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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.87

グラント・グリーン『フィーリン・ザ・スピリット』(1963)

GG

グラント・グリーン(g)
ハービー・ハンコック(p)
ブッチ・ウォーレン(b)
ビリー・ヒギンズ(ds)
ガーヴィン・マッソー(per)

1962年12月21日 ニュージャージーにて録音

曲目(オリジナルLP発売時):
01.ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ジー
02.ジェリコの戦い
03.ノーバディ・ノウズ・ザ・トラブル・アイヴ・シーン
04.ゴー・ダウン・モーゼス
05.時には母のない子のように

【アルバム紹介】
1.名ジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンの"黒人霊歌″を題材にした傑作
2.コード弾きはほとんどせず、主にシングル・ノートによるプレイが特徴
3.ピアノにハービー・ハンコック、ドラムスにビリー・ヒギンズらが参加

前週までは、3作連続でテナー・サックス奏者を取り上げてきましたが、今回はそのつながりのラストとなります。
本作の主役はジャズ・ギタリストのグラント・グリーンで、テナー・サックス奏者は参加していませんが、では、その3作と何の関連性が、と申しますと、すべてドラマーのビリー・ヒギンズが参加している、というのが答えです。
ハードバップ、ジャズ・ロック、そしてソウル・ジャズなど、実に幅広いドラミングを聴かせるドラマーであることがお分かりいただけたと思われますが、本作では4ビートに終始しないリズム解釈で異色のテーマを盛り上げています。

さて、閑話休題。主役のグラント・グリーンに切り替えて、本作の魅力をお伝えしてゆきましょう。 異色、とお伝えしましたが、取り上げられている楽曲は、アフリカン・アメリカン・スピリチュアル、つまり“黒人霊歌”と呼ばれるものでジャズ・スタンダードではありません。

グラント・グリーンはコード弾きはほぼすることがなく、主にシングル・ノートによるプレイが特徴のギタリストで、そのフレージングはパッションとソウルに満ち、それゆえ多くのリスペクトを集めた存在でした。そんなスタイルが本作のテーマにはピッタリで、アフリカン・アメリカンのスピリットをジャズの語法で表現しています。

バックは、ピアノには若かりし日のハービー・ハンコック、ベースにはブッチ・ウォーレン、ドラムスには先述のビリー・ヒギンズ、そこにパーカッションのガーヴィン・マッソーが加わった編成になっています。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
有名なゴスペル・ソング“時には母のない子のように”。

この曲の「サムタイムズ・アイ・フィール~」という厳かな歌い出しを、誰かの歌で聴いたことがある方は多いかもしれません。ゴスペル・ソングで有名な1曲です。
そんな歌の部分をギターに置き換えた一例としてこの曲の演奏を聴いていただけると、根底に流れるスピリチュアリティがジワリと感じられるでしょう。
やや重々しくリズムを刻むピアノ・リフの上を、グリーンのギターがじっくりとメロディを弾きこんでゆきます。そしてテーマの提示が終わると、そのままソロへと移ります。魂を込めてフレーズを紡ぎ出してゆく様子が伺えます。続いてハンコックのピアノ・ソロが続き、再びグリーンのソロになり、徐々にエモーショナルに高揚してゆきます。
テーマに回帰すると忠実にメロディを再演し、そのあともエンドレスに続くリフの上で、グリーンがリムスキー・コルサコフの『シェエラザード』に似たメロディを繰り返しつつフェイド・アウトとなります。
余談ですが、この約6年後日本ではこの曲と同名のタイトルのポピュラー・ソングが発売されました。それが寺山修司作詞で有名なカルメン・マキのデビュー曲として知られる一曲です(楽曲は黒人霊歌とは関係ないオリジナル曲です)。
本作は、アルバムのタイトルが示すとおり、グラント・グリーンのディープなスピリットを感じながら、じっくりと聴けるジャズ・ギターの傑作といえます。

国内盤UHQCD

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2020年07月24日 10:00