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カテゴリ : スペシャル

掲載: 2013年01月09日 18:01

更新: 2013年01月09日 18:01

ソース: bounce 351号(2013年12月25日発行号)

文/轟ひろみ

 

2013年の(も)トレンドセッター

 

 

一連のPerfumeややくしまるえつことの仕事で知られる真鍋大度がPV監督を担当しているということで、先行シングルの“Straight & Arrow”に注目していたという人も多いのではないだろうか。どうしても潜れば潜るほど楽しい音楽だけに忘れがちなことではあるけど、この種のカッコイイ音楽はもっと普通に発見される必要がある。そんなわけで、このトピックが最高のトレンドセッターにちょっとした〈ポップ〉なバズをもたらしてくれることを願いたいものだ。

そう、言うまでもなくフォルティDLことドリュー・ラストマンはトレンドの開拓者に違いない。マイク・パラディナスにその才を見い出されてプラネット・ミュー入りした彼は、ダブステップの影響が多方面に波及していくムーヴメントにあって、スターキーやマシーンドラムらと並ぶ注目を集めてきたNYのクリエイターである。オールド・スクールなシカゴ〜NYハウスの雰囲気を纏ったしなやかなガラージ・トラックを構築しながら、これまでに2枚のアルバムをリリース。特に2作目の『You Stand Uncertain』(2011年)は日本でも早耳たちの間で高い評価を獲得していたものだ。一方ではフォー・テットやマウント・キンビーらのオファーを受けてリミックスを手掛けたり、レディオヘッドがNY公演を行った際にはサポート・アクトに抜擢されたり、着実にキャリアを上昇してきたのである。そんななかでもランプや50ウェポンズなどのさまざまなレーベルから精力的なシングル発表を続けてきた彼だが、その2011年にはニンジャ・チューンから“Atlantis”をリリース。追って正式な移籍も発表され、先述の“Straight & Arrow”などを経て、このたびサード・アルバムとなる『Hardcourage』が堂々の完成を見たというわけだ。

資料にある本人の弁によると、「いままでやってきたなかでも最高の質だと思う。これまででいちばんの出来だよ」と今回の仕上がりには自信たっぷりのようだ。オープニングの“Stay I'm Changed”には往年のベッドルーム・テクノを思わせる内省的なアンビエンスがあり、少なくともこれまでのガラージを基盤にした独自のマナーから作風を一歩先に進めているのは間違いない。ヴォーカルにエド・マクファーレン(フレンドリー・ファイアーズ)を迎えたテクノ・トラックの“She Sleeps”もそうだが、昨今のインディー・ダンスに顕著な陶酔感を柔らかいエレクトロニカ・テイストでもって取り込んでいるのだ。そのニュアンスの濃さが、結果的に90年代リヴァイヴァルというシーンのトレンドから、さらに先へ進んだような印象を残してくれるのかもしれない。ヒプノティックなトライバル・チューンなどアーリー・ハウスのミニマルな気持ち良さをモダナイズした路線ももちろん健在ながら、それもグッとディープなグルーヴを身に付けていて、クォリティーの高さという意味では本人が胸を張る通りだろう。

なお、先行リリースされている日本盤には“Straight & Arrow”のフォー・テットとゴールド・パンダ各々によるリミックスがボーナス収録。年の終わりに聴くか、年の初めに聴くのか……いずれにせよ、2012年と新しい年を驚くばかりの心地良いグルーヴで橋渡しするフォルティDLのスマートなインディー・ダンスは、2013年のトレンドをまたしても先取りする指針のひとつとなっているに違いない。

 

▼フォルティDLの作品。

左から、2009年作『Love Is A Liability』、2011年作『You Stand Uncertain』(共にPlanet Mu)

 

▼関連盤を紹介。

フレンドリー・ファイアーズの2011年作『Pala』(XL)

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