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カテゴリ : スペシャル

掲載: 2013年01月09日 18:01

更新: 2013年01月09日 18:01

ソース: bounce 351号(2013年12月25日発行号)

文/轟ひろみ

 

ヘヴィーに弾けるベース・ミュージック!!

 

 

バックパッカーからラップスターへ――フォーリン・ベガーズがそのように形容されていると書けば、レイヴィーなダブステップやドラムンベースで大暴れする彼らの勢いを知る人には以外に思われるかもしれない。が、USタイプの自国産ヒップホップが定着しないUKにあって、そもそもロウカスやストーンズ・スロウなどへの憧れが透けて見えるオーセンティックなヒップホップをやっていた彼らは、だからこそ独自のマナー確立に辿り着いたのであろう。定着しない……というか、同じ英語圏だけにUK産にさほど需要がないだけなのだろうが(USの大物ラップ・アクトは普通に全英チャートの常連だったりする)、マッシヴ・アタックやコールドカットの時代から、その後のディジー・ラスカルやプランB、タイニー・テンパーに至るまでの面々は、だからこそ英国流もしくは我流の〈ヒップホップ〉を編み出してきたのだ。で、フォーリン・ベガーズの場合は、そうやって辿り着いたスタイルが結果的に北米の野郎どもも大暴れさせているというのだから、何とも痛快じゃないか。ニュー・アルバムが『The Uprising』=〈暴動〉と名付けられたのは、そんな現在の彼らの自信の程を示すようでもある。

フォーリン・ベガーズはMCのオリフィス・ヴァルガトロンとメトロポリス、DJのノーネームズから成る2MC+1DJのトリオ。4人組として結成されたのは2002年だが、ドバイで育ったオリフィスはティーンの頃から地元のジャングル・シーンにMCとして関わっていたそうで、現在に至る下地は最初から用意されていたということになる。それでも自主レーベルのデンテッドからデビューした当時の彼らは、(大雑把に言えば)正統派のヒップホップを志向しており、2006年のセカンド・アルバム『Stray Point Agenda』にはストーンズ・スロウからワイルドチャイルドやオー・ノーを迎えていたりもした。

が、同作をリリースした後ぐらいから、彼らはベース・カルチャーと結び付きの強いUK式のMC文化というバックボーンを通じて、徐々に独自性を発揮していくこととなる。デビュー時の楽曲“Hold On”がドラムンベース・ミックスによって再評価されたり、ルージュ・ア・レーヴルと組んだエレクトロ・チューン“Hit That Gash”(2008年)がダブステップ・リミックスで人気を博したりしたことも、彼らの視野を大きく広げたに違いない。そして、2009年のサード・アルバム『United Colours Of Beggattron』はこれまで以上にグライム〜ダブステップを意識したベース・ヘヴィーなトラックが並び、先行シングル“Contact”など数曲ではノイジアと合体(ブレイク前のデヴリンも参加していた)。そのあたりからMC陣の客演仕事もアッパーに多様化し、アリックス・ペレスやジンクといったベース界の大物とコラボを経験し、仲を深めたノイジアの大ヒット作『Split The Atom』にも招かれるなどして経験値を蓄えていく。そして、スクリレックスとのコラボだ。かの『Scary Monsters And Nice Sprites』収録の“Scatta”はフォーリン・ベガーズの名を飛躍的に大きくした。翌2011年に完全レイヴ仕様で発表した配信EP『The Harder They Fall EP』にもスクリレックスとの“Still Getting It”が収録(UKFのコンピなどで聴ける)。そこから、当時スクリレックスの所属していたデッドマウス主宰の旬のブランド=マウストラップとの契約に辿り着いたのだろう。

そして、マウストラップでの第1弾シングル“Palm Of My Hand”やDJ KENTAROの“Step In”参加で話題を撒き、数作のティーザー・シングルを経て完成されたのが、ニュー・アルバムの『The Uprising』だ。当然のように北米ウケするEDMの要素は相当アップしていて、ペンデュラムを脱退したロブとギャレスの新ユニット=ナイフ・パーティーのプロデュースによる“Apex”は直球の轟音ブロステップになっているし、モトリー・クルーのトミー・リー(彼もソロではマウストラップ入り!)を迎えた“Minds Eye”は、ロッキン系のドラムンベースも交えた最高に下世話なレイヴ・チューン。16ビットの片割れだったエディ・ジェフリーズがダビーなレゲエにベースをドロップした“Anywhere”も豪快な一撃だろう。フィラデルフィアのスターキーによる“Never Stop”はトランシーな仕上がりだし、一方でアリックス・ペレスによるUK的なダブステップ“Flying To Mars”もあるし、グライミーなラップ・チューンも要所に飛び込んでくる。トラップっぽい金属ビートを聴かせるブルー・デイジーや、“Scatta”での絡みもあったベア・ノイズなど参加クリエイターたちのアイデア豊かなビート群がそれぞれにラップから熱を引き出していて、これはもうヤバいとしか言えないだろう。

北米で〈発見〉されたEDMやダブステップは、ラスコとサイプレス・ヒルのコラボ作のような成果も生み出しつつ、それ以上に速いスピードで拡散/吸収され、ポップ・シーンにおいて決定的な影響を与えることとなった。そうした状況にシニカルになるのか、圧倒的に下世話な楽しさを受け入れるのか、いずれにせよフォーリン・ベガーズの放つスリリングな熱気はそうした流れの最先端で放たれているのだ。

 

▼関連盤を紹介。

左から、フォーリン・ベガーズの2009年作『United Colours Of Beggattron』(Dented)、スクリレックスの2010年作『Scary Monsters And Nice Sprites』(Mau5trap)、2012年のコンピ『Never Say Die』(UKF)、スターキーの2010年作『Ear Drums And Black Holes』(Planet Mu)、サイプレス・ヒル&ラスコの2012年のEP『Cypress & Rusko EP』(V2/Co-op)、2012年のコンピ『Rub A Duck Presents: Duck Down Dubstep』(Rub A Duck)

 

 

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