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カテゴリ : スペシャル

掲載: 2013年02月27日 18:01

更新: 2013年02月27日 18:01

ソース: bounce 352号(2013年2月25日発行)

インタヴュー・文/出嶌孝次



新たなパーティー番長をモスクワで発見!



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「モスクワはギャングスタの首都なんだ。美しくて、リッチで、パワフルな街。凄いエネルギーが渦巻いている。ここに来て、自分の目で確かめるといい。クレイジーな場所だってことは保証しておくぜ」。

初っ端からカマしてくれるこの男、ティマティ。モスクワ生まれの29歳で、自身のレーベル=ブラック・スターを切り盛りするロシアきっての人気ラッパーだ。いわゆる〈ワールド・ミュージック〉以外の〈洋楽〉というと、どうしてもUSやUKのシーンを連想してしまうという人は多いだろうし、ロシアの現代的な音楽シーンについて熟知しているという人もそう多くはないだろう。トルコ系とユダヤ系の両親を持つ彼のルーツはUSのアーバン・ミュージックにある。83年生まれということから判断すると、10代に差し掛かった頃にちょうどソビエト連邦の解体があり、そこでUSのヒップホップにどっぷりハマったのだろう。そして、「NWAにドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、パブリック・エナミー、オニクスなんかを聴いて育ち、彼らにインスパイアを受け、ああなりたいと夢見ていた。いつか自分のエンパイアを築き、自分で曲を制作して、シングルをドロップして、ビデオ撮影をしたいと考えていた。幼い頃からずっと彼らを目標にしていたよ」という願望の強さはいつしか成功を手繰り寄せた。グループ活動を経て2枚のソロ作を発表した彼は、2011年にスイスのDJアントワーヌとカリーナ・ハーパー(ダーティ・マネー)とのコラボで“Welcome To St. Tropez”をリリース。これは彼が拠点を置く南仏のリゾート地・サントロペを主題にした超アッパーなダンス・トラックなのだが、これがヨーロッパ各国でTOP10入りする大ヒットとなる。その好機を逃さずに仕上げた3作目『Swagg』は彼にとって初のオール英詞によるアルバムとなった。

「『Swagg』はクレイジーなアルバムだよ。3年半もかかっている。この期間というもの、関係してくれたビッグネームたちと作業をして、マーケットに適合したプロダクションを作るために必死で働いてきた。最上級のレコードを作るためさ。『Swagg』を聴いて、俺が何を言いたいのか確かめてくれよ。汗水垂らしてレコード制作した、その結果さ」。

彼の言うビッグネームとは、本当に文字通りUSやUKのビッグネームだ。ディディとダーティー・マネー、バスタ・ライムズ、ティンバランド、マリオ・ワイナンズ、クレイグ・デヴィッド、イヴ、マン、そして憧れのスヌープ——「USのアーティストたちはロシアで仕事すれば他のどの国と比べても2倍のペイがあるからね」とあっさり話すように、もちろんロシアでクラブなどを経営する彼のエンパイアならではのゲスト・リストでもあるのだろうが、ティンバランドとは実際にマイアミでレコーディングするなど、結果的には単なるカネとデータのやりとりではない関係を築くことで実現したものなのだ。

そしてピットブルやフロウ・ライダーに通じる……というか、彼ら以上に(USではEDMと呼ばれる)ハウス〜トランスへの対応力があるティマティの才気は、実際にポップなダンス・トラックにおいてUS勢にも劣らぬカッコ良さを発揮している。野太い声としなやかなフロウ、そして軽薄にも重厚にも振れる身のこなし。これは無邪気に盛り上がるしかないだろう。

今後は「スヌープ一味の全員に、ウィズ・カリファ、2チェインズ、フレンチ・モンタナ……リック・ロスやカニエ……次もビッグなスターとやりたいと考えているところだよ」と共演希望を列挙するティマティ。自身が帝王になっても変わらぬUSシーンへの憧れは微笑ましくすらあるが、熱意とヴァイタリティーに溢れるこの男なら、時代の空気も味方につけてさらなる野望を実現しそうな気がする。



▼関連盤を紹介。

左から、DJアントワーヌの2008年作『Vive La Revolution』(Clubstar)、ディディ・ダーティ・マネーの2010年作『Last Train To Paris』(Bad Boy/Interscope)、ローラン・ウルフの2008年作『Wash My World』(Ultra)、マンの2011年作『Mann's World』(Beluga Heights/Island)、スヌープ・ドッグの2011年作『Doggumentary』(Doggystyle/Priority)

 

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