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スカート 『ひみつ』

連載
SPOTLIGHT!
公開
2013/03/21   20:25
更新
2013/03/21   20:25
ソース
bounce 352号(2013年2月25日発行)
テキスト
文/岡村詩野


若手随一のポップス職人から届いたストイックな新作!



スカート_A



ヴァン・ダイク・パークスやポール・ウィリアムス……いや、バート・バカラックがアズテック・カメラやティーンエイジ・ファンクラブのリーダーだったら……。それが、スカートの作品を初めて聴いたときの妄想。音大出身で、ポップ・マニアとしても知られるスカートこと澤部渡は、昆虫キッズ、cero、NRQらと親交が深いことでも知られるソングライターだが、ここに届いたニュー・アルバム『ひみつ』を聴き、最初の妄想に加えて彼の理想とする音像を改めて知らされた思いだ。

曲自体は昨年発表された自主制作ライヴCDR『月光密造の夜』で聴けたものが中心だが、ジャングリーな“セブンスター”、スウィンギンな“夜のめじるし”、ファンキーな“返信”……とアレンジはさまざまながら、いずれもギター・ポップの王道に準じたスタイル。そこにピアノやホーン、パーカッションなどがカラフルに挿入されるといった具合で、確かにバンド・サウンドとして仕上げられてはいる。だが、決して開放的であろうとはせず、あらかじめ壁に囲まれた密室のなかで鳴らすことを想定して作られたような音であることが興味深い。草野マサムネを思わせる鼻にかかった少年っぽいヴォーカルが魅力の澤部。ライヴでは汗を吹き出しながら大きな身体を揺らしてギターを掻き鳴らしているが、もしかすると録音作品における彼はバンド然とした雰囲気を極力押し殺し、ただ自身に対してストイックなサウンドを提示しようとしているのかもしれない。申し分のない大傑作だ。



▼スカートの2010年作『エス・オー・エス』(カチュカ・サウンズ)