NHK大河ドラマで早くも話題!「風」を読み、「風」を作る才能があった江戸のメディア王「蔦屋重三郎」の魅力に迫る
1月スタートのNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」が早くも話題となっている。同作は、江戸時代に版元として一流の実績を残した蔦屋重三郎を主人公とした物語だ。TSUTAYAの店名の由来にもなっている蔦屋だが、どんな人物だったか知らない人も多いのではないだろうか。江戸のメディア王とも呼ばれる蔦屋重三郎について、詳しく見ていこう。
●時代の流れを読む力に長けた「蔦屋重三郎」
蔦屋が生まれたのは、遊郭の町として栄えた吉原。幼くして手引茶屋の養子となり、成長してからは遊郭の案内屋である「細身屋」を営んでいた。そんな中、蔦屋が版権を譲り受け、編纂刊行を手掛けたのが、吉原の遊女の名前や人気店などを記した情報案内書「吉原細見」だ。
これが大変な人気となり、さらにその後いくつもの書籍でヒット作を連発。初出版から10年もたたずして、蔦屋は一流店が並ぶ日本橋に「耕書堂」という書店を開き、巨万の富を築くことになる。
それを可能にしたのが、新人作家を発掘し、プロデュースするその腕前だ。日本史にも出てくる「滝沢馬琴」や「十返舎一九」なども蔦屋が見出した1人であり、江戸時代に流行した漫画「黄表紙」や「洒落本」を出版したのも蔦屋であった。
その後、商人文化が開花し自由な雰囲気であった時代から、質素倹約を促す新しい時代へと移り変わっていく。政府の取り締まりは一層厳しくなり、蔦屋の出版物も風紀を乱すものとされ、財産の半分を没収されてしまうことに。
しかし、ここでも持ち前の企画力で浮世絵師をプロデュースし、蔦屋は復活。浮世絵師として現代でも名の知れている「喜多川歌麿」や「東洲斎写楽」も、蔦屋が才能を見出したとされている。
そんな蔦屋についてより詳しく知れるのが、書籍「蔦屋重三郎」。大河ドラマ「べらぼう」の考証を担当した著者・鈴木俊幸が、蔦屋が出版してきた書物を時代の流れに沿って深く紹介している。著書の中で、蔦屋には「風」を読み、「風」を作る才能があったと語られており、時代の流れを敏感に感じる優れたアンテナを持つ人物であったと説明されていた。
処罰が課され、資本力が半減してからも才能は衰えることなく、江戸以外の新たな読者層に向けた営業を展開していった蔦屋。プロデューサーとしての優秀さに目が行きがちだが、商才豊かな商人であることにとどまらず、出版にかける強い思いが感じられる。歴史が大きく動いた時代の中で、「風」を起こしながら生きぬいた「蔦屋重三郎」の魅力から目が離せなくなりそうだ。
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掲載: 2025年01月24日 14:40