EXPERIMENTAL SESSION GOES ON――耳で聴いたピープル・トゥリー
カンをめぐる音楽の果実は、ここに一本のトゥリーを生んだ
PUBLIC IMAGE LTD. 『Metal Box』 Virgin(1979)
本作の反復ビートと呪文的なヴォーカルは、ジョン・ライドンが当時好んでいたカンの影響が絶大。ジャー・ウォーブルに至っては、後にシューカイ、ヤキとコラボレートした『Full Circle』も残している。 *青木
BOREDOMS 『77 BOADRUM』 commmons(2008)
実験精神も極まれりというか、88台のドラムとのセッションも完遂させてしまう奇才・ヤマタカEYヨ率いる日本の至宝。リズムonリズム……onエフェクティヴな雄叫びが生み出すプリミティヴな音響空間は、現場主義であるカンのそれと通じるものが。 *土田
CARL CRAIG 『Sessions』 !K7(2008)
テクノの範疇に収まらない制作活動に、カンの精神性を見ることができるカール・クレイグ。彼もまた洗礼を浴びたひとりで、カンのリミックス盤『Sacrilege』では、自身のお気に入り曲“Future Days”で腕を振るった。 *青木
TORTOISE 『Millions Now Living Will Never Die』 Thrill Jockey(1996)
90s初頭に現れたシカゴ音響派は、実験的な異種交配で〈ロックを超えたロック〉を生んだという意味でクラウト・ロック的。トータスの本作は、反復フレーズのなかで細胞分裂の如く音像が変容する様に、カンの姿が重なる。 *土田
MI AMI 『Decade』 100% Silk(2012)
マジック・タッチとアイタルによるユニットもカン・チルドレンぶりが痛快。フリー・ジャズやアフロを呑み込んだポスト・ロックから、最新作ではサイケなダンス・ミュージックへと接近。カンが健在だったらこんな感じ!? *青木
SONIC YOUTH 『Washing Machine』 Geffen(1995)
ソニック・ユースが手掛けた数少ないリミックスのひとつが、カンのモンドで気怠いソフト・サイケ・ナンバー“Spoon”。『Ege Bamyasi』の収録曲だが、あれ? 『Washing Machine』に収められてもおかしくないかも。サーストンの声もダモに似てるような気が……。 *青木
KEITH 『Vice And Virtue』 Lucky Number(2008)
反復ビート上でのセッションをエディットし、楽曲として構築するマンチェスター発の4人組。そのスリリングなグルーヴはカンを想起させるが、本誌の取材時、中心人物のオリが『Tago Mago』を偶然持ち合わせていたという逸話も。 *土田
ゆらゆら帝国 『空洞です』 ソニー(2007)
思考が永遠に彷徨い続けなければならないような魅惑の空洞は、日本における反復サイケデリック・ロックの金字塔。かつ、カンが73年に思いを馳せた〈未来の日々〉を別次元へと移送したひとつのロール・モデルとも言える。 *土田
ANIMAL COLLECTIVE 『Centipede Hz』 Domino/HOSTESS(2012)
〈カンが実践したような、実験的だけどポップ、ハチャメチャだけどダンサブル、ロック・バンドだけどロックじゃない人たち〉というお題で現行のシーンを見渡すと、アニコレが真っ先に浮かぶ。土着的な味付けは薄いけど、クラウト・ロックの持つ非ロック性や革新性はひしひしと伝わってくる。 *青木
Beak> 『Beak>』 Invada(2009)
ポーティスヘッドの最新作やプロデュースを務めたホラーズの2作目を経て、ジェフ・バーロウのクラウト・ロック愛がついに全開となったこのプロジェクト。ポスト・パンクもサイケも電子ノイズも、いわゆる〈要素〉が全部入りのスタイルは、すなわちカン! *土田
FACTORY FLOOR 『J P N』 Pヴァイン(2012)
P.I.Lをはじめ、カンをポスト・パンク的な見地で再構築したバンドは数あるが、なかでもいまいちばんホットでエッジーな存在がこのバンド。延々と放出されるノイズや反復の美学に貫かれたダンス・ビートが導く瞑想的な快楽は、マーク・スチュワートら御大をも虜に。 *土田
SHACKLETON 『Music For The Quiet Hour / The Drawbar Organ EPs』 Woe To The Septic Heart(2012)
カンどころか、その子孫とも言えるP.I.Lもフェイヴァリットに挙げるシャックルトン。彼らがロックの枠組みからハミ出しまくったように、このビートメイカーも異形の電子音でアウトローな姿勢を継承。土着的な点も共鳴している。 *青木
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