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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.252

アーマッド・ジャマル・トリオ『ジ・アウェイクニング』(1970)

AJ

アーマッド・ジャマル(p)
ジャミル・ナッサー(b)
フランク・ガント(ds)

1970年2月2日、3日、ニューヨーク、プラザ・サウンド・スタジオ

曲目:
01.ジ・アウェイクニング
02.アイ・ラヴ・ミュージック
03.パターンズ
04.ドルフィン・ダンス
05.ユーアー・マイ・エヴリシング
06.ストールン・モーメンツ
07.ウェイヴ

【アルバム紹介】
1.アーマッド・ジャマルの1970年インパルスでのリーダー作
2.マイルス・デイヴィスに影響を与えた音楽性
3.ヒップ・ホップのサンプリング・ネタとしても知られる

今回からピアノ・トリオ名盤を特集してゆきます。
最初の一枚は、アーマッド・ジャマルが1970年にインパルス・レーベルに吹き込んだ一作です。

1930年ペンシルヴァニア州のピッツバーグに生まれたアーマッド・ジャマルは元の名前がフレデリック・ラッセル・ジョーンズといい、20歳の頃にイスラム教に改宗し、名前もこの時から変わっています。
その音楽はマイルス・デイヴィスに影響を与えたことでも知られており、その独特のリズム感と“間”の使い方のセンスなどが他のピアニストとは違った大きな特徴だったと言われています。

1958年にシカゴのクラブでライヴ・レコーディングしたアルバム『バット・ノット・フォー・ミー』はジャマルの名声を決定づけた傑作ですが本作はその12年後、1970年という70年代の時代の節目にニューヨークでスタジオ・レコーディングされたものです。
また本作はサンプリング・ソースとしてヒップ・ホップの世界で多用され、その元ネタ・アルバムとして名高い一枚でもあります。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
耽美的名演“ドルフィン・ダンス”。

この曲はハービー・ハンコックが自身の代表作である『処女航海』に収録していたナンバーで、シンプルなメロディー・ラインと美しいコード進行がマッチした人気曲です。オリジナルはクインテット編成で書かれていますが、ピアノ・トリオでの名演としてはハンコック自身が1978年のアルバム(ロン・カーター、トニー・ウィリアムスと共同名義)『サード・プレイン』の中で、ビル・エヴァンスが1980年のアルバム『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』の中で取り上げています。ジャマルのこの演奏は1970年ですから、その両バージョンより早い段階で披露されたトリオ演奏といえます。
イントロは開放的なコードによる短いものですが、テーマ・メロディーを奏で始めると、独特のアクセントのリズムが、浮遊しているかのような流れを作ってゆきます。終始、ソロらしいソロはなく、あくまでメロディー・ラインを中心に置いた演奏で曲は進行してゆきます。耽美的ともいえるアプローチが曲に陰りをもたらし、ナイトリーなムードを醸し出しています。消え入るように終わるエンディングも秀逸です。
アーマッド・ジャマルは2000年代に入ってからは、上原ひろみのデビューのきっかけを作った人として知られてもいますが、2020年頃まで現役で活動し、2023年4月に前立腺癌のため亡くなりました。92歳でした。

国内盤SHM-CD

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2023年11月10日 12:00