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カテゴリ : JAZZ IT UP! CAMPAIGN 

掲載: 2009年10月19日 18:43

更新: 2009年10月19日 18:43

文/  intoxicate

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「うれしい出会いだった」〜若手と組んだ70枚目のアルバムをリリース!



 『イントゥ・トゥモロー』は、20代30代の若手と組んだ、渡辺貞夫70枚目(!)のアルバム。9月はじめにおこなわれたブルーノートでのライヴでは、終始にこやかに、彼ら孫の世代のミュージシャンたちと演奏する姿があった。「去年一緒に演奏したドラムスのジョナサン・ブレイクがいいプレイをしていたので、フレッシュな若手を紹介してもらうことにした。そして、ピアノのタッチとか、ベースのサウンドとか、リズミックなフィーリングとかそこらへんはもちろん、何よりミュージシャンシップが<決めて>で彼らと一緒にやることに。彼らはNYのジャズ・シーンではすでに第一人者だと思う。ヘンな臭みがないし、デリカシーもあるし、感受性もあるし。録音も全部一回で終わってしまった。「うれしい出逢いだった」
 今回共演した若手は、「いろいろな音楽を聴いているがゆえに、リズミックなアプローチも多様になり、彼らなりに解釈してやってくれる」、と言う。
 え? ちょっと待って。じゃ、かつては違った、と? ──「たとえば、レゲエのリズムが欲しいと思うとき、アメリカのミュ-ジシャンもまだレゲエをよく知らなかったり。だったら、カリプソの気分でいいや、おなじツービートの気分で、と、《モーニング・アイランド》ができた」のだという。じゃあ、《モーニング・アイランド》、もともとのイメージは違ったんだ! 
 「アフリカっぽいリズムといってもミュージシャンたちはワンパターンなリズムしか知らない時代だった。だからそれでやるよりほかない、みたいな」
 でも、そこでレゲエのリズムはこうだよと教えて、やらせる場合もあるだろうけど…。
 「それ、時間かかるでしょう(笑)。僕のほしいリズムは、実際に現地に行って同じリズムを体感してもらわないと、その気分はわからないと思う。それをスタジオで言ってもしょうがないというかね」
 きっと、それが<違ったもの>になっても、それで成りたつような融通を、自由さを、貞夫さんの曲は持っているということか。



 合衆国で学んで、この列島にジャズの理論的なありようを初めて紹介した貞夫さん。現在でこそ、学校でジャズを学ぶひとが少なくないが……
 「僕らはGIの後を追っかけたり、レコードをコピーしたり。ひとつの点からべつの点にいくときに、例えばマイルスがこんなフレーズを吹いていてカッコいい。でも次のアルバムでは違うアプローチをとっている。それもカッコいい。でも、どうしてなのかわからないわけです。ただカッコいいから僕らはそれを鵜呑みにして、自分たちなりにトライした。一所懸命くりかえしフレージングを考えて作ったりしてきた。日本に帰って、ミュージシャンがたくさん家に集まって、ジャズ理論を教え始めたわけですが、「じつはこうだったんだよね」と言われると、「そうだったんだ。わかった」とあっという間に納得して、次に行ってしまう。そこが音楽教育というものの難しさかな。そういうことをやっちゃったからいけなかったのかもしれないけど(笑)。バークリーではものすごく宿題が多く、いろいろやったわけだけど、それを半年もかからないうちに教えて、みんなアタマでは納得しちゃった。そのあと、雨後の筍のように学校や塾ができた。でも、身体で覚えてきたというのと理論的にわかったのでは、演奏家としては差があると思うんです。上手いプレーヤーもいるし、僕らがジャズを始めた時代と比べたら、レヴェルはとんでもなく上がってる。知識的なことも含めてね。でも、上手いからいいというものでもないんで」



 長い音楽生活のなかで、サックスを吹くことについての変化はどうなのだろう。
 「プレイ自体はなんにも変わってないみたい。もう僕の言葉になっちゃっているフレーズがあったりして。先日レコーディングの最中に、スタジオのオーナーが1976年に作った『アイム・オールド・ファッション』をもってきてくれて、その《CONFIRMATION》を聴いたときに驚いちゃって。「あれ、スゲェな」と思って。カッコいいんです、昔の曲が(笑)。今の僕のフレーズと同じようなフレーズがでてきたりするんだけど、やっぱり若さの勢いが違うというか。参りました(笑)」
 初期から現在まで、肩の力がどんどん抜けてくるという感じがする貞夫さんの音楽。自分の言葉、語り口、キャラクターがそのまま音楽になってしまっているような。
 「だから、そこにいたままでは新鮮味がないので、思いがけないハプニングが欲しい(笑)。若いひとと一緒にやるのはやはり刺激があるからですよね。面白いもの、興味が持てるものをいつも探しているんです」
 年末恒例のクリスマス・コンサートでは、アルバムのメンバー2人に加え、ケニー・ギャレットを迎え、<ビバップ>をやるんだ、とちょっとテンションをあげて語ってくれた。21世紀になって敢て、<ビバップ>に、ケニーと<アルト・マッドネス>に臨む渡辺貞夫の意気/粋をこそ、いま、感じなければ。



INTERVIEW&TEXT : 小沼純一




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(左上から)イントゥ・トゥモロー[ビクター VICJ-61608]   ザ・ベスト[ビクター VICJ-45006]  アイム・オールド・ファッション[East Wind /ユニバーサル UCCJ-4086]  モーニング・アイランド[ビクター VICJ-61362]




*ライヴ・インフォメーション*
  『Sadao Plays Be Bop with Kenny Garrett』
出演者:渡辺貞夫(as)、Kenny Garrett(as)、Gerald Clayton(p)、Dezron Douglas(b)、Johnathan Blake(ds)
12/7(月)~9(水) 名古屋ブルーノート
12/11(金) 大阪シンフォニーホール
12/12(土) 渋谷オーチャードホール