SISTER JET(3)
ビートルズしか聴いてないんです、っていうキャラでいたい
――あと、このバンドにはデビュー当初から〈ダンス〉っていうキーワードがあって。ビート・ロックで〈ダンス〉を掲げてるバンドって当時はあんまりいなくて、最近だとTHE BAWDIESとかと共振する部分があるのかな、と思うんですけど、シーンの状況もだんだん変わってきてるのを感じます?
ワタル「そうだね。周りも変わってきたね」
――ただ、SISTER JETのおもしろいところは、横の繋がりがないところから……というか、ホントに3人だけで、いきなりポーンと出てきたところかなと(笑)。
サカベ「ああ~、そうですね(笑)」
ワタル「そうなんだよね。友達がいないところから(笑)、〈これが最高だ!〉っていう3人の勝手な趣味と解釈で。でも本当にそうだと思う。もちろん横は意識してるんだけど……」
サカベ「うん。むしろすごい意識してますね」
ワタル「でも友達になりたいとは思わない!」
サカベ「友達になってくれないっていうか(笑)」
――(笑)3人の勝手な趣味と解釈で、っておっしゃってましたけど、確かに最初から自信がありましたよね。
サカベ「そうですね。こういう音楽やってる人っていまいないし、俺らはこれが2010年の音楽であると思ってる。自分たちのセンスを信じてるし、お互いリスペクトし合ってるから、だから間違いないって思えるんじゃないかな」
――加えて、〈踊らせる〉ために不可欠なグルーヴも相当強化されてきていると思いますが。
ケンスケ「ああ~、うん。軸になるものが自分のなかでないとイヤなんですよ。例えば、ハウス・ミュージックは4つ打ちっていうのが大体あるじゃないですか? だから周りがどうあってもバランスが保ってられる。そういうのがバンド(・サウンド)にもあって、それはみんなに見えないけど、自分のなかでそういうリズムを常に取り続けてられる状態じゃないとイヤで、このミニ・アルバムにはまだそれがある……あっ、〈まだ〉とか言っちゃった(全員笑)。いままで以上にちゃんとできてますね(笑)。だからなんか、それを崩したくないな、って最近はすごい思ったりしてて。みんなが必ず帰ってこれるリズム感っつうか。しかもポップなもので」
――だからこそ、リズム隊は暴れられるとか? 今回は、〈何やってんの!?〉って指さしたくなるぐらい暴れまくってますよね(笑)。
3人「あははは(爆笑)!!」
サカベ「いい突っ込みですね(笑)。そんなに不思議な感じになってますか?」
――ドッカン、ドッカンいろんなところにぶつかりながら、物ともせずにとにかく突き進んでいく、みたいな暴走ぶりが素晴らしいというか。
ケンスケ「サカベとか、すごいジャンキーみたいなベースだなって、最近になって思ったけどね(笑)。ホントにぶつかりまくってるっていうか(笑)」
サカベ「俺はケンちゃんのドラムのほうがそうだと思いますけどね。この人いっつも……なんて言ったらいいんだろうな? 感覚がすごい麻痺してるっていうか、とにかくパワフルでカオティックなもの好きで。エキセントリックな趣味なんですよ」
――そういう部分が含まれていつつも、〈キャッチーでピュアなビート・ポップス(前作のキャッチコピー)〉って言わせてしまうミラクルがこのバンドにはあるんですよ。
ケンスケ「そう! そこなんですよ。そこを崩しちゃダメですよね」
ワタル「やり続けないと」
ケンスケ「そこを、何とかして俺が守ってる」
ワタル「何? キーパー(笑)?」
ケンスケ「それは、2人にはわからないかもしれないけど、みたいな」
ワタル「別にわかりたくもないです!」
――まあまあ(笑)。で、今作はビート・バンド感を打ち出しながらも、楽曲を聴けば、リスナーとしての3人はブリティッシュ・ビート一辺倒でもない、っていうことがわかるわけで。
ワタル「うん。そんなこと言いながら、聴いてるのは全然違ったりするよね。俺は、シンガー・ソングライター系が好きだったり」
――例えば?
ワタル「そのなかでも最高峰なのは、ジュディ・シルとか、ジェイムズ・テイラーとか。最近はソウルも70年代のものを聴いてるし……もちろんビート・バンドは好きだけど、それは聴きすぎて飽きちゃったって感じで、別のとこに行っちゃってる。俺、思うんだけど、けっこう俺らって音楽ファンだよね? あんまり表には出さないけど」
ケンスケ「うん」
ワタル「なんかの雑誌に俺ら、〈実は洋楽のバックグラウンドがありながら、それをマニアックに出さない〉みたいに書かれてて、そこが強みなのかなって思った」
ケンスケ「出さないっていうか、出したらそのままになるっていうのはあるんじゃないの?」
ワタル「いやいや、だって、俺らって(取り上げられ方を見ると)なんか頭悪そうじゃん。ビートルズしか聴いてないんです、みたいな感じでさ。だから逆に、ビートルズしか聴いてないんだけど、って言いたいんだよ」
ケンスケ「それはある。言いたい」
ワタル「ビートルズしか聴いてないんです、っていうキャラでいたい。もっと音楽知ってる人、いっぱいいるしね。だから〈俺たちなんも知らないんです、でもこんなん出来ました〉っていうほうが格好良いな、って」
――とにかく出す音が格好良ければいいですもんね。
ワタル「うん」
――それで、だんだん状況が良くなってきてるっていうのは、いい音楽をブレずに鳴らしてきたっていう証拠だと思うし。
ワタル「うん」
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