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やまぎさわまちこ『回転画』発売記念インタビュー

やなぎさわまちこ_1

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月に2枚目となるミニ・アルバム『回転画』(ぱのらま)をリリースしたやなぎさわまちこ。このアルバムは同時発売となったayU tokiOのアルバム『遊撃手』とセットで語られることも多い。それはayU tokiOによるプロデュースで彼のレーベルであるComplexからのリリースである、ということによるところが大きいわけだが、今回はこちらの『回転画』の方にフォーカスして、やなぎさわまちこに話を聞いた。同席していた猪爪東風(ayU tokiO)も会話に参加する部分もある。個人的な興味としてはDAW (注1) 時代においての生音的ポップスの在り方、みたいなところではあったのだけど、その辺は東風くんに別途訊くとして、やなぎさわまちこ作品としての在り方、みたいな感じの話になりました。これ読んで興味持った方はぜひ『回転画』と『遊撃手』両方聴いてみてください。できればチャクラも、、、

 

2018年7月31日 川崎某所

インタビュー、写真:吾郎メモ


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-前作はいわゆるエキゾチカ、トロピカルというか、細野さんの影響みたいなところが言われていたと思うんですけど。今回のを聴いてみると、前作の中で「右往左往」というソフトな曲があって、その路線を拡大したのが今作なのかなと思いました。

やなぎさわ:そういうことはないかもしれないです(笑)

今回はギロが入ってないね(笑)

やなぎさわ:言われてみればそうかもしれない。(笑)

前作のときは、ニューミュージックという印象があるという感想を持ったんですけど、今回のを聴くと、ちょっと後の時代、ニューウェーヴを意識したものに移ったのかな、と。

やなぎさわ:ニューミュージックってどのくらいの時代ですか?

―70年代中盤から80年くらいまでかな

やなぎさわ:なるほど。チャクラとかは80年代なので、後ろになったといえば後ろになったかな。

-チャクラの影響が大きいっていうのは前回も話してくれましたけど、コンポーザーとしての板倉文さんとかも掘ってる感じなんですか?(チャクラの他にキリングタイムなどもあり、さらに映画音楽でも活躍)

やなぎさわ:いろいろちょこっとずつは聴きましたが、小川美潮さんのソロとチャクラを主に聴いてます。

聴いててパッと頭に浮かんだのが、POP IND’S(注2)っていう雑誌のことなんだけど、、、ハッキリこうだとは言えないんですけど、そこに載ってた方たちの雰囲気を持ってるなぁ、と。日本の女子自作自演ポップスの流れ。鈴木さえ子とか遊佐未森とか。そういうところに近づいていってるのかな。今はそのような流れがあるようで無いというか、あんまり表に出て来てる感じがしないから新鮮なのかもしれないです。

やなぎさわ:特に意識はしていないんですけど、、、結果近いのかもしれません。遊佐未森さんのことは最初全然知らなかったんですけど、小川美潮さんの映像作品で遊佐未森さんが出ているのがあって同じ時代のシンガーソングライターなんだな、というのは思いました。それで同じ時代の人を探したときに鈴木さえ子さんとかも出て来て、少し聴いてみたり。鈴木さえ子さんって、自分でいろんな楽器を演奏したりするじゃないですか。いわゆるSSWみたいな感じではないですよね?

-アコースティック・ギターを持って、って感じのSSWとは少しちがうかな。ポップなアレンジをしてスタジオワークで作り込んでいくような感じですかね。箱庭的なんて言う風にも表現されたりするけど。今回の1曲目、パノラマ島というテーマから箱庭的なものも連想したりしたんですけど。

やなぎさわ:そういう意味では鈴木さえ子さんにも近いのかもしれないです。そこは意図したわけじゃないんですけど。自分でいろいろやろうとして。わたしが音楽的知識が乏しくてうまく言語で説明できないので、全部いろんな人にお願いして演奏してもらうのは大変というのもありますね。

パノラマ島という発想はどこから出て来たんですか?

やなぎさわ:じつはパノラマ「とう」ではなくて、パノラマ「じま」と読むんですけど。

あ、「じま」なんですね。僕なんかからすると、江戸川乱歩を想像してしまうんですけど。

やなぎさわ:そうですそうです。まさに。

でも、あれってもっとおどろおどろしい世界ですよね?

やなぎさわ:そうなんです。それをもっとポップにしてみた、というか。

小説家がパノラマ島を作って女を閉じ込める、というような話だったと思うけど、それがこの曲になったの??ものすごくポップでハッピーな感じでぜんぜんイメージが違うから、別のところから発想したのかと思った。

やなぎさわ:でもまさにそこなんです。これに関しては丸尾末広さんの漫画からなんですけど。

江戸川乱歩とかは興味があるんですか?

やなぎさわ:そうですね、、、ありますね。サブカルっていうか、アングラがけっこう好きで。

それで丸尾末広なんですね。なんか不思議なかんじがしますね、、、さっき鈴木さえ子さんの名前を出したんですけど、それから連想する洋楽として、XTC、アンディー・パートリッジとかはどうですか?

やなぎさわ:XTC、聴いたことはありますけど、、、あんまり洋楽には詳しくなくて。ニューウェーヴっていうか、その辺ではトーキングヘッズは好きなんですけど。

そうなんですね。トーキングヘッズってリズムのイメージがあるから、こういう箱庭的なポップスとはまた違う世界なのかな?と思ったけど。

やなぎさわ:トーキングヘッズはすごい好きで、打楽器の感覚とか、いろんな楽器の細かいリズムでアンサンブルを作る感覚はそこから来てる部分もあるかもしれません。

例えば、ビートルズとかが好きすぎて録音作業にハマっていく、みたいな感じはないですか?いわゆる「バンド」としての作品ではなくて、ソロ・アーティストが録音作品としてのポップスを作っていく、みたいな感覚。インディーのアーティストなんだけど、ポップスを目指しているみたいな。曲ごとにメンバーは変わってるんですよね?

やなぎさわ:今回、ドラムとベースと、ピアノを他の方に演奏してもらった曲が何曲かあって、ギターは東風くんで、それ以外は自分で演奏したんですけど。マルチプレーヤーになりたいと思っているわけではないんですけど、いろんな楽器を演奏することには興味があります。今回はやっとエレキベースを弾いてみたりしましたね。どうしても弾きたくて。

録音でいうと、好きで聴いている小川美潮さんの作品みたいにしたい気持ちは強くあったので、録音作品としてのポップスをつくりたい気持ちはあると思います。何がああさせてるのか、いっぱい聴いて試行錯誤したり。アレンジとかは少しは想像がつくんですけど、こないだ「あれはMIX混みで全てが絶妙なバランスで成り立っている」と東風くんに言われて。。そこまではまだ想像ができないですね。

この中でクレジット見たら「流星」「待ちぼうけ喫茶」が完全に東風くんの作詞作曲だったんですけど、これはまちこさんから依頼したという感じなんですか?

やなぎさわ:「流星」に関しては、完全にお願いしています。今回、自分が曲を作って、歌詞を書いてもらった曲あって最初「まちぼうけ喫茶」はその逆で、東風くんの曲に自分で歌詞書こうかと思ってたんですけど、上手くまとまらなかったので、歌詞の内容をこういう風にしたいっていうことをやんわり伝えて、それをもとに歌詞を付けてもらいました。でも、東風くんが作った曲を完全に自分でアレンジするというのをやりたくて、アレンジは自分でやりました。

そういう分業感があるんですね。あと、録音場所のクレジットで、「日野第一音楽室」っていうのと、「新所沢まぼろしの洋館」っていうのが書いてあるんですけど、これって実在しないんじゃないかと踏んでまして。なんでかというと、インタビューするにあたって調べたんですよ、そしたらなにも出てこなくて!そういうスタジオ的なものがあるかと思って。

やなぎさわ:(笑)そうですね、それはなんにも出て来ないですね。架空の、、、あるといえばあるんですけど、それは別にスタジオとかじゃなくて、新所沢まぼろしの洋館っていうのは、、、

そう呼んでいる所がある?

やなぎさわ:ピアノを弾いてくれたMAHOΩの森川あづさちゃんの家なんですよ。

猪爪東風(ayU tokiO):自分達が録音している音楽室が日野市にいくつかあるんですよ。公共の施設だったり、自宅だったりするんですけど、それをいちいち全部書くのもめんどくさいし、書かないのもいやだったので、とりあえず日野第一音楽室にしちゃおうってことで。で、そんな感じで名前決めちゃってるから、けっこうみんなに宅レコでお願いしたり、ayU tokiOの作品でもデータだけでやりとりしたりというのも多かったんですよ。それで、僕が自分で好きな名前つけちゃってるから、みんなも好きな名前付けていいよ、みたいに言ったら、好き勝手に自分ちの名前つけて送ってきたり、っていうのはありましたね。でも、実際すごいんだよね家(まぼろしの洋館)が。

やなぎさわ:巨大な一軒家の和室にグランドピアノが置いてある、、、。

今回のアートワークがすごい印象的なんですけど、ケースを裏表逆に使うっていうのは自分で考えたかんじですか?

やなぎさわ:裏表逆にするのはデザインをお願いした、MATERIALさんが、この写真を使って下さいって言ったら、こういう風に使いたいって言ってくれて。広く一面にしたかったんだと思います。

あと、象にこだわりがあるのかな、と思って。帯の裏にも象が歩いているデザインが隠してあったり。

やなぎさわ:アー写を撮ったり、ジャケ写を撮ったりっていうときに場所を探していたらこの公園を発見して(遊具の象の)存在感がすごいから、ここで撮りたい思って。それで、MATERIALさんにこの写真を使って下さいってお願いしたら、ものすごい偶然にもMATERIALさんがこのこの公園のことが大好きだったんですよ!ここ昨日も行ってたよ、っていうくらい凄い好きな公園だったみたいで。MATERIALさんもこの公園をいつか使いたいな〜と思っていたみたいなんですけど、そのずっとあたためていたアイデアをいろいろと入れてくれたんです。

やなぎさわまちことまちこの恐竜っていうバンドについて訊きたいんですけど、ライブと録音もの分けて考えたりしているかんじですか?録音についてはさっき訊いた感じであるとは思いますけど、少人数で緻密に作ったそれを再現するライブをやるのか、まるっきり別のモノと考えるのか。

やなぎさわ:再現したい気持ちもあって。去年、小川美潮さんのライブを観にいったんです。そしたら音源をほぼ忠実に再現したライブをやっていて、それを聴いてすごく感動したので、音源を再現するっていうのもやってはみたいんですけど、ものすごいいろいろ重ねちゃってるので、なかなか再現はできないっていうところで、どうしよう、ってところに来てますね(笑)

(笑)こんど、東京だけではなくて、地方もライブの予定が入っているじゃないですか。その辺はリリースツアーとしてやりたい感じだったんですか?

やなぎさわ:もともとは東風くんのツアーだよね。

東風:もともとayUtokiOの作品のツアーをやるって予定で僕が弾き語りで行こうとしてたんですよ。で、一生懸命段取りを作っているときに、そういえばまちこもリリースだよな、とふと思い出して、ねじ込んだんですよ。ほんとに同時にリリースするってすっかり忘れててツアーを組んでいるときもひとりで行くツアーのことしか考えてなくて、そういえば同日リリースなんだからカップリングでツアーしちゃった方が絶対にいいよな、って思って。で、チラっと言ったら、すごい行きたいって言っててそれで、そういう感じです。

前に居たバンドではツアーはけっこうやってたんですよね?

やなぎさわ:そうでね。前はよく行ってましたね。

でも、それとはぜんぜん違う雰囲気にはなりますよね。

やなぎさわ:そうですね。全然違うと思います。静かなのでもっと緊張する(笑)

最近聴いている音楽はありますか?

やなぎさわ:引き続き小川美潮さん

ソロを聴いているかんじですか?

やなぎさわ:そうですね。ソロ3部作を。

このミニ・アルバムを作るにあたって意識して聴いてたのも小川美潮さんですか?

やなぎさわ:そうですね。めちゃくちゃそうです。

このミニアルバムはどういう人に聴いてもらいたいとかありますか?

やなぎさわ:やさしい気持ちを持った人に(笑)

笑。もう少し具体的には??

やなぎさわ:小川美潮さんを聴いてるような人に聴いてもらいたいっていうのはあると思うんですけど、おこがましいかなって。

チャクラももともとはニューウェーヴな音楽だったと思うのですが、ファンもいっしょに成長しているというか、小川美潮さんのファンはかなり大人の人が多いのかなと想像できるのですが、若い人に聴いてもらいたいっていうのはあります?今のいわゆるインディーシーンの中で、みたいな。

東風:当時の、小川美潮さんがソロになったときのファンってどんな人たちだったんでしょうかね?チャクラはテレビ出演とかもあったのかなと思うんですけど。

チャクラはニューウェーヴの流れで、もう少し先端というかとんがったものだったと思うんですよね。

東風:リアルフィッシュとかのファン層とかも被るんですかね?細野さんやYMOを好きだった人の流れというか。

さっき言ったPOP IND’sの感じとか、あとはYENレーベルとかそういうものが好きな人もチャクラも好きだったのではないかな、とは思います。

東風:オタクな人というか、、マニアックな方に支持されるような女性だったんですかね?

オタクというとアレですが、、、やなぎさわまちこもそういうオタクというかマニアックな雰囲気のファンの方とかいないですか?キャラ的にもいると思うけど!

やなぎさわ:、、、どうでしょう(笑)



やなぎさわまちこ_2

注釈:

1.DAW:Digital Audio Workstationの略。PC上などで構築するデジタル録音のシステム。猪爪東風は生録音したものをDAWで綿密に再構築する、という印象

2.POP IND’S:80年代から90年代初頭に出版されていた音楽雑誌。もとはIND’Sという名前でインディーズ全般を扱う内容だったが徐々にポップスに寄せた内容に変化。日本の現行ポップスを数多く紹介していた。

タグ : インタヴュー

掲載: 2018年09月13日 14:51