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インタビュー

ひいらぎ “お父さん”



普段は照れ臭くて素直に言い出せない〈ごめんね〉〈ありがとう〉──。〈お父さん〉への感謝の気持ちを綴った、あったかいニュー・ソング!



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父の日と母の日、なぜか盛り上がるのは母の日。子供のときにお腹が痛くなると、口を突いて出てくる言葉はなぜか〈お母さーん!〉。差をつける気など全然なかったけれど、思えばいつも、お父さんは横に置かれることが多かった気がする。そんなお父さんが、たぶん生きているなかでもっとも複雑な気持ちになるのが、娘の結婚なのかもしれない。嬉し寂しい……きっと言葉では言い尽くせない気持ちを持て余しているだろう、娘を持つすべてのお父さんに贈る一曲。それが、ひいらぎの新曲“お父さん”だ。

「ファンの人を含めて、そろそろ自分たちの周りもお年頃で(笑)、結婚式でひいらぎの曲をかけたいって言われることも増えたんですね。だけど、そういう場に相応しい曲がほとんどなくて。相応しいと思ってもらえている曲でも、自分たちがそういう意識で作った曲ではなかったり……。だったら〈結婚〉をテーマに書いてみる?ってとこから始まった曲なんです。それでいろいろ切り口を考えるなかで、あえてお父さんに向けた曲にするのはどうかな?って思って。お父さんって、お母さんに比べてなんか不遇だし(笑)、たまには主役になっても、と思ったので」(恵梨香)。

子供のときは、お父さんが出張に出ると、寂しさのあまり熱を出すくらいのお父さん子。その後、「嫌いになる思春期を通り抜けて、いまは淡々とした関係」だという恵梨香が書いた初のウェディング・ソングは、お父さんに向けた手紙のような曲。

「いつもは自分のエピソードを元に歌詞を書いていくんですけど、結婚に関しては残念ながら経験はないので(笑)。どうなるんだろう?って、手探りで書いていって。そういう意味でも初めてだった曲です」(恵梨香)。

また、“お父さん”を書くにあたっては、〈想いを伝えるお手伝いをする〉をテーマにした北海道テレビの番組「夢チカ18」の企画で、とある家族に歌のプレゼントをしていたこともひと役買ってくれたという。ちなみにジャケットとミュージック・ビデオは、その番組で採り上げられたお父さんと娘が登場する。

「実際あったことだからこその、ものすごく温かい感じのものになった」(千晶)。

「思いを伝えると、伝えた人も伝えられた人も、どっちも笑顔になるんですね。思うだけじゃ伝えられないことって実はたくさんあって、口にするのにも勇気が要って、結構力業だったりもすると思うんです。だけど、やっぱり伝えることは大事だなって、改めて思わされる企画だったんですね。それは2曲目の“あなたに”にも言えることなんですけど。そういう意味でも、原点に戻れたシングルになったと思います」(千晶)。

“お父さん”でメイン・ヴォーカルを担当したのは恵梨香。その結果、コーラスやギターの弾き方など、いつもとは2人の役割分担が逆になっているところもおもしろい。

「いつもはひいらぎとしていい形の作品、っていうところを念頭に作ってたんですけど。今回は曲にとっていちばんいい形を考えたら、こうなりました」(千晶)。

「そしたら私が歌うほうがいいってことになって。自分的には意外な展開だった(笑)」(恵梨香)。

「〈お父さんと結婚する!〉って子供のときに言った約束を破ってごめんね、っていうのを入れたい」(恵梨香)というところから書きはじめたという“お父さん”。そして「もしかしたら今日と同じ明日が来るとは限らない、だから……っていうところを大事にしたかった」(千晶)という“あなたに”。この新しい2曲を携えて、ひいらぎは2013年も〈思い〉を伝える歌の旅に出かける。



▼ひいらぎのアルバムを紹介。

左から、2010年作『地平線と秋の空』、2012年作『ドーナツの穴』(共にソニー)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年03月21日 20:05

更新: 2013年03月21日 20:05

ソース: bounce 352号(2013年2月25日発行)

インタヴュー・文/前原雅子