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Drop It Like It's Hot

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2010年09月22日 17:59

ソース: bounce 325号 (2010年9月25日発行)

文/出嶌孝次

 

トレイ・ソングズはまたしても世界を悶えさせる

 

 

イントロから〈パンティ・ドロッパー〉とか〈ベイビー・メイカー〉を自認して、本編に雪崩れ込むや〈大きな声で名前を叫ぶ〉女性に“Neighbors Know My Name”と囁き、そして“I Invented Sex”だそうで……いま考えてもトレイ・ソングズが昨年リリースした『Ready』は素晴らしくセクシャルで笑えるほどの衝撃的なアルバムだった。

デビュー時からR・ケリーへの憧憬を隠さず、着実にキャリアアップしてきたトレイだが、ミックステープも併用するなど時代に即した形で支持層を広げていった結果、ドレイクとの“I Invented Sex”は初のR&Bチャート1位を獲得し、アルバムからは先述の“Neighbors Know My Name”など計5曲ものビッグ・ヒットが誕生。さらにドレイクの“Successful”やリュダクリスの“Sex Room”といった客演曲も大ヒットを記録し、まさにベイビー……じゃなくヒットメイカーとしての地位をかつてのR師匠ばりに確立した。そして、過去にもノミネートはされていたBETアワードの最優秀R&Bアーティストも見事に受賞して、名実共にトップ・シンガーとして絶頂を極めるに至ったわけである。その後〈トニ・ブラクストンの新恋人?〉的なスタントに使われたりしていたのも、セックス・シンボル的な人気と確かな実力の両面を兼ね備えているからこそだろう。

そんなわけで、ここ最近だけでもファット・ジョーやリック・ロス、ソウルジャ・ボーイにバンBなどラッパーの楽曲に歌を乞われる機会が引っ切りない状態だが、ここにきて早くも通算4作目となるニュー・アルバム『Passion, Pain & Pleasure』の登場と相成った。ここまでのトレイは初作『I Gotta Make It』から2年に1枚のペースでアルバムを重ねていたのだが、イレギュラーな早撃ちも好調さゆえに違いない。

ニッキー・ミナージュをフィーチャーした先行シングル“Bottoms Up”は前作での“Lol :-)”にも通じるサウス調のアップ・チューンだが、ここでは“I'm Flirt Remix”以降のR・ケリーをさらに意識したような歌い口でベッドルームに留まらずフロアを支配しにかかっているようだ。プロデュースを手掛けたのは、そのニッキーも属するヤング・マネーの“Bedrock”で一躍注目を浴びたケイン・ビーツ。このあたりの抜け目のなさも現在進行形でヒップホップと繋がるトレイらしいところだろう。

ヤング・マネーといえば……無名時代から付き合いの深かったドレイクは今回も“Unusual”に駆けつけているが、“Unfortunate”ではそのドレイクの後見人たるノア“40”シェビブにプロデュースを委ねてあの揺らめくような魔法の音像を手に入れている。そうやって常に新境地を拓いていく姿勢も、移り変わりの早いアーバン界でトレイがトップを張れる所以じゃないか。もちろん、次のシングル“Can't Be Friends”や“Please Return My Call”など、今回もエモーショナルな歌唱をシンプルに聴かせるスロウがアルバムの核であることに変わりはなく、そのすこぶる高い完成度については言うまでもないだろう。わかりやすく言えば、あの〈キング・オブ・R&B〉と肩を並べる男がようやく現れたのだ。

 

▼関連盤を紹介。

左から、トニ・ブラクストンの2010年作『Pulse』(Warner Bros.)、リュダクリスの2010年作『Battle Of The Sexes』(DTP/Def Jam)、ドレイクの2010年作『Thank Me Later』、ヤング・マネーの2009年作『We Are Young Money』(共にYoung Money/Cash Money/Universal)

 

▼トレイ・ソングズの作品。

左から、2005年作『I Gotta Make It』、2007年作『Trey Day』、2009年作『Ready』(すべてSongbook/Atlantic)

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