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カテゴリ : スペシャル

掲載: 2013年01月09日 18:01

更新: 2013年01月09日 18:01

ソース: bounce 351号(2013年12月25日発行号)

文/高橋芳朗

 

新しい年、新しいモードの始まり

 

 

2013年のポップ・ミュージック・シーンは、のっけから大きな山場を迎える。1月、ほぼ同時期にリリースされるトロ・イ・モワの『Anything In Return』と、エイサップ・ロッキーの『Long.Live.A$AP』。インディー・ロックとヒップホップの間にシンパシーのようなものが確実に芽生えていた近年、その双方のムードを牽引してきた代表的なアーティストがこのタイミングで揃い踏みでアルバムを出すことになるなんて、さながら2013年のシーンの興奮を予見しているようでもある。ジャンルを超えてさまざまな音楽メディアの年間チャートを荒らしまくったケンドリック・ラマー『Good Kid M.a.a.D City』が2012年を見事に締め括った現在、お膳立ては完璧に整ったといっていいだろう。

「ニュー・アルバムでは誠実なポップ・ミュージックをつくりたい」という意味深なコメントを残しているトロ・イ・モアの出方も大いに気になるところだが、やはり最注目はケンドリック・ラマー級のセンセーショナルなデビューが確実視されているエイサップ・ロッキーの『Long.Live.A$AP』だ。NYはハーレム出身の24歳、みずからクリエイター集団〈エイサップ・モブ〉を率いるエイサップ・ロッキーは、2011年夏にリリースした“Purple Swag”と“Peso”によってバズを巻き起こすと、たちまちRCA/ポロ・グラウンズとのメジャー・ディールを締結。その後、10月にフリー・ダウンロードで発表したミックステープ『Live.Love. A$AP』が決定打となって広くその名を知らしめた。2011年のエイサップ躍進のインパクトは、彼がフランク・オーシャンやマイケル・キワヌカ、スクリレックスらと共にBBCの〈Sound Of 2012〉に選出されていたことにわかりやすいだろう。

2012年に入ると、エイサップはケンドリック・ラマーとドレイクの北米/欧州ツアー〈Club Paradise Tour〉に参加。それと並行して制作を進めていたのが、この『Long.Live.A$AP』というわけだ。『Live.Love.A$AP』ではヒューストンやメンフィスのヒップホップからの強い影響を窺わせるメロウでドラッギーな酩酊感を前面に打ち出していたエイサップだが、ヒット・ボーイ、40、エミール・ヘイニーなど旬のヒットメイカーをずらりと並べた今回はぐっとソフィスティケイトされたサウンドを獲得。従来よりもアトモスフェリック+ナーコティックな魅力が加わったことにより、近年のインディー・ロックの主流を成すドリーム・ポップやシューゲイズ、ネオ・サイケデリアとの親和性はさらに高くなった。耽美で幽玄な音世界を追求するラナ・デル・レイとの蜜月(エイサップは彼女の“National Anthem”のPVに出演。正式リリースは未定ながら“Ridin'”なるコラボ曲も存在する)にも納得のアプローチだ。

それにしても、こちらの膨張しきった期待感をここまでがっちりと受け止めてくれるアルバムを出してこようとは。昨今のヒップホップとインディー・ロックとの接近(フローレンス・ウェルチをフィーチャーした“I Come Apart”)、新しいビートの台頭(スクリレックスとのトラップ・バウンス“Wild For The Night”)、そしてヒップホップ新時代の到来(ケンドリック・ラマーやダニー・ブラウンら6名の新鋭でマイクを繋いでいく“1 Train”)など、要点と騒ぎどころをベストなゲストを迎えてこんなにも明快に提示してくれたエイサップにわれわれはしっかりと応えておくべきだろう。『Long.Live. A$AP』は2013年最初にして最大のハイライトであり、現行ヒップホップ/ポップ・ミュージックの最前線から送られてきた迫真のレポートでもあるのだ。

 

▼『Long.Live.A$AP』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

左から、ドレイクの2011年作『Take Care』(Young Money/Cash Money/Universal Republic)、ケンドリック・ラマーの2012年作『Good Kid M.a.a.D City』(Top Dawg/Aftermath/Interscope)、2チェインズの2012年作『Based On A T.R.U. Story』(T.R.U./Def Jam)、、クラムズ・カジノの2011年作『Rainforest』(Tri Angle)、スクリレックスの2012年のEP『Bangarang』(OWSLA/Big Beat/Atlantic)、フローレンス+ザ・マシーンの2011年作『Ceremonials』(Island)

 

 

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