ROOT DOWN――ノラ・ジョーンズのルーツにある深い歌心
ノラ・ジョーンズのルーツとして、本人みずから言及している有名なエピソードに、母親が持っていたビリー・ホリデイのレコードから“You Go To My Head”ばかり聴いていたというものがある。その後、10代になった彼女が初めてコーヒーハウスでマイクを握った時には“I'll Be Seeing You”を歌ったそうだから、ビリーの影響は基本として深く刻まれていたに違いない。
大学に進んでからはジャズばかり聴いていたという彼女だけに、ルーツとして捉えられるのはそれ以前のベースの部分となる。ビリー同様に彼女の下地として見い出せるのは、エタ・ジェイムズやアレサ・フランクリン、ロバータ・フラック、レイ・チャールズといったソウル〜ブルースの巨星たちで、一方で後にコラボレーションも実現させるドリー・パートンなどのカントリーにも親しんできたのはテキサスの土地柄なのだろうか。他にはキャロル・キングやジョニ・ミッチェル(ハービー・ハンコック作で“Court And Spark”を取り上げている)、ニック・ドレイク(“Day Is Done”を初作でカヴァー)のようなシンガー・ソングライターからの影響も顕著だ。こうして並べていくとあまりにもスタンダード感バリバリな定番シリーズばかりが挙がってきてしまうのだが、ノラは後天的に移り変わっていく興味によってそこにどんどん色を増していく。そんなブレの部分がまたノラのおもしろいところなのだ。
▼関連作品を紹介。
左上から、ビリー・ホリデイのボックスセット『Lady Sings The Blues』(Membran)、エタ・ジェイムズのベスト盤『The Essential Etta James』(Sony)、キャロル・キングの71年作『Tapestry』(Ode)、ジョニ・ミッチェルの71年作『Blue』(Reprise)、ドリー・パートンの74年作『Jolene』(RCA Nashville)
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