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Ballake Sissoko『At Peace』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/05/01   11:33
ソース
intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)
テキスト
text:篠原裕治

コラの可能性と未来が詰まった、傑作ソロ・アルバム

チェロのヴァンサン・セガールと連名で発表した前作『チェンバー・ミュージック~コラとチェロとの室内楽』がわが国でも大きく注目されたマリのコラ奏者、バラケ・シソコ。待望の新作は引き続きヴァンサン・セガールがプロデュースを手掛けているが、ソロ名義の作品となった。

コラ奏者として先輩にあたるトゥマニ・ジャバテとの共演盤で世界デビューしたバラケ・シソコは、その後様々なミュージシャンと交流しながら独自のサウンドを探求してきた。トゥマニは、グリオの伴奏楽器だったコラに、その卓越したテクニックと感性で西欧の弦楽器に匹敵する表現力を与えた革命児だ。バラケも、言ってみればその背中を追ってきたわけだが、ここにきてトゥマニの独走を脅かす存在感を発揮しはじめている。西アフリカの伝統楽器としてしか認識されていなかったコラという楽器を、ポピュラー音楽や芸術音楽の聴き手に広く知らしめたトゥマニとバラケの功績は大きく、今後さらにコラの地位が高まるかどうかはこの二人の今後の活動にかかっていると言える。

本作にはコラの独奏をはじめ、ギター、バラフォン、チェロとの共演といったヴァラエティに富んだスタイルの演奏が収録されているが、派手なプロダクションやオーヴァーダビングは排され、いずれもシンプルながら奥深いサウンドに仕上げられている。そして、コラの独奏にしても、ほかの楽器とのデュオやトリオの演奏にしても、それぞれのアレンジに必然性が感じられるのがいい。バラケのテクニックにもますます磨きがかかっているようだし、叙情性も申し分ない。どの楽曲も美しいが、特に印象的なのがブラジルのルイス・ゴンザーガの名曲《Asa Branca》のカヴァーだ。選曲のセンスの良さもさることながら、一陣の涼風が吹き抜けていくかのような爽やかな演奏は絶品で、アルバムのハイライトと言っていいだろう。こういう試みはこれからも続けていってもらいたい。

LIVE  INFORMATION
バラケ・シソコ 来日公演2013

5/18(土)19:00開演/5/19(日)14:00開演
ヨコハマ創造都市センター1Fホール
http://saa.yafjp.org/barake/