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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.291

ポール・ブレイ『トプシー』(1955)

PB

ポール・ブレイ(p)
パーシー・ヒース(b)
ピーター・インド(b)
アル・レヴィット(ds)

1954年2月3日、8月26日&30日、ニューヨークにて録音

曲目:
01.トプシー
02.マイ・ハート
03.ザット・オールド・フィーリング
04.ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー
05.オータム・ブリーズ
06.アイ・ウォント・トゥ・ビー・ハッピー
07.マイ・オールド・フレイム
08.タイム・オン・マイ・ハンズ
09.ドラム・ワン
10.ジス・キャント・ビー・ラヴ
11.マイ・ワン・アンド・オンリー
12.52丁目のテーマ

【アルバム紹介】
1.名ピアニスト、ポール・ブレイによるオーソドックスなビバップ・スタイルが魅力
2.初々しさが際立つセカンド・リーダー作
3.渋いトリオのメンバー、スタンダード曲中心の選曲

今回はアルバム自体は非常にオーソドックスなビバップ系ながら実はそれがかえって異色な?ピアノ・トリオ作をご紹介します。ピアニストの名はポール・ブレイです。

ポール・ブレイは1932年カナダ生まれのピアニストで、そのキャリアの特色として、60年代以降のフリー・ジャズ系の活動で知られているところが大きいです。フリー・ジャズの名レーベルESPでのリーダー作や、ECMでのレコ―ディング作に傑作が多く、その緊張感にあふれる独特のプレイ・スタイルは崇高な雰囲気さえ漂わせ、それが人気の秘密でした。

そういった経歴を持ったピアニストが本作のようなストレートなビバップ・テイストのピアノを演奏している、ということが異色に感じるのは当然で、非常に初期の頃のレコーディングであるという点で、ある意味興味深く聴ける内容と言えるでしょう。本作はポール・ブレイにとってデビュー作に続くセカンド作であり。初々しくもあるそのプレイが大きな魅力になっています。
ベースはモダン・ジャズ・カルテットのパーシー・ヒースと、孤高の名ピアニスト、レニー・トリスターノの門下生であるピーター・インドを曲によって使い分け、ドラマーは知る人知るアル・レヴィット。
取り上げている楽曲は2曲の自身のオリジナル(2曲目、9曲目)を除いて、ほぼスタンダードという構成。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
ビバップ・ピアノが冴えまくるタイトル・チューン“トプシー”。

この曲は1930年代の後半にマルチ・インストゥルメンタル奏者で作編曲家のエドガー・バトルとベニー・モーテンやカウント・ベイシーの楽団で活躍したギタリスト、トロンボーン奏者で作編曲家のエディ・ダラムによって書かれたナンバーで、ベニー・グッドマンやカウント・ベイシーがいち早くレコーディングし、世に知れ渡りました。
曲はイントロもなく、頭からブラシワークのビートに乗って、ブルージーなテーマ・メロディを提示してゆきます。ピアノ・ソロに移ると、ポール・プレイの巧みなビバップ・センスに満ちたプレイが始まります。変に奇をてらったようなコワザを見せることなく、ストレートかつ正攻法なアプローチで押してゆくところが爽快です。やがて、ソロが一段落すると、ドラムスとのソロまわしのセクションを経て、テーマに回帰します。そして最後はエンディングへと向かい、高音域から低音域に向かって下降する音階を描き、曲を終えます。時間にして2分44秒と非常に短いですが、本作の各曲の演奏はほぼ2分台、3分台の小粒で中身の濃い演奏になっており、それもまた聴き進む上で、無駄のない流れになっています。
フリー・ジャズ突入以前のポール・ブレイのビバップ・ピアニストとしての一面を知るスタンダード・ジャズ・アルバムとして貴重な一枚であり、その一方で、50年代のモダン・ジャズのムードがいっぱいのピアノ・トリオ作であり、コーヒー片手にリラックスして聴くには最適の一枚とも言えそうです。

国内盤SHM-CD

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2024年08月30日 10:00