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スウェーデンの人気女性ヴォーカリスト、ヴィクトリア・トルストイ、約5年振り新作

Viktoria Tolstoy

Viktoria Tolstoy © ACT / by Gregor Hohenberg

 

デビュー時は、ロシアが生んだ文豪、トルストイの血を引くシンガーということで一世を風靡。またEMI からリリースした作品は、エスビョルン・スヴェンソンをバックに迎えたていたことで、話題を呼びましたが、今や、そうしたエピソードとは無縁に、充実のキャリアを重ねていることを感じさせてくれます。

本作は、タイトル通り、映画音楽集。選曲は、『カサブランカ』『モダン・タイムス』といった、正に、アメリカン・クラシックスといった映画の名曲から、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のビョークの楽曲まで、正に時代を横断する選曲。しかし、歌の世界は、まぎれもないヴィクトリア・トルストイの世界。すがすがしい透明感と、独特の温かみ、ポップなアレンジによる歌の世界は、ノスタルジーをかきたてつつ、北欧ならではの洗練がなんといっても魅力的です。たとえば、『マジソン郡の橋』といったアメリカのカントリー・サイドを舞台にした映画の一曲"Why Should I Care"なども、スウェーデンの風景世界に様変わり。凛とした空気感につつまれた静謐なムードとともに、そこに生きる人々のぬくもりを感じさせるような温度感は、スウェーデンに生まれたアーティストだからこそ、表現しえた、自らのルーツからひと時も離れず表現を極めてきたアーティストの良さを感じます。

80年代終わりに大ヒットした映画『バグダッド・カフェ』の"コーリング・ユー"をオープニングにした構成も、40代以上のファンの心をつかむこと必至。当時の数々のジャズ・シンガーがカヴァーした名曲は、今なお、ミステリアスな魅力をたたえ、リスナーを、架空の、しかし、どこか懐かしい空間に誘います。

ニルス・ラングレン、イーロ・ランタラといった、ACTを代表するアーティストをバックに迎えた完成度の高いヴォーカル作品。さすがは、ACTの看板ヴォーカリストです。

【メンバー】Viktoria Tolstoy (vo), Krister Jonsson (g), Mattias Svensson (electric & acoustic bass), Rasmus Kihlberg (ds)

【Special Guests】Iiro Rantala(p), Nils Landgren: trombone(vo)

掲載: 2017年01月18日 13:45