネットを通じたリリースの波もみるみる収束した昨今にあって、USの大手ミックステープ配信サイトへの参入もトピックとした彼。本作を勝ち取るまでの道のりは、まさしく真新しい一つの雛形だ。間を活かしたラップも、近年のシーンのムードを感じさせるに十分。*一ノ木

 

LowPass 『Mirrorz』 Pヴァイン

周辺で活動するSIMI LABらと共にラップ界の新たな流れの一端を担う2人組。本作に合わせてソロでのフリー作品を発表したGIVVNは、DEADMAN FILMSのメンバーとしてもSIMI LABやTHE OTOGIBANASHI'SらSUMMIT系のMVを手掛け、今後ますます熱い視線が注がれるだろう。 *一ノ木

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2014年01月15日 18:00

更新: 2014年01月15日 18:00

ソース: bounce 362号(2013年12月25日発行)

文・ディスクガイド/、一ノ木裕之、加藤直子、北野 創、出嶌孝次

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