モーターヘッド初期黄金期のラインナップ、レミー・キルミスター、"ファスト"・エディ・クラーク、そしてフィル・"アニマル"・テイラーの3人による最後のアルバムが82年の『アイアンフィスト』です。また「アイアンフィスト」は、同アルバムのタイトルトラックであり、リードシングルでした。

レミーは、爆音のロックンロールを愛していましたが、同時にアメリカンウイスキーの大ファンでもあったことはよく知られています。いつの日か自分の手で最高のアメリカンウイスキーを作りたいという夢を抱いていたレミーは、2014年にスウェーデンのブランズ・フォー・ファンズ社と手を組み、夢の実現に乗り出しました。

2015年12月28日のレミーの急逝後も残されたバンドメンバーと共に開発は続けられ、2019年ついに、彼らの最もアイコニックな曲とアルバム名の一つを冠するにふさわしいウイスキーが完成しました。それこそがモーターヘッド・アイアンフィスト・アメリカンウイスキーです。

アイアンフィストは、アメリカンウイスキーですが、バーボンではありません。澄んだ黄金色の輝きはむしろアイリッシュウイスキーを思わせますし、バーボンの骨太でくっきりとした味わいに比べると、より軽やかで繊細、かつしっかりとした奥行きのあるウイスキーです。香りは甘く華やかなキャラメルとバニラ、そしてほのかにフレッシュなオレンジも感じられます。味わいもまずはキャラメルとバニラの絶妙な甘みが前面に出ますが、やがてドライフルーツやナッツのより複雑で立体感のある味わいが広がっていきます。そしてかすかな塩味やライ麦のスパイシーさとほろ苦さが華やかな味わいのアクセントとして心地よい後味を演出します。ほんの少し加水すると、ブラックベリーやスグリのフレッシュな甘みが膨らみ、繊細な味わいのバランスにより一層の広がりをもたらしてくれます。まずはストレートでゆっくりと、レミーの遺した夢のウイスキーを味わってみてください。