SISTER JET 『JETBOY JETGIRL』 felicity
ソングライター=ワタルによるとんでもなくフレッシュでポップなメロディーもある。世界のド真ん中で〈I LOVE YOU!〉と叫ぶかの如く、〈ボーイ meets ガール〉な物語を老若男女が理解できるほどのシンプルさで綴った歌詞もある。だが、SISTER JETが鳴らすロックンロールを耳にした瞬間に込み上げてくる、得も言われぬ昂揚感の理由はそれだけではない。熱気と狂騒が充満する野性的なビートには、ビートルズからアークティック・モンキーズまで――60年代初頭から2000年代まで、時代ごとに変容しながら継承されてきたブリティッシュ・ビートの現在地点が刻み込まれている。ザ・フーが、キンクスが鳴らしたあのざらついたビートを〈イマの音〉として提示する音楽的な知性と体力が、スウィートなポップ・ミュージックの奥底で胎動しているのだ。そんなサウンドを前にして、ワクワクせずにいられるわけがない。
そして、届いたばかりの最新ミニ・アルバム『JETBOY JETGIRL』において、彼らはその〈ビート・バンド感〉をこれまで以上に前面に押し出している。堀江博久のハモンド・オルガンが炸裂する“恋してクレイジー”は、ロックがロールするどころか、ギリギリでぶっ壊れないぐらいの勢いでスピンしまくるモッズ・スピリット全開のナンバー。ブンブンと唸りを上げるベースとキース・ムーン直系のエキセントリックなパワー・ドラムが暴れる冒頭から、煌めくシンセが光の乱反射のように降り注ぎ、〈恋しよう〉なんてストレートな言葉を乗せたメロディーが天高く飛翔するサビへ――といった、彼らの美点が丸ごと凝縮された逸曲である。
そんなリード曲をはじめ、〈泣き笑いの毎日〉を性急なギター・リフでアッパーに蹴散らした“DJ SONG”や爆裂サーフ・ロックなインストゥルメンタル“JETBOY JETGIRL”、ベイ・シティ・ローラーズ“Saturday Night”の奔放な日本語カヴァー、エレポップやストリングス風のシンセで彩りを添えた“バイバイハニー”“さよならポケット”など、とことんパワフルに攻めた全6曲。デビュー時から〈ダンス〉を旗印に掲げてきた彼らだが、本作ではいよいよ、ビート・ロックの骨格でダンス・ミュージックにも通じる肉体的なグルーヴを獲得することに成功している。ジョンが“Help!”で内側からポップに爆発し、ポールが“Yesterday”という発明を成し遂げた『Help!』のSISTER JET版らしい(?)次作=〈爆発編〉がいまから本当に楽しみだ。
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