POST OR AFTER NORAH JONES――ノラ・ジョーンズ以降のニュアンスに富んだ女性シンガーたち
ノラ自身が非常にまろやかで多面的な音楽性を備えた存在だからして、一口に〈ノラ・ジョーンズ以降〉と言いきってしまうのは乱暴な話ではあるのだけど、それでもある種の女性シンガーがノラのブレイクによって登場しやすくなったり、フォーマットとしての価値が多くの人に届きやすくなったり、音楽性をざっくり説明しやすくなったのは事実だろう。
ノラ自身はジャズ・ヴォーカルというフォーマットに一応身を置きながらも、その志向はカントリーにもネオ・ソウルにもレトロ・ポップにもオルタナなロックにも枝葉を伸ばして絡み付いている。その結果として、キャロル・キングやジョニ・ミッチェルのように、フォークやカントリー、ブルースなどのルーツィーな歌心をベーシックに備えたシンガー・ソングライターたちも、あるいは逆にポップ・オリエンテッドな志向を持つジャズ・ヴォーカリストたちも、いままでの単純なジャンル分類とは異なるフィールドで楽しまれるようになった。あのアデルにしてもそういった緩やかで大きな流れの恩恵を享受しているのだと思う。また、ノラのブレイクは老舗のブルー・ノートというレーベルにとってもプリシラ・アーンやバード&ザ・ビーのようなアーティストを輩出しうる新しいブランド・カラーをもたらしたのは間違いない。ノラは想像以上に大きな何かを動かしたのだ。
▼関連作品を紹介。
左上から、ヤエル・ナイムの2005年作『She Was A Boy』(Tot Ou Tard)、プリシラ・アーンの2008年作『A Good Day』、クリスティーナ・トレインの2009年作『Split Milk』、ステイシー・ケントの2010年作『Raconte-moi...』(すべてBlue Note)、マデリン・ペルーの2009年作『Bare Bones』(Rounder/Decca)、メロディ・ガルドーの2008年作『Worrisome Heart』(Universal)、ダフィの2011年作『Endlessly』(Mercury)、アマンダ・ブレッカーの2011年作『Blossom』(Area Azzurra)、ルーマーの2011年作『Seasons Of My Soul』(Warner Bros.)、ヒメナ・サリナーニャの2009年作『Mediocre』(Warner Latina)