隔世遺伝は日本の新世代たちにも……
20年ぶりの復活作を発表したばかりのP.I.Lを筆頭に、カンの影響下にあるアーティスト自体が後人を刺激する大きな存在である例も少なくない。ここでは、そうした面々を経由して隔世遺伝的にカンの面影を宿した日本の新世代たちを紹介しよう。まずは、2009年作『IONIZATION』より人力テクノ的な方向へと舵を切ったYOLZ IN THE SKY。機械的な反復性を強めたビートに加え、カンらクラウト・ロック好きなエンジニア所有のスタジオで音響面も振り切ったのち、その嗜好はサイケ感を増した最新作『DESINTEGRATION』へも継承。OGRE YOU ASSHOLEは、2011年作『homely』においてゆらゆら帝国が築いた〈空洞〉と共通する空虚でメロウなサイケデリアを展開。淡々としながらどこか異形のグルーヴに呑み込まれる。同様の意味で、宇宙人の2012年作『慟哭』における“時計”にもカンの匂いが。延々と続く泥臭い反復プレイによって、謎めいたバンドの謎はさらに深まり……。他にも、収録曲の構成の参考として制作中にカンの『Ege Bamyasi』を聴いていたという0.8秒と衝撃。の最新EPや、曖昧模糊とした音像のなかにそこはかとないポスト・パンク感を敷いたツチヤニボンドの2011年作『2』など、カン的なるカン性はそこかしこで息づいている。
▼関連盤を紹介。
左から、YOLZ IN THE SKYの2012年作『DESINTEGRATION』(felicity)、OGRE YOU ASSHOLEの2011年作『homely』(バップ)、宇宙人の2012年作『慟哭』(スターチャイルド)、0.8秒と衝撃。の2012年作『バーティカルJ.M.ヤーヤーヤードEP』(actwise)