DISCOGRAPHIC CAN
カンを知るための12枚
『Monster Movie』 Music Factory/Spoon/Mute/HOSTESS(1969)
わずか2トラック録音で制作されたデビュー作。カン史上もっとも攻撃的な、メタリックで鋭角なギターと荒々しいビート、マルコム・ムーニーの狂気を孕んだ絶唱が凄い。とりわけ大曲“You Doo Right”の自由奔放なブッ飛び具合は、開いた口が塞がらないほどの衝撃!
『Soundtracks』 Liberty/Spoon(1970)
彼らが担当した映画音楽をまとめたアルバム。統一感はないが、そのぶん変化に富んだ粒揃いの楽曲が並んでいて飽きない。特に長尺のガレージ・サイケ“Mother Sky”は初期を代表する名曲。ムーニーとダモ鈴木の2人のヴォーカルが聴ける、唯一のオリジナル作でもある。
『Tago Mago』 Liberty/Spoon(1971)
当時2枚組LPでリリースされた、特盛の3作目。歌を主体としたフォーマットの前半における空間的な音作りは早すぎるポスト・ロックの如し。日本語も交えたダモのウサン臭い歌唱の存在感も光る。驚愕の集団即興演奏が繰り広げられる後半は、フリーキーな一大実験場の様相。
『Ege Bamyasi』 United Artists/Spoon/Mute/HOSTESS(1972)
TVドラマのテーマ曲としてシングル・リリースされ、なぜか20万枚超えの大ヒットとなったテクノ・ポップ風の逸品“Spoon”を含む4作目。壮大な実験盤となった前作の反動からか、コンパクトな楽曲中心で全体の雰囲気も軽やか。カンにしては耳馴染みの良い一枚だ。
『Future Days』 United Artists/Spoon/Mute/HOSTESS(1973)
21世紀のいま聴いても驚くほど鮮烈で示唆に満ちた、タイトルに偽りなしの未来的音楽。格段に立体感を増したサウンドは、遠くに近くに音像を揺るがせてリスナーの脳内を緩やかに痺れさせていく。緊張と快楽の狭間を擦り抜けて未踏の境地に達したような、空前絶後の名盤。
『Soon Over Babaluma』 United Artists/Spoon(1974)
音楽的にも大きな分岐点となった前作の録音後にダモが脱退。代わってミヒャエル・カローリが主なヴォーカルを取った6作目。必然的に増したインスト・パートが音響にさらなる深みを与えてコズミック化しつつ、エセ民族音楽色も顔を出してストレンジ感がハンパなし。
『Landed』 Virgin/Spoon(1975)
初めて16トラック録音を行ったアルバム(むしろ前作まで2トラック機材だったことが凄い……)。ハードなギターが炸裂する疾走チューン“Full Moon On The Highway”をはじめ、珍しくマトモ(?)な構成を持つ曲が多く、妙な開き直り感がかえって清々しい。
『Flowmotion』 Virgin/Spoon(1976)
シングル・ヒットとなったポップ・ナンバー“I Want More”で幕を開ける8作目。前作で垣間見せた気合いがウソだったかのように全編がユルい空気に包まれているが、これがやたらと気持ち良い。なかでもタイトル曲は全力で脱力しまくったカン流レゲエの絶品。
『Saw Delight』 Virgin/Spoon(1977)
元トラフィックの黒人メンバー2人が参加し、6人編成で臨んだ9作目。職人型プレイヤー加入の賛否はともあれ、アフロビートへ寄ったアプローチによる強靭なグルーヴを獲得したのは確か。フロア・ユースな躍動感と肉体性は、もう少し評価されてもイイと思うけど。
『Can』 EMI/Spoon(1979)
メンバー自身すら黙殺する駄作『Out Of Reach』を挿んでの、オリジナル・カンとしての最終作。前作時には脱退していたホルガー・シューカイが編集だけとはいえ復帰。これが奇妙な爽快感すら漂う好盤で、ラストを飾るヤケクソの運動会の如きパンク・チューンは泣き笑い必至。
『Rite Time』 Mercury/Spoon(1989)
解散から10年を経てリリースされた、まさかの再結成盤。しかもヴォーカルはムーニーだ。各人のソロ活動を反映させたようなサウンドは、安定感はあるもののスリルは希薄。だが、長年音楽から離れていたわりには健在な、ムーニーのアノ声が全体の空気をカン色に染めている。
『Delay 1968』 Mute/Spoon
デビュー作と同時期のアウトテイク集だが、内容といい音質といいオリジナル作品と称しても文句ナシ。68年にしてすでにパンクも通り越してポスト・パンク的ですらある尖りまくったサウンドが恐ろしい。ソニック・ユースやレディオヘッドのファンは、本作から聴くのもアリだ。
OTHERDISCOGRAPHIC
ALBUM
『Out Of Reach』(1978)
COMPILATION
『Cannibalism No.1』(1978)
『Cannibalism No.2』(1992)
『Cannibalism No.3』(1994)
『Anthology 25 Years』(1994)
『Can-Box』(1999)
LIVE ALBUM
『The Peel Sessions』(1995)
『Can Live』(1999)
REMIX ALBUM
『Sacrilege』(1997)