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掲載: 2007年11月29日 22:00

更新: 2007年11月29日 22:00

文/  intoxicate

『コスチューム』から2年――待望のセカンド・アルバム。シンガー・ソングライターとしての資質も遺憾なく発揮されたメロウでブルージーな深遠なるジャズ。
自身のクリア・ヴォイスをフィーチャーしたヴォーカル作品を5曲収録。

Intd1011_a ブランドン・ロス(Brandon Ross)
パペット(Puppet)
INTD-1011 
¥2,600(tax in)
2006/12/20 on sale


Musicians:
Brandon Ross: guitars, banjo, piano, vocals
Stomu Takeishi: acoustic bass guitar
JT Lewis: drums
Ron Miles: cornet
Gregoire Maret: harmonica
Melvin Gibbs: electric bass guitar
Charles Burnham: violin

ブランドン・ロス「パペット」に寄せられたコメント

なんて、優しいんだろう...なんて、穏やかなんだろう...。
この澄んだ音色とブランドンの人柄とが繋がった気がした。
魔法をかけられたかの様に、心の不純物が消えて行く..、心が純粋さを取り戻す感覚。
この音にずっと包まれていたいと思った。

林夕紀子
http://www.tone.jp/hayashiyukiko/
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気がつくと ブランドンと同じ楽器を 手にしていた ギター・バンジョーとソプラノ・ギター
だから ブランドンが どんな世界をあるいていたいのか わかるような 気がする

青柳拓次
http://www.tone.jp/littlecreatures/
http://artactivist.weblogs.jp/
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優れた音楽家というのは、無数の音の芝生の中から、一本の光るピンを探し当てるような、類い稀な能力の耳を持っているのだと思います。そして同時に、あらゆる音に初めて出会ったかのように反応する、赤ん坊のような耳も持ち合わせているはずです。
ブランドン・ロスは、確かにそのような耳を持つアーティストの一人だと確信します。
何よりも、聴く事の重要さを、彼は良く知っているのですから。

ゴンザレス三上(GONTITI)
http://www.gontiti.jp/
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ブランドンの今回のCDを聴いた途端、僕の体は1mぐらい宙に浮き、そのままゆっくりと横すべり、ああ!もう戻ってこれないんだなあと考えつつ気持ち良いので、もうどうなっても良いわ!と思ってしまうのです。

チチ松村(GONTITI)
http://www.gontiti.jp/
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妖精との距離
TEXT:高見一樹

 彼には妖精になりたいという変身願望があった。シェークスピアの『真夏の夜の夢』が幼少期の愛読書だったという。妖精は異界と人の間をつなぐもの。人の異界への、異界から人へという運動の妖精の軌道を辿れば、異教徒の国の、異教の神の姿を見る事になる。一説によれば、妖精の小さな身体は、様々な抑圧の結果だという。矮小化され、意識の周辺に遠くへ追いやられた記憶に羽をつけて再獲得すること。ブランドン・ロスが、妖精の翼をつけようと した記憶は何だったのだろう。 ブルースの起源を探る研究によれば、ブルースは単純な黒で覆われた音楽ではなかった。いろんな人種が混じり合う、複雑な黒だったという。さらにジミー・スコットのように性の差異すらも曖昧にしてしまうような声(ジミー・ロールズ)があったとも言われている。 トランスジェンダーな透明度は、ブランドンの声の魅力の一つだが、それは技術によって保存された声の複製ではなく、妖精への変身願望が声の成長をとめたのかもしれない。少年のような声の色はいまでも彼の地の声色だ。音楽というテクスチャーの中でその透明度はましていく。 ブランドンが意識的にブルースに取り組むようになったのは最近のことだ。前作『コスチューム』で取り上げたギャリー・デイビスの作品に向き合うきっかけは、偶然与えられた。カサンドラがマイルスを使ってヨルバなジャズのもう一つの歴史を聴かせたように、ブルースはブランドンのレトリックだ。それは以前からもちろん、彼の音楽に取り憑いてはいた。武満徹(鈴木大介、ブランドン・ロス、ツトム・タケイシ『夢の引用』)という音楽を通してさえ、ブルースが介在した。ジャズという意識の向こうにブルースが広がっていた。このアルバム『パペット』はおそらくそのことへの最初の意識的な跳躍かもしれない。退行した状態が彼の意識下にディスプレイしたものが何かは、明らかではないけれど。ただ、着替えてみること(『コスチューム』)の次は人形に託し、操ってみる事だった。妖精のようにかろやかにはばたいてみせることの前の、それは儀式のようなことなのかもしれない。