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特集

創刊30周年、振り返ればそこには2012年……

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2012年12月26日 18:01

更新: 2012年12月26日 18:01

ソース: bounce 351号(2012年12月25日発行号)

構成/編集部

 


アレクサンドラ・スタン

 

出嶌「例年通りの感じではありますが。今年も私以外の諸姉にそれぞれ50枚ずつピックアップしてもらって、それを集計したものにいろいろ手を加えて50枚に絞ってみましたって感じだね。で、3人とも上位10枚に挙げていたのがワン・ダイレクションとカーリーとケンドリック・ラマーかな。あとはAKLOとエミリー・サンデーも上位でした」

加藤「そのあたりの人たちは2012年っぽいですよね」

出嶌「ちょっと同じ体裁で何年もやりすぎてるから、個人的にはもう順不同でいい感じではあるけど。とはいえ、もっとバラバラな感じになるかと思ってたけど、3人のうち2人以上が選出しているものだけで30タイトルぐらいにまとまってたから、決めるの自体はそんなにしんどくもなかったけどね」

加藤「揃いたくて揃ってるわけじゃないですよ」

山西「こうして見ると、ロックが思ったより多い。邦楽は意外に少ないですよね」

土田「少ない」

加藤「少ないは少ないですけど。でも、作品単位で良いものはいっぱいあったんですけど、いざ選ぼうとした時にパッと出てくるものがそこまでなかったんですよね、邦楽に関しては。私はそういう印象でした。ヴェテランのベスト盤がすごい動きが良かったっていう印象はありましたけど……」

土田「邦楽でオリジナル・アルバム出した人だときゃりーぱみゅぱみゅが目立ったんですけど、前年の10位にもう入れてましたし。去年の延長になっちゃうところは多かったですね」

出嶌「そこの話からすると、全体的に去年の延長っぽい感じはあるよね。自画自賛ですが、2011年の〈OPUS OF THE YEAR〉はすごいよくまとまってた感じがしてるんだけど。2012年の動きみたいなものって全体的にはそこでまとめていた感じに近かったんかね」

土田「シーンの形だけそのまま延長してて、前の年に出てきた流れを更新してる人が目立った感じはあります」

山西「そういう意味で続いてるものかもしれないですけど、私はUKのポップものがおもしろかったですね。シェール・ロイドとかオリー・マーズとかもわりとタワレコでヒットしたりとか。まさに延長ですけど。ガールズ・アラウドがこのタイミングで復活してきたりとか、新しい人も昔の人も入り乱れてる感じがおもしろい」

加藤「エミリー・サンデーみたいな人もいたしね」

出嶌「ちょっとなんか格調高い感じもするし、流れで言うともうエミリー・サンデーが1位かなってくらいには思ってたんだけど。ロンドン五輪もあって、2012年のUKモノはブラーがあったりとか、伝統的なモードもあったのかなという感じがするし。とはいえ、アデル以降はUSでもヒットするものが多くなって、やっぱり日本でも紹介されやすいのってUS経由な気がするから、ワン・ダイレクションは良いタイミングでUS進出してたなと思う」

加藤「ワン・ダイレクションみたいなボーイズ・バンド的な感じのって、最近あんまりいなかったからすごい新鮮。しかもイギリス人ってとこがすごいですよね」


オッド・フューチャー

出嶌「NMEの年間チャートとかはもう出てるの?」

山西「テイム・インパラが1位でした。あとは忘れましたけど、フランク・オーシャンとかグライムスとか入ってて……」

土田「わかりやすいですね」

出嶌「よくわかんないけど。まあいいのか」

加藤「ちなみに今年のタワー・チャートも出ましたよ。洋楽TOP20の1位はなんでしょうか?」

出嶌「ウノ!」

山西「ドス!」

土田「トレ!」

加藤「違うよ!」

出嶌「前年リリースのものなんじゃないの? アデルとかLMFAOとかゲッタとかリアーナの前のやつとか……?」

加藤「アデルは3位です。4位LMFAO。マルーン5が2位でした」

山西「1位はノラ・ジョーンズ?」

出嶌「ちょっと行数稼ぎになってるからさ……」

加藤「正解はリンキン・パークでした」

出嶌「それはそれとして、シンプルなセールス・チャートだとそういう感じになるのは当然だし、音楽メディアはインディー寄りの感じが当然イマっぽいって考えになるんだろうし、いい具合にまとめるのって難しいものですね」

山西「リリースされるタイトル数はすごく増えてる気がするんで、選ぶのは大変になりましたけど」

出嶌「まあ、世間一般の売れたものを並べたら最大公約数的な感じになるのはあたりまえだけど、ムード的な部分でそれらしく選んでいってもある程度の最大公約数的な感じになるから、編集部内のまとめでもそれはそれで健全なのかなと思います。……というとこで、これを見てどうですか? だいたいこういう並びで50枚選んだのを踏まえて、どういう感じの年だったか、どういうふうに楽しんでいたかっていうのを一人ずつ訊いてみましょうか」

土田「さっきもちょっとお話ししたんですけど、去年の延長だった部分が大きいので、完全にセレクトする基準はそれと比べてどうか、っていうところで。そのなかではこの前特集でやったメインストリーム・ポップの盛り上がり方はまた別で爆発的なものがあったなと思ったので、私はカーリーやワン・ダイレクションが上位に入れました。邦楽だと1年前の〈OPUS OF THE YEAR〉で紹介してたSALUやAKLOたちが実際にヒットしておもしろかったですね。私、邦楽で選んだのってアイドルとヒップホップがほとんどかも……?」

加藤「AKLOとOMSBとSALUなんかはお便りの量もハンパなかったっていう印象ですね」

山西「お洒落な人もヤンチャな人も聴いてそうな気がする」

出嶌「オシャレというか……全体的に部屋っぽいんだよね。で、そのなかでもズバ抜けて見えるものって、部屋っぽいけど現場っぽくもあるというか。まさにケンドリック・ラマーとかがそうなんだろうけど。イマっぽいもの=ベッドルームっぽいっていうのがありつつ、単に趣味の良さだけに終わらへん作品が支持されたというか」

加藤「こういう、例えばチルウェイヴみたいなのとかがこう流行りだしてから、全体的にこんなムードになってきたような気がするんですけど。何なんですかね?」

出嶌「その流れが続いて、やっと出したXXも素晴らしかったし。とはいえ、総体としてそっち系の雰囲気をさらうだけでおもしろく思えた時期はもう過ぎたと思う」

加藤「ビーチ・ハウスとか作品単位では前のよりいいものも多かったんですけどね」

山西「去年とか一昨年に動きを作った人たちだけに、出てきた時の衝撃が強すぎたのか、逆に今年の顔には見えなかったんですかね。あと、私はなんかこう、今年はインディーっぽいものに飽きちゃって」

加藤「去年も同じこと言ってなかったっけ?」

山西「もともと好きじゃないのかな。そうは言っても去年は聴いてたんですけど、今年は普通にカーリーとか1Dみたいなのがめちゃくちゃ良く聴こえました」

出嶌「インディーものに飽きたというか、特に文句の付けようがないぶん、耳に引っ掛からなくなってきたのはあるね」

 


ヴィンテージ・トラブル

 

山西「アラバマ・シェイクスとかヴィンテージ・トラブルがお店で話題になったのも、その反動なんじゃないかっていう印象で。裏方としてのブラック・キーズだったりジャック・ホワイトだったりが、すごいシンプルなサザン・ロックみたいなのを作ってるのが今年っぽかったな。R&Bのほうではヴィンテージ・ソウルのブームみたいなのがずっと続いてると思うんですけど、それがロックにもきてるなっていう」

加藤「特にヴィンテージ・トラブルは完全に店舗発信だったし、すごい健全な感じだよね」

山西「こういうのレコメンしやすいんですかね」

出嶌「ちょっと黒いロック、ちょっと白いソウルね。その傾向にはまた別で思うところもあるけど……それと関係があるようなないような、アデル以降のあれこれとかマムフォードとか、USの外側で生まれたオールド・アメリカン・グッド・ルーツ・ミュージックみたいなものの流れもあって、欧米の洋楽に関して言うと全体的に保守的とされるものが強かったね。そういうのとEDM系の下世話な流れがいまは両輪になってて……って、これも去年と同じ感想だけど。数年前はその軸のひとつにアーバンものがあったのが、いまはそうじゃない時かなと思いました。たぶん来年は4つ打ちじゃない流れも太くなっていきそうな気がしてるけど」

加藤「私は去年とあんまり聴き方も変わってないなっていう感じで、流行りモノをいっぱい聴いたっていう感じなんですけど。ハマ(・オカモト)くんの連載の影響でソウル/ファンク系をよく探して聴いたりしてて、その流れで歌モノもよく聴くようになったなっていう感じ。R・ケリーとかフランク・オーシャンもそうだし、そのへんを中心にいっぱい聴きました。フランク・オーシャンがいちばんバランスが良かったな。あと、全体的にムードとして部屋の中で聴く用みたいなものが多かったから、そっちも嫌いじゃないですけど、スティーヴ・アオキとかが出てくるとちょっとおもしろかったなっていう。アッパー感が目立ったので、前からいる人ですけど新鮮に映りますよね」

土田「振り幅がすごいですけどね」

出嶌「日本のバンドはどうだったの。あんまりなかったと言いつつ、3人とも50枚に選んでたのはceroだったりする」

加藤「ceroは単純にものすごく良かったっていう」

山西「ライターさんの評価もすごい高いですよね。このあいだ某洋楽アーティストの取材に行ったときに通訳さんがbounceの表紙見て〈cero、チョーいいんだよ〉みたいなのを熱く言ってたり、いろんな人がチェックしてる感じでした」

加藤「日本のバンドだとMAN WITH A MISSIONとか、Fear, and Loathing in Las Vegasとか。ざっくり言うとこのへんのラウド系のバンドが元気だった気がするんですよね。あとはくるり」

土田「くるり、いい作品だと思いますね。今年はビッグな人たちが震災以降の作品を出してきてて、アジカンとかもそうですけど、そのなかではくるりがダントツに良かったかなと思います。あと、禁断の多数決は完全に今年っぽい音だなって思いましたね」

出嶌「そういうことはもっと最初から言ってくれないとさ、邦楽がヒップホップとアイドルだけが元気だったみたいになっちゃうでしょ」

 


LinQ

 

加藤「実際にアイドルが元気だったのは確かですけどね。例えばご当地アイドルみたいな特集とかをいろんなところで年中やってたから、お茶の間レヴェルで名前を見る機会が私ですら多かったし、その時に最初に挙がってくる名前はLinQ、Negiccoとかだったんで」

土田「T-Paletteから出てるからというのはもちろんあるんですけど、タイムリーに紹介できましたよね」

出嶌「LinQは3日ほど前に総長が卒業を発表されたので……アルバムの時にちゃんとやれて良かった。というか、君ら3人がそれぞれモーニングとLinQとスパガを50枚のうちに選んでたのは私的な今年のハイライトでした。まあ、アイドルとかボカロとかK-Popとか扱うと〈最近のbounceは……〉とか的外れなこと言う人もいまだにいるんだけど。大変ですね~とか半笑いで言われたり。別に笑うとこじゃねえよって」

加藤「そんなこと言ってるのは一握りの人ですよ」

出嶌「そうだと思いたいけどね~。去年2位に挙げたももクロぐらい広がりのある人が出てくると説得力が出てくるのは確かだけど、普通に盛り上がってるシーンのひとつとして捉えたほうがおもしろいし、良いのも悪いのも含めて山ほどいろんな作品が出てるから実際におもしろいしね。そうじゃなくても2チェインズにしろトラックスマンにしろ、そこまで幅広い層のリスナーにまだ届いてるわけじゃないし、内輪ノリになりかねないっていう意味ではどのサークルも支持の仕方/され方がアイドルと同じだと思うんだけど」

山西「なかなか他のサークルのものまで聴けるわけじゃないですからね……」

出嶌「そんな感じで……とりとめがなくなってきたんで全体の話をまとめると、よりストレートなものが良かったってことかしら。どうでしょう」

加藤「どうなんですか。奇を衒ったり、ひねくれた感じのチョイスはしてないですよね」

山西「バラバラですけど、この1年の誌面通りの並びだからいいんじゃないですか」

土田「他の媒体でこの並びにはならなそうですね」

出嶌「まあ、こんなん満場一致になるはずない。いまの音楽系の文字媒体って基本的にPitchforkの作る指標を下地にしてる感じだし、どうせPitchforkではケンドリックがNo.1だろうから、他も彼とフランクさんをどこに置くかがポイントになるんでしょ」

土田「確かに、媒体ごとのカラーは感じないような」

山西「趣味の良さをアピールしたいんですかね」

出嶌「それは言いすぎだけど。ただ、急にケンドリックとか言いだしてる人を見ると涙ぐましいというか……」

加藤「それも言いすぎだと思います」

 


andymori

 

出嶌「どっちにしろ店舗ではもっといろんな方面のおもしろい音楽を扱ってるんだから、こういうチョイスになって当然なんだけどね。そんなわけで、2012年の何となくの印象は青春っぽい感じになってるかな。なんというか1DのPVとかであるような、プールでワーッてやってるサマーキャンプ感みたいな。青春っぽい、ピンクとかね。ファンとかカーリーとかテイラーとか、カントリーっぽいのが強いっていう流れとか前の年のホット・シェル・レイとかから繋がってる気もするし、ビーチ・ボーイズもそうかもしれないし。アウル・シティとかゼッドとかEDM寄りのものでもそういう部分は目立ったし。逆に、また名前が出るけど……インディー的な青春ってことだとケンドリックになるんだよね、カニエからドレイクから続いてる感じの。で、その両方あるのがファンだと思ったんだけど」

加藤「日本のアイドルも青春ですよ」

出嶌「そうだよね。なんで強引に終わらせますと……今年のベストみたいなものは誰でもあると思うんだけど、なんか〈ピュアでリアルなグッド・ミュージック〉みたいな指標だけだとつまらないから、それとはまた違う指標のひとつとして個々の年間ベストと照らし合わせてもらえれば、それがいちばん嬉しいかなと思います」

一同「今年もご愛読ありがとうございました!」


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