今まで聴いてきた《第5番》のイメージを　払拭されるような演奏。テンポもの速さもさることながら、細かい部分のこだわりが相変わらずすごいと思います。何を振ってもその曲の新しい部分をみせてくれるクルレンツィスには驚かされます。

既成概念に捕らわれない革新的かつ野心的な新ベートーヴェン像に脱帽。これまで聴こえてこなかった微に入り細に穿つ表現から、全体を大きく捉え、まさに閃光が走る快演。クライバーで完結したかと思われる第5交響曲を根底から覆す解釈と演奏力はまさに21世紀に打ち立てられた記念碑的存在となることだろう。この演奏を凌駕する指揮者が現れるのか、恐らく、自らが今の殻を破っていくような気がする。

頭の中にある第５のトレースされた記憶が消され、新たにトレースされた第５の音楽の記憶に喜びを感じ、満足すること間違いなし。ベートーベンの楽譜から無限の音色を生み出すテオドール・クルレンツィスに拍手したい。

意外と編成が大きく量感もあり抵抗感はなかった。というよりさすがクルレンツィス。細かな仕掛けは満載で、普通聴こえてこない楽器が耳に飛び込んだり、このへんは従来と同じ。しかしセッションとはいえ、このオーケストラは上手い。ピリオドならこのテンポは妥当だろう。昨年からベートーヴェンイヤーに向けて色々な新譜が出てきたが、これを聴かずしてベートーヴェンイヤーは語れないのではないか。1曲だけだが絶対買いだ。

敢えて星4。演奏の作り込みは星5でも足りない位。凄まじいまでの生々しさだし、あらゆる点で細かい指示が行き届いていて面白い。けれど「古楽器に慣れた方」という前提条件があってこそ。

モダン好きなら「真似」とも捉えられかねないデフォルメが横行するし、聞き込んでない方からしたら何やってるか分からないまま曲が終わってしまうだろう。

そういう意味では万人向けではなく、玄人好みの癖の強い演奏だとおもえる。

クルレンテスをTchaikovskyの6番で聴きこう言う表現もありかなと思いベートーベン5番を購入私はフルトヴェングラー、カラヤン、ベーム、クライバー、等愛聴盤として聞き比べておりますが、クルレンティスは世代としてかテンポが非常に速い感じにてこの表現には後期高齢者の爺ちゃんにはチョット考えさせられてしまいました。

浅い呼吸でせかせかと進行する演奏だ。ネルソンスのベートーベンなんかが幅を利かせている現代の惨状を考えれば、クルレンツィスの個性的な演奏には一定の評価を与えるべきなのだろうとは思う。ただ賛否の分かれる演奏であることは間違いなく、音響の運動としてみれば非常にエキサイティングな演奏と言えるだろうが、本楽曲に内面性を求める向きには空虚さしか感じられまい。

なんとまあ、せわしない演奏ですね。聞いていてため息が出ます。こちらが音楽に聞き入る前に、演奏だけが先に走り抜けて行きます。

劇的で、始源的。横に流れるカラヤン流とは対極。実に気持ちのよい運動性と、楔を打ち込むようなベートーヴェンのイデーの強さに圧倒される。全身が浮き上がるような身体性は快感で、踊り出したくなる。オケの過度応答のよさはには舌を巻く。ピリオド楽器の音色は自然でピタリと嵌る。音量の自在でダイナミックな変化の面白さは無類。人と社会の変革を促すような演奏は、まさにベートーヴェンの精神だ。

この曲に対する従来の固定観念を覆す演奏であり、あたかもＳＦ映画の近未来の中にいるような錯覚を引き起こす演奏である。私のような固定観念に凝り固まっているものにとってはあまり以居心地のいい演奏とは言えない。この演奏に対する評価はこの曲に何を求めるかによって大きく分かれるのではないかと思う。　虚亡隠士

70分以上容れられるCDに、おそらく35分程度しか入ってないのはどうしてか理解できない。恐らく全集になると思うが、この分では9枚組になってしまいそう。第一楽章の前半部分だけだが、映像で見る限り個性が強すぎる演奏で楽しめそうもない。購入しないと思う。