<ルドルフ・ケンペ生誕115年記念企画>
当時のベルリン・フィルの重厚な響きを活かしたチャイコフスキー:交響曲第5番と、バンベルク交響楽団との鮮烈な「王宮の花火の音楽」を収録。世界初SACD化!今回の発売のために新規で本国アナログ・マスターテープより最新復刻。新規解説付
チャイコフスキーはケンペとベルリン・フィルがモノラル期からステレオ録音最初期にかけて録音を行ってきた最終期に近い1959年5月に収録されたステレオ音源で、とりわけ当時の重厚なオケの響きと、ケンペならではの機転の利いた指揮が聴きもの。かつてのベルリン・フィルの音色を彷彿させる見事なピラミッド・バランスですが、多層的な響きのグラデュエーションは、カラヤン時代が進行するに従い、以降徐々に変化して行きます。そしてカップリングには、1962年5月録音のバンベルク交響楽団との貴重な「王宮の花火の音楽」を収録。こちらも堅固な響きながらもケンペの才覚が光る名演です。今回の発売のために本国のオリジナル・アナログ・マスターテープから192kHz/24bitでデジタル化したマスターを用い、SACD層、CD層別々にマスタリング。新規解説付。永久保存盤です。
ケンペは旧EMIレーベルにベルリン・フィルと1950年代から1960年まで多数の録音を行い、それらの音源は未だに評価が高いものばかりです。同時期、英国でも人気を博し、フィルハーモニア管弦楽団やBBC交響楽団、晩年まではロイヤル・フィルとも多くの録音を残しました。また、ウィーン・フィルとは1958年から61年にかけて7枚の管弦楽曲のアルバムも制作しており(TDSA210として当企画で5枚組BOXを発売)、高い人気を誇っていたことが伺えます。ベルリン・フィルとのEMI録音は1960年1月のブラームスの交響曲第3番と悲劇的序曲を持って終了しますが、以降は最晩年までミュンヘン・フィルやシュターツカペレ・ドレスデン等でも歴史的な名盤を残していったことはご存じの通りです。
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タワーレコード(2025/06/27)
当Definition Seriesにおいてもケンペの復刻を多く取り上げてきました。ベルリン・フィルとのものでは2016年発売のベートーヴェン「英雄」と序曲集、幻想交響曲やR.シュトラウスのドン・キホーテに始まり、最新では2022年発売のブラームス:ヴァイオリン協奏曲まで主にステレオ音源を5点、それ以外も含め12点、他レーベルで8点の計20点をSACDハイブリッドで復刻しています。
未復刻のベルリン・フィルとのEMI録音の中から今回取り上げた、1959年5月のステレオ録音でのこのチャイコフスキーはケンペが得意とした曲のひとつです。独墺系を主要レパートリーとした以外にスラヴ系の曲をも度々取り上げていたケンペによるこの第5番は、他にはバイエルン放送交響楽団との晩年のライヴ音源も残されています。ゆったりとしたテンポで流麗に鳴らすベルリン・フィルとの音源は前述のライヴと解釈は似ていますが、当時まだ残っていたローカル色を残したオケの音色を活かした、より重厚な演奏となっているのが特色でしょう。フルトヴェングラー時代に演奏した団員がこの後多く入れ替わることや、カラヤンによる演奏スタイルが浸透していくことにより、以降、かつての音色は失われより明るい音質に変化していきます。この時のケンペまでの音色を懐かむリスナーも多く、グリューネヴァルト教会での収録も行われなくなることから、この年代までのEMI音源は今では貴重なものとなりました。
そしてカップリングのヘンデルはこの1曲のみの10インチLPで発売されたことから、非常にレアな音源でした。アナログ時代は国内で発売された形跡は無く、CD時代でも初期に独エレクトローラの輸入盤で密かに発売された以降は、TESTAMENTの復刻CDでリリースされていたくらいです(2003年に国内盤仕様でようやく国内リリース)。その後は本家のEMIやワーナーでも再発されていませんでしたので、今回が久しぶりの復刻となります。尚、バンベルク交響楽団との録音はオイロディスクや2025年1月に当企画で復刻しましたスメタナの「売られた花嫁」(TDSA306)がありますが、当時、ドイツのオケと「王宮の花火の音楽」を収録した経緯は良くわかっていません。録音は前述の「売られた花嫁」と同じく1962年5月にバンベルクで収録されており、同時収録だったと思われます。演奏は壮麗にオケを鳴らすケンペらしさが健在で、埋もれるには惜しい音源です。今回の最新復刻により、演奏の素晴らしさがより顕著になりました。
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タワーレコード(2025/06/27)
このシリーズでは、SACD層では伸びのある高域と柔らかなニュアンスと共に高い解像度と豊かな音場を、CD層はまとまったしっかりとした音と共に押し出される実在感ある音色を目指しています。CD自体のポテンシャルも高く、むしろ両方の良さを堪能できるSACDハイブリッド盤としてもお楽しみください。尚、解説書には広瀬 大介氏による新規文章を掲載しました。今回のDefinition Series第69弾は、計2タイトルを発売いたします。
<音源復刻コンセプト>
当企画では、本国より取り寄せた192kHz/24bitのWAVデータを基本に、SACD層用としてDSDに変換後にマスタリングを行い、別途CD層用としてPCMでもマスタリングを施していますので、SACD層、CD層、それぞれ独立したマスタリングとなっています。PCMで編集した後にDSDにも変換を行う、もしくはDSDで編集した後にPCMにも変換を行うといった1回のマスタリング作業で兼ねるのではなく、SACD、CD、それぞれの特徴や音質を重視した上で、個別にマスタリングを行いました。その際、過去に発売された音源と極力比較する検証も行なった上で、音楽を最大限に生かすべく、オリジナルのアナログ・マスターテープを尊重した上での最適なマスタリングを心がけています。
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タワーレコード(2025/06/27)