須田景凪、超満員のホール・ワンマン公演で話題の新曲を披露。自身最大規模となる初の全国ツアーも発表
今年1月にリリースされた1st EP『teeter』を引っ提げ、3~4月に東名阪ライヴ・ツアーを敢行した須田景凪。全公演ソールド・アウトを受け、7月14日に追加公演として、自身初のホール公演が中野サンプラザホールで行われた。
超満員の会場を見下ろす舞台には、舞台上がうっすらと透けて見える紗幕が下ろされている。開演の時が訪れると、波紋のようなグラフィックと共に「teeter」のロゴが紗幕の上に映し出された。
静謐な印象のインスト曲からライヴはスタート。モリシー(Gt/Awesome City Club)、雲丹亀卓人(Ba)、堀正輝(Dr)という強力なバンド・メンバーを従えてギターをかき鳴らす須田は、薄衣のような紗幕の向こう側からその幻のような存在感を示す。紗幕に投影された光の粒子に囲まれて演奏する須田の姿は、まるで動画サイトに投稿されたミュージック・ビデオのアニメーションから飛び出してきたかのような、浮世離れした雰囲気を纏っていた。
2曲目に披露された“farce”では、舞台を覆いつくしていた紗幕が飛んで、須田の姿もはっきりとオーディエンスの目の前に晒される。その歌声はやや粗削りながらも、CD音源や動画で聴く以上に深みと色気があり、時に狂おしく、時に優しく、胸をぎゅっと締めつけるような天性の切なさを持っていた。
何より印象的だったのは、オーディエンスひとりひとりに語り掛けるように歌う須田の姿だ。真っ赤なレーザー・ビームに射られながら攻撃的に披露される“idid”から切なく狂おしいバラード“シックハウス”まで、須田はバリエーション豊かな楽曲たちを歌詞を噛み締めるように大切に歌う。その佇まいはどこまでも優しく、いわゆるライヴでの「ノリ方」のようなものを押しつけることは一切ない。自身でもMCで「まだ数える程度しかライヴをしたことがないので」と話していたように、場数が少ないがゆえの不器用さが表れていたのかもしれないが、楽曲に込めた想いを伝えようと一生懸命に歌う姿はミュージシャンとして充分に美しく思えた。そんな須田の想いが通じたのか、動画サイトでも高い人気を誇るバルーン名義曲の“雨とペトラ”や“メーベル”などではオーディエンスから自然発生的にハンドクラップが巻き起こるといった一幕もあり、須田の作る楽曲の求心力を改めて思い知らされた。
ライヴ中盤では、スクリーンを多用したホール公演ならではの演出も印象的だった。縦横ランダムな形状の短冊型のスクリーンが舞台上部より登場し、楽曲にちなんだ映像が投影される。中でも雨音のSEから始まる“Cambell”の演出は圧巻。スクリーンに縦横無尽に映し出された雨のアニメーションに包まれて熱唱する須田は、深い青に染められた危うげで儚い空気を濃密に纏っていた。
TVアニメ「炎炎ノ消防隊」のエンディング主題歌の新曲“veil”では須田のアートワークを手掛けるイラストレーターで映像作家のアボガド6による初公開のアニメーション・ミュージック・ビデオを背負って歌い上げ、オーディエンスも一際沸き立った。その後も興奮そのままに、バルーン名義の代表曲“シャルル”をはじめとした人気曲で畳み掛ける。ミュージック・ビデオを彷彿させるように、短冊型のスクリーンをカラフルに染め上げた“パレイドリア”ではホール全体が揺れるほどの盛り上がりを見せ、まるでライヴハウスのような一体感が会場全体を包み込んだ瞬間だった。
MCで「ホール・ライヴは初めてなんですが、みんなの表情がよく見えますね」と嬉しそうに微笑んだ須田は、「ライヴをやったり、動画を投稿するたびに、みなさんからもらえるレスポンスによって生かされている、呼吸ができている」、「みなさんから貰ったものは音楽で返していくしかないなと思っていて」と訥々と語った。その真摯な言葉からは、アーティストとして生きていく覚悟のような想いが緩やかに、しかし確固たるものとして伝わってくるようだった。
「僕の作る曲がみなさんの日常の片隅のどこかに溶け込んでくれたらいいと思うし、そしていつかみなさんの共通の言葉のようになってくれたらいいなと思っています」そんな須田の言葉を胸に聴く、本編ラストの“浮花”そして初披露となった新曲“MOIL”は、素朴な儚さと祈りのような力強さが共存した、不思議な響きを持っていた。“MOIL”では主題歌となっている映画『二ノ国』の映像を背に、マイク・スタンドに縋りつくように精一杯に声を振り絞っていたかと思うと、ハンドマイクで客席に近づいていき、オーディエンスひとりひとりに寄り添うように歌い掛ける。その姿は決してライヴ経験がまだ少ないとは思えないほどに堂々としていて、それ以上に人間としての優しさに満ち溢れていた。
アンコールの“レド”、“密”まで含め全18曲。全身全霊で披露されたその歌声からは、ボカロP「バルーン」として始まった須田景凪の音楽人生そのものが垣間見えるようだった。粒よりの楽曲たちは、須田自身の日常の欠片から削り出された美しい結晶だ。須田の祈りが込められた楽曲たちは確かにリスナーの日常に溶け込んでいて、近い将来共通言語となる未来が想像できるような時間だった。
アンコールでは、来年2月より行われる自身初となる全国ツアーもアナウンスされた。「人間は3ヶ月あれば別の生き物になれると思っていて」とMCで語った須田が、半年後にアーティストとして、そして人間としてどのような姿に変貌を遂げているのか、楽しみで仕方ない。
(ライター:五十嵐文章)
なお全国ツアーは、来年2月29日のZepp DiverCity(TOKYO)を皮切りに全国7ヶ所で行われ、自身過去最大規模で開催される。
また、8月21日にリリースされる2nd EP『porte』の初回プレス分に本ツアーのチケット最速先行抽選受付シリアル・ナンバーが封入されることも決定。これまでのワンマン・ライヴはすべて即日ソールド・アウトしており、これがプレミア・チケットを手にする貴重な機会となることは間違いない。
▼ツアー情報
「須田景凪 TOUR 2020」
2月29日(土)東京 Zepp DiverCity(TOKYO)
3月7日(土)愛知 ダイアモンドホール
3月8日(日)大阪 なんばHatch
3月14日(土)北海道 札幌 cube garden
3月20日(金・祝)宮城 仙台Rensa
3月28日(土)広島 LIVE VANQUISH
3月29日(日)福岡 イムズホール
[チケット]
4,300円(ドリンク代別/スタンディング/指定席)
■一般発売:12月21日(土)~
▼リリース情報
須田景凪
2nd EP
『porte』
8月21日(水)リリース
■初回限定盤(CD+DVD+40Pルックブック付)
※アボガド6デザイン40Pルックブック付属 / スリーブケース付トールサイズ・デジパック仕様
■通常盤(CD)
■初回プレス分(初回限定盤、通常盤ともに対象)
封入特典:須田景凪 TOUR 2020 チケット最速先行抽選受付シリアル・ナンバー
受付期間:8月20日(火)12:00~8月25日(日)23:59
■タワーレコードオリジナル特典あり
先着で「「MOIL」-Rearranged ver.- CD」をプレゼント!
※特典満了次第終了とさせていただきます。
▼映画情報
『二ノ国』
8月23日(金)全国ロードショー
キャスト:山﨑賢人 / 新田真剣佑 / 永野芽郁 / 宮野真守 / 坂本真綾 / 梶裕貴 / 津田健次郎 / 山寺宏一 / 伊武雅刀 / ムロツヨシ
製作総指揮/原案・脚本:日野晃博
監督:百瀬義行
音楽:久石譲
主題歌:須田景凪 “MOIL”
原作:レベルファイブ
アニメーション制作:オー・エル・エム
製作:映画「二ノ国」製作委員会
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2019 映画「二ノ国」製作委員会
http://wwws.warnerbros.co.jp/ninokunijp/
カテゴリ : タワーレコード オンライン ニュース
掲載: 2019年07月16日 14:52