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ASKING ALEXANDRIA 『From Death To Destiny』

連載
POWER PUSH
公開
2013/08/26   15:00
更新
2013/08/26   15:00
ソース
bounce 357号(2013年7月25日発行)
テキスト
文/澤田 修


世界の真夏を襲う運命の一撃! この勢いと放熱はもう止まらないぜ!



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2009年のデビュー作『Stand Up And Scream』が本国UKはもちろん、海を飛び越えた音楽大陸アメリカでも大旋風を巻き起こし、2011年春にリリースされたセカンド・アルバム『Reckless & Relentless』が全米チャート9位という快挙を成し遂げたアスキング・アレクサンドリア。メタルコアやスクリーモ、ポスト・ハードコアをベースに、ユーロ・トランス、ダブステップの要素を大胆に取り入れ、さらに落差の大きいブレイクダウン、シンセ・ブレイクダウンという過剰な装飾を施した繁華街のネオンサインばりのサウンドで、他のバンドの追随を許さないポジションを手に入れた彼らがサード・アルバムをリリースする。

その『From Death To Destiny』は、過去に発表したEPなどからも散見できた80年代後期のHR/HMへの愛情と影響がふんだんに盛り込まれた、ずっしりと手応えを感じられる作品に仕上がっている。まず目を見張るのが、豪華なプロダクション・スタッフだ。プロデューサーは前作に続き、ライズやスメリアンの新世代メタルコア・バンドの作品を手掛けている85年生まれの若きマエストロ=ジョーイ・スタージス。彼は無名だったデヴィル・ウェアーズ・プラダを世に送り出したことで名を上げ、アタック・アタック!、ウィ・ケイム・アズ・ローマンズ、オブ・マイス・アンド・メン、アイ・シー・スターズ、チャンク!ノー・キャプテン・チャンク!、さらにブレスザフォールやボーン・オブ・オシリスの最新作も手掛ける、メタルコア・シーンにおける重要人物のひとりだ(彼自身もソロ・プロジェクトを始めたり、メンバー全員が女性というメタルコア・バンドで彼のフィアンセも在籍しているコンカー・ディヴァイドの作品を手掛けたりしている)。

ミキサーは、パラモアやレッド・ジャンプスーツ・アパラタス、ブリング・ミー・ザ・ホライゾンなどの作品を手掛け、最近では日本のcoldrainの作品も担当した敏腕デヴィッド・ベンデス。マスタリングには、世界一マスタリングの依頼が来るといわれる名匠テッド・ジェンセンと、これ以上ない強力な布陣が作品を支えている。

肝心なサウンドに関しては、ヘヴィーなリフ、骨太なリズムに急転直下のブレイクダウン満載といった従来のカラーに加えて、繊細なメロディー、開放的でキャッチーなコーラスを同居させたシンガロング必至の楽曲が揃っている。80年代のHR/HMのニオイがプンプンする“White Line Fever”や“Moving On”などは往年のメタル・ファンにも十分アピールできる楽曲だ。

『From Death To Destiny』は硬派なメタル・アルバム、メロディックなハードロック・アルバムであり、キャッチーでラジオフレンドリーなアルバムでもある。新作の強みはより多くのロック・ファンにアピールできるという究極の着地点に到達しているところだろう。

そして、3枚目にして曝け出された彼らの素の部分にもぜひ注目注耳してほしい。“The Road”ではこれまで見られなかった素直な気持ちが歌われている——〈I wanna go home I wanna sleep in my own bed I want a normal life again〉。過酷なツアーのなかで書かれた曲なのだろうか、ステージ上や取材時はパーティー・ハードなロケンローラーぶりを過剰なまでに見せつける彼らだが、こういうエモーショナルな気持ちにも日々向き合っているんだと曲を聴きながら少し安心した(笑)。

強者たちがひしめき合うメタルコア・シーンの中で、さらなる高みへとバンドを導くであろう本作を引っ下げ、アスキング・アレクサンドリアは来年初頭にはオーストラリアなどを周るアジア圏のツアーを予定しているようだ。その流れで〈SCREAM OUT FEST 2011〉以来となる来日公演も実現させてほしい。



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