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9月7日公開:CLASSICバイヤーによるセレクト・アイテム〈CLASSICマスターズチョイス〉

2018年9月7日公開

クラシックマスターズチョイス

正規音源初登場。サヴァリッシュの切れ味炸裂する1959年バイロイトの『さまよえるオランダ人』

サヴァリッシュ

ワーグナーのオペラが大好きな聴き手にとって、独Orfeoレーベルのバイロイト音楽祭シリーズは楽しみな聴きものではないでしょうか。当時36歳、才気煥発のヴォルフガング・サヴァリッシュ(1923.8.26-2013.2.22)が1959年にバイロイトで初めて『さまよえるオランダ人』を指揮した公演がバイエルン放送協会正規音源で今回初CD化されました。これは、ディスクでとはいえ、バイロイトでワーグナーを聴くことの高揚と興奮を掻き立ててくれる格好の一組です。
サヴァリッシュの『オランダ人』と言えば、フィリップスがステレオ録音した1961年公演が、『タンホイザー』、『ローエングリン』1962年公演と並んで、LP期から聴き継がれてきたものでした。なお1979年には、中央公論社がバイロイト音楽祭の音源をレコードで収めた全5巻からなる『ワーグナー大全集』を出版し、上記3作品にはこれらサヴァリッシュ指揮の音源が選ばれていました。非常に高価なものでしたが、CD時代の今日、デッカ・レーベルから“Wagner The Great Operas From the Bayreuth Festival”というCD33枚組BOXが出ており(規格品番:4780279)、ほぼ同内容の音源がずっと安価で揃います(異なるのは『パルジファル』で、中央公論社版は名高いクナッパーツブッシュ指揮1962年公演が選ばれ、デッカBOXではレヴァイン指揮1985年公演が新たに採られています)。
今回の1959年公演はモノラル録音ではありますが、雰囲気豊かな非常に生々しい音質で、既出音源とは圧倒的に次元が異なることを見せつけて圧巻です(リマスタリング・エンジニアは敏腕クリストフ・シュティッケル!)。
この年、『オランダ人』は7回上演され、ダブル・キャストだったタイトル・ロールは最初の4回をジョージ・ロンドンが務めました(後の3回はオットー・ヴィーナー)。当盤での歌唱も実に素晴らしく、クナッパーツブッシュが指揮した第1幕からのあの圧倒的な「オランダ人のモノローグ」(1958年ステレオ。タワーレコード限定盤,規格品番:PROC1660収録)を聴いたかたは絶対聴き逃せないことでしょう。
もうひとつ書き落とせないのは名匠ヴィルヘルム・ピッツが率いる合唱です!特に男声が第3幕の「水夫の合唱」で足を踏み鳴らしながら聴かせる、そそり立つような引き締まった声質は、まさに無双の極みと言いたい炸裂ぶり。この箇所はオケの金管群も底を打つような独特の質感を備えた響きを全開させる絶好の聴きどころです。
序曲はラストで救済のテーマを奏さずに一気に第1幕へと突入する初稿型。ここに象徴されるサヴァリッシュの切り結ぶ鮮烈な音楽の奔流が、何よりこの全曲盤に衰えを知らない生命力を吹き込んでいるのです。


ワーグナー: 歌劇《さまよえるオランダ人》1959年8月5日バイロイト音楽祭ライヴ録音

曲目
ワーグナー(1813-1883):歌劇《さまよえるオランダ人》
[CD1]
1.序曲
2-8.第1幕
[CD2]
1-9.第2幕
10-15.第3幕

演奏
ダーラント船長…ヨーゼフ・グラインドル(バス)
ゼンタ…レオニー・リザネク(ソプラノ)
エリック…フリッツ・ウール(テノール)
マリー…レス・フィッシャー(アルト)
舵手…ゲオルク・パスクーダ(テノール)
オランダ人…ジョージ・ロンドン(バリトン)
ヴォルフガンク・サヴァリッシュ(指揮)
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団

録音
1959年 8月5日 バイロイト音楽祭 ライヴ録音(モノラル)

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ワイラースタインとトロンハイム・ソロイスツが聴き手を忘我の世界へと誘う『浄められた夜』

ワイラースタイン

『黄金のアデーレ 名画の帰還』という2015年制作の映画に、作曲家シェーンベルクの孫にあたる青年弁護士が偶然コンサートホールで祖父の名作『浄められた夜』が演奏されることを知り、万感の想いでこの曲を聴くシーンがありました。映画では弦楽六重奏版が奏されていましたがこれはもともとシェーンベルクが1899年に書いた最初の形で、後年、弦楽合奏版が作られました(1917年。さらにコントラバス・パートを手直ししたのが1943年改訂版)。
当盤に聴く『浄められた夜』は弦楽合奏版(1943年改訂版)による演奏。デッカ・レーベルから次々と力作盤を出し、今や動向を注目させずにはおかないチェロ奏者、アリサ・ワイラースタインが、高音質レーベルとして評価の高いPENTATONEから第1弾となるアルバムのメインに選んだのはこの作品でした。実は前半にとても素敵な演奏でハイドンの2曲のチェロ協奏曲が収録されています。諸盤では情感豊かで時にパワフルに、時に濃厚に音楽を表現していた彼女がこのハイドンでとても伸びやかに旋律を紡いでいるのを聴いていると、ゆったりと満ち足りた心持ちにさせてくれるのでした。次いで聴こえてきたのは、大切なことこそ注意深く小さな声で語られるのだと思わせる繊細なピアニシモ。そこから湧き起こる旋律のうねりは実に感興豊かで、リヒャルト・デーメルが書いた『浄夜』の世界に引き込む非常に意志的な凝集力に溢れています。ワイラースタインは精強な名手揃いのトロンハイム・ソロイスツの面々に対置し、まるで忘我の境地で渾然一体とアンサンブルに没入しているかのよう。であればこそ、そこから生まれてくる音楽の混じり気のなさが美しさをたっぷりと感じさせてくれるのです。高品位録音の素晴らしさも特筆されます。聴く時間によって違った貌を見せてくれる、何度でも聴き直したいお薦めの一枚です。

ハイドン: チェロ協奏曲第1&2番、シェーンベルク: 『浄められた夜』(HB/DIGI)

曲目
(1)-(3)ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809):チェロ協奏曲第2番 ニ長調 Op.101 Hob.VIIb-2
(4)-(6)ヨーゼフ・ハイドン:チェロ協奏曲第1番 ハ長調 Hob.VIIb-1
(7)-(11)シェーンベルク(1874-1951):『浄められた夜』Op.4(弦楽合奏のための編曲版)(1943改訂)

演奏
アリサ・ワイラースタイン(チェロ)、
トロンハイム・ソロイスツ、ガイル・インゲ・ロツベルグ(コンサートマスター)

録音
2018年4月 セルビュ教会(トロンハイム、ノルウェー)

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新宿店:森山 慶方

森山 慶方
所属
新宿店
名前
森山 慶方
趣味
音源チェック
書店巡り
ラグビー観戦(JRFUメンバーズクラブ会員)
声楽と指揮を楽しみレベルでまた再開したいなと夢想…
好きなジャンル
オケもの、オペラ・声楽曲、古楽
愛聴盤
  • フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル『シューマン:交響曲第4番』
  • ベルティーニ指揮ケルン放送響『マーラー:交響曲第3番』
  • クナッパーツブッシュ指揮バイロイト祝祭管 ワーグナー:舞台神聖祭典劇『パルジファル』

9月にまつわる名曲その1 R.シュトラウス「4つの最後の歌」~9月

今回は9月にまつわる名曲を2曲ご紹介いたします。1曲目はリヒャルト・シュトラウス(1864~1949)が最晩年に作曲した管弦楽伴奏歌曲集「4つの最後の歌」から「9月」です。ソプラノのための作品で、作曲者84歳の1948年に作曲されました。4曲からなる2曲目ですが、作曲は4曲中の最後、9月20日に仕上げられました。詩はドイツのノーベル賞作家、ヘルマン・ヘッセ(1877~1962)が1927年に書いた「9月」。1927年はヘッセが問題作「荒野のおおかみ」を上梓した年で、50歳という人生の「9月」にあたっていました。 秋の訪れの早いヨーロッパの季節感を反映した詩となっていて、晩年のシュトラウスとしてもは自らの生涯を重ねる思いもあったのだと思います。シュトラウスは、この曲を1906年に建てられたモントルーのホテルで書き上げました。フェアモント ル モントルー パレス(Fairmont Le Montreux Palace)はレマン湖畔に位置し、伝統的でエレガントな雰囲気をもち、湖とアルプスの素晴らしい景色を望むことができます。この曲の最後のホルン・ソロなどは、アルプスの夕暮れを思わせるような美しさをもっています。

名曲だけに数多くの名盤がひしめいています。LP時代から有名なのはシュヴァルツコップとセル(WPCS-50581)やヤノヴィッツとカラヤン(UCCG-52182:10月24日再発売予定)ですが、シュヴァルツコップ&カラヤンという、この2つを集約したようなライヴ録音も存在します!1956年6月20日、ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライヴで、CD時代になってから初めて発売されました。カラヤンはオーケストラに所属するホルンの伝説的名手デニス・ブレイン(1921~1957)のソロを曲の最後にもってくるため、通常2曲目に演奏される「9月」を4曲の最後に演奏しました。現在定着している曲の順番は作曲者の意思でなく、1950年のフラグスタートとフルトヴェングラーによる初演時も異なった曲順だっただけに、カラヤンによる曲順変更の試みもこうした経緯を反映しています。そして何より、そのブレインによるホルン・ソロが抜群の美しさなのです!現在、このボックスでしか入手できませんが、モノラルながら当時のライヴ録音としては音質も良く、ご興味のある方にはぜひ聴いてみていただきたいと思います。

Herbert von Karajan - Choral Music 1947-1958<限定盤>

曲目
[CD1~2]
J.S.バッハ:『ミサ曲ロ短調 BWV.232』~エリーザベト・シュヴァルツコップ(Sp) マルガ・ヘフゲン(A) ニコライ・ゲッダ(T) ハインツ・レーフス(Bs) ウィーン楽友協会合唱団 フィルハーモニア管弦楽団(アリアのみ), ウィーン楽友協会管弦楽団(ウィーン交響楽団)(合唱付き曲のみ) (録音:1952~1953年, モノラル)
[CD3]
ブラームス:『ドイツ・レクイエム Op.45』~エリーザベト・シュヴァルツコップ(Sp) ハンス・ホッター(Br) ウィーン楽友協会合唱団 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(録音:1947年, モノラル)
[CD4~5]
ベートーヴェン:『ミサ・ソレムニス ニ長調Op.123』~エリーザベト・シュヴァルツコップ(Sp) クリスタ・ルートヴィヒ(Ms) ニコライ・ゲッダ(T) ニコラ・ザッカリア(Bs) ウィーン楽友協会合唱団 フィルハーモニア管弦楽団(録音:1958年, ステレオ), ベートーヴェン:『ああ、不実なる人よ Op. 65』『歌劇「フィデリオ」~「人間の屑!・・・希望は捨てない」』~エリーザベト・シュヴァルツコップ(Sp) フィルハーモニア管弦楽団(録音:1954年, モノラル), モーツァルト:『アヴェ・ヴェルム・コルプスK.618』~ウィーン楽友協会合唱団 フィルハーモニア管弦楽団(録音:1954年, モノラル), R・シュトラウス:『4つの最後の歌』~エリーザベト・シュヴァルツコップ(Sp) フィルハーモニア管弦楽団(録音:1956年ライヴ, モノラル)

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9月にまつわる名曲その2 バルバラ「9月(なんて美しい季節)」

もう1曲はフランスのシャンソン歌手、バルバラ(1930~1997)が1965年に作詞作曲した「9月(なんて美しい季節)」Septembre (Quel Joli Temps)をご紹介します。この曲は、近年クラシックの歌手が手掛けるようになるほど、メロディーが柔らかく明暗に富んだ美しい作品です。また、歌詞の内容も若い女性の心情を歌ったもので、先のヘッセやシュトラウスとはかなり趣きが違っています。歌詞の内容は次のようになります。美しい9月のある日、ある女性が恋人と別れます。恋人は船に乗って行ってしまいます。別れの日は、ほんとうにいい天気。そんな日の別れ。でも春(来年の5月)にはまた逢えるかも、と歌っています。ヘッセやシュトラウスが「9月」に自分の人生を想い、来るべき死を「冬」に重ねているのに対し、また季節が巡って楽しい春が来ると歌っているところに、彼女が作曲当時35歳だったことを思い起こします。

筆者はこの曲をバルバラの歌ではなく、アンネ・ゾフィー・フォン・オッタ―の歌で初めて聴きました(Naive V5343)。2014年に発売された『Douce France(優しきフランス)』という2枚組アルバムで、1枚目にフランス近代歌曲、2枚目にシャンソンを集めた洒落た選曲がされていました。オッタ―の歌声も絶美で、瞬く間にこの曲の虜となりました。このアルバムもおすすめですが、本日ご紹介するのはバルバラ没後20年の2017年にフランスのピアニスト、アレクサンドル・タローが企画したトリビュート・アルバム『Barbara』です。タローは現代フランスを代表する豪華なゲストを招待し、彼独自のアレンジで聴かしてくれます。「9月」は、女優としても活躍している25歳のカメリア・ジョルダナが歌い、伴奏はタローが一人で演じています。YouTubeのプロモ画像にある通り、彼女はハスキーヴォイスで、語るように、表情豊かに歌っています。他の曲目でも、アコーディオンのローラン・ロマネリ、クラリネットのポルタル、モディリアーニ弦楽四重奏団など、世代やジャンルの異なるさまざまなアーティストが参加して、フランス文化の香りを濃厚に醸し出してゆきます。

Barbara

曲目
[CD1]
1) ピエール (prelude),
2) Cet Enfant-la ~ ドミニクA (singer), モディリアーニ弦楽四重奏団,
3) 美しい9月 ~カメリア・ジョルダナ(singer),
4) 私の恋人たち ~ ジュリエット(singer), ステファン・ロジェロ(contrabass), ローラン・ロマネリ(accordion),
5) くちびるの端に ~ヴァネッサ・パラディ(singer),
6) 死にあこがれて ~レディオ・エルヴィス,
7) Vivant poeme ~ジャン=ルイ・オベール(singer),
8) ピエール ~ティム・ダップ(singer), ローラン・ロマネリ(accordion), ルイ・ロッド(cello), 他,
9) 埋葬 ~ ベナバール(singer), ミシェル・ポルタル(clarinet), ステファン・ロジェロ(contrabass),
10) 鏡の向こう側 ~ジェーン・バーキン(singer), アルビン・デ・ラ・シモン(keyboards, bass guitar), ルイ・ロッド(cello),
11) C'est trop tard ~ アルビン・デ・ラ・シモン(singer, bass guitar, keyboard), エルヴェ・ジュラン(horn),
12) サンタマンの森で ~ロキア・トラオレ(singer),
13) ウィーン ~ジュリエット・ビノシュ(spoken text), ルノー・カピュソン(violin),
14) いつ帰ってくるの? ~インディ・ザーラ(singer), フランソワ・サルク(cello)
15) Les Amis de Monsieur ~ギヨーム・ガリエンヌ

演奏
アレクサンドル・タロー
(ピアノ、ハモンド・オルガン、ウーリッツァー・オルガン、プリペアード・ピアノ、キーボード、チェレスタ、ベル、アレンジ)

録音
2016-2017年、パリ、スタジオ・ギヨーム・テル

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特集 9月
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商品本部 洋楽部:板倉重雄

板倉重雄
所属
商品本部 洋楽部
名前
板倉重雄
趣味
レコード蒐集(SP~CD)、音楽書・美術書蒐集、野球観戦
愛聴盤
  • ヨゼフ・シゲティ、ミエチスラフ・ホルショフスキ『ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1&3番』
  • イェルク・デムス、バリリ四重奏団『シューマン:ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲』
  • ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団『シューベルト:弦楽四重奏曲第15番』

タグ : マスターズチョイス

掲載: 2018年09月07日 15:30