R&B/ヒップホップ系の音を連想させるジャケットに騙されてはいけません。このちょこんと座った女性こそ、いまフランスでもっとも期待されている自作自演のシャンソニエなのだ。すでに本国のチャートでも1位を獲得済みのこのデビュー盤、とにかく圧倒的な歌唱力に驚かされた。21世紀のエディット・ピアフと評される（本作でも彼女のカヴァーを収録）ちょっと鼻にかかった強烈なハスキー・ヴォイスが印象的で、妖艶に迫るスロウは情感たっぷりだし、路上ライヴで培ったという即興スキャットやアップ・チューンでの抜群なリズム感なんて思わず踊り出したくなるほど。マヌーシュ・スウィング主体の楽曲や、ジャズ好きにもアピールできるであろう小粋なバック演奏もグッド！
bounce (C)岡本大輔

本国フランスでは〈ピアフの再来〉として大いに騒がれている歌い手ザーズのデビュー盤。マヌーシュ・ジャズ調のサウンドをバックにスウィンギーにかっ飛ばす〈いなせな〉歌いっぷりが彼女の真骨頂だが、優しく染み入るオーガニック・ポップから魂の絶唱に胸打たれるバラード、シャンソン古典まで、何をやらせてもとにかく上手い。その声質もさることながら、どこか気が強そうでお転婆で、それでいてペーソス溢れる稀代の表現力は、ピアフが引き合いに出されるのも納得だ。
intoxicate (C)田中幹也