MUSIC TREE of ELIS
エリス・レジーナをめぐる音楽の果実は、ここに一本のトゥリーを生んだ
DUSTY SPRINGFIELD 『Where Am I Going』 Philips(1967)
エリスの傑作『In London』のエレガントなオーケストレーションを手掛けたピーター・ナイトの〈もうひとつの〉ベスト・ワークといえるのが、やはりキラー・チューン満載の本作。スウィンギン・ロンドンなビッグ・バンド・アレンジの“Sunny”や“Come Back To Me”のクールネスといったら! *高橋
BRIAN AUGER & THE TRINITY &JULIE DRISCOLL 『The Mod Years』 WHD
エリスの天真爛漫なイメージを決定付けているのが、あの無邪気な笑顔を引き立てるヴェリー・ショートのヘアースタイル。そんなエリスと同時代に活躍した〈短髪女子〉と言えば、モッズから熱烈な支持を誇ったジュリー。エリスとは対照的にクールな出で立ちながら、その歌には同質のスピリットが。 *高橋
PIERRE BAROUH 『Vivre』 Saravah(1972)
フレンチ・ボッサの仕掛人、ピエール・バルーは、最初の妻であるドミニク・バルーと歌ったシコ・ブアルキの名曲〈仮面舞踏会の夜〉を、その後エリスともデュエットした。本作はそんなバルーのブラジル音楽への愛情が詰まったデビュー作で、素朴にして洗練された歌が胸に沁みる。 *村尾
PATTI SMITH 『Banga』 Arista(2012)
エリスより1歳下のパンク界の女帝。エリスがトロピカリズモに触発されたように、パティもパンクという革命に身を投じた。エリス同様、子供たちはミュージシャンとして成長していて、その子供たちや旧友であるトム・ヴァーレインも参加したこのアルバムは、彼女の人生が刻み込まれた最新作。 *村尾
MARIA RITA 『Maria Rita』 Warner Bros.(2003)
影響も何も、分身なのだから文句の付けようなし。色眼鏡で見られようとも軽く蹴散らし、大ブレイクしたのだから血は争えない。没後30周年記念として母親のカヴァー・ライヴも行う余裕っぷりだ。このデビュー作では、エリスに見い出されたミルトン・ナシメントがお返しに楽曲提供している。 *栗本
KELIS 『Kelis Was Here』 LaFace/Jive(2006)
数々の破天荒な言動から〈ハリケーン〉なんて呼ばれていたエリス。台風に対して雷、というわけではないけれど、その佇まいは〈サンダー・ビッチ〉の触れ込みで登場したケリスを彷彿とさせるところもある。よりワイドな音楽性を獲得した本作では滋味溢れるサンバ“Have A Nice Day”を披露。 *高橋
AMY WINEHOUSE 『Back To Black』 Island(2006)
エリスのように波乱の人生を送った歌姫と言えば、最近ではこの人。薬物中毒やアルコール依存などさまざまな問題を抱えながら、エモーショナルな歌声でイギリスの国民的なシンガーになった。彼女が歌うサンバなんて聴いてみたかったが、エリスよりも早い死去(27歳)が悔やまれる。 *村尾
ADRIANA CALCANHOTTO 『O Microbio Do Samba』 Sony(2006)
エリスの故郷、ポルト・アレグリが生んだ、もうひとりの天才。激情型と知性派という大きな違いはあるが、実力も人気も比較するには申し分ない。エリスもカヴァーした、これまた同郷のサンバ・レジェンド、ルピシニオ・ロドリゲスをはじめ、さまざまなスタイルによるサンバの解釈も秀逸な一枚。 *栗本
CAETANO E MARIA GADU 『Multishow Ao Vivo』 Universal(2011)
デビュー間もなく、カエターノ・ヴェローゾを筆頭に多くのアーティストからラヴコールを受ける存在となった新進シンガー・ソングライター、マリア・ガドゥ。淡々と歌う姿や繊細なソングライティング能力など、エリスとの共通項は少ないが、人を惹き付ける磁力の強さはもしかしたらエリス以来かも。 *栗本