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首謀者・矢野貴志が語る〈TOKYO ROCKS 2013〉

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2013年03月06日 17:59

更新: 2013年03月06日 17:59

ソース: bounce 352号(2013年2月25日発行)

構成・文/編集部

 

 

フェス文化が定着したと言われて久しい日本だが、でっかい花火が打ち上げられるのは夏だけじゃなくてもいいだろう……ということで、新緑の季節に東京で開催されるのが〈TOKYO ROCKS 2013〉である。

別掲のラインナップを見ればわかるように、一部発表されている出演アクトの豪華さは言うに及ばず、レジェンダリーなアラン・マッギーが全面バックアップし、あのTOMATOのサイモン・テイラーがヴィジュアルを担当するというセンスは、主催者であるFAECの代表・矢野貴志の美意識に起因するものに違いない。矢野貴志といえばかつてメジャー・デビューも果たしたAMBIVALENCEとしてレフトフィールドなヒップホップを志向し、2003年にはFIVEMAN ARMYを興してスチャダラパーからマッド・プロフェッサーまで幅広い作品を送り出してきたプロデューサーである。そんな彼が〈ROCK〉に何を託すのか……熱意溢れる首謀者に話を訊いた。

 

知性の最前線

――振り返ってみて、2010年から2012年まで行われた前身の〈ROCKS TOKYO〉をどのようなフェスだったと評価していますか?

「〈東京都内で刺激的なロック・フェスを始めよう!〉というストーリーでした。何があっても3年間は開催しようという約束で始まって、有意義な3年間でした。あれが何だったのかということは、これからの時間の経過が評価してくれると思っています。いまはただ、あそこまで自由な発想で実行できて、自分たちも得るカタルシスの瞬間があったので、バンドもオーディエンスも参加してくれた人全員が楽しんでくれたのでは、とポジティヴに捉えています」

――では、前回までの〈ROCKS TOKYO〉と今回の〈TOKYO ROCKS〉との最大の違いを教えてください。

「3年間の第1楽章が完結して、新たな3年間の第2楽章が始まりました。〈TOKYO ROCKS〉はまったく新たな出来事になると思います。これまではドメスティック・キャスティングがメインでしたが、よりインターナショナルなパーティーになっていきます。すでにロンドンの各メディアで〈TOKYO ROCKS〉の開催をアナウンスしたところ、ありがたいことに大きなリアクションをいただいています。その事実が〈TOKYO ROCKS〉の現在を体現していると感じています」

――季節やジャンルを問わず日本でもさまざまな大型フェスが楽しめるわけですが、そういった他フェスと〈TOKYO ROCKS〉の違いは何なのでしょう?

「ヒリヒリした感覚を生々しく伝えていきたいという思いが強いです。例えばキャスティングにしても、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、プライマル・スクリーム、ブラー、illion――彼らに共通するのは、知性の最前線が表現する危うさ、F**kin Insane!と称されてしまう人間の艶というか、そういうある種の美しさを持っているバンド、ミュージシャンであることを基準に持ってキャスティングを行っています。ヴィジュアル・ワークからプロダクト・ワーク、オーディエンスへのコミュニケーションの形など、そういったフェスを形成している要素すべて、従来からのいわゆる〈ザッツ・フェス!〉的なイメージにはしたくなくて、異なるアプローチをめざしています。それらの一貫として、2013年の東京の街で起こっているリアリティーや声をこのフェスを通じて体現していけたらと思っています。ビジネスとしての安定感や、産業化したプロセスを第一に優先してしまうと大事な部分が失われることも多いし、何だかしらけてしまいます。いまは誰かに期待するってことより、自分たちでリスクをとってやってみるつもりです。要するに、最大公約数的な眼差しで捉えた時にいちばんイカれたものをやりたいんです。それを結実させるために、毎日現場的立場から実現性を検証しています。国際大会が開催できるレヴェルのホスピタリティーを誇るスタジアムと、最高レヴェルの運営チームが支えてくれて、初めて僕たちが自由度を最大限に活かせると考えています。ぜひ期待していてほしいです」

 

アランはクレイジー

――NME誌のインタヴューによると、昨年プライマル・スクリームをブッキングする際にアラン・マッギーの助力があったようですが、それ以前からアランと付き合いがあったのでしょうか。

「アランとは20年くらい前から交流はあって。共通の友達も多くて。僕たちのサークルのボスって感じです(笑)。本当に楽しくて、クレイジーで、いつも僕たちを笑わせてくれます」

――矢野さんから見て、アラン・マッギーとはどういう人物像ですか?

「物事の判断基準が〈ロックンロールだからやろうぜ!〉ってだけの人で、この感覚は直に触れてもらわないと伝わりにくいかもしれないですけど、その感覚がノエルやボビーたちを虜にしたのはよくわかります」

――今回の出演ラインナップは特に驚きを持って受け止められていると思います。いま発表されているMBV、プライマル、ブラーの三本柱だけでも訴求力のある顔ぶれだと思いますが、どうやって実現できたものなのでしょうか?

「いま僕はロンドンと東京を行き来する生活なのですが、そんな日々から起こった出来事です。アランをはじめ、昔からの友達との繋がりから実現した感じですね」

――出演アクトについて、1リスナーとしての印象や思い出を教えてください。

「ヴァレンタインズは僕にとって特別な存在です。誤解を恐れず言えば……絵画で例えると、21世紀の印象派的なものを感じると言いますか……。言葉と音像の抒情的な溶け合いと暴力的な狂気をない交ぜにした音楽は、彼らが成し遂げた発明だと思っています。20年前に体験したライヴが強烈すぎて、いまでもあのライヴを超える体験はありません。いまも知性の最前線を更新し続けていると思う。プライマルズは、やはりあのさまざまなジャンルを縦横無尽に試みて、ロックンロールの可能性を見出そうとする求道者的姿勢と、それに相反するかのような、ボビーのロックスター特有の退廃的な佇まいの同居に色気を感じますね」

――ブラーはどうですか。

「シニカルでサーキャスティックな刹那が、音楽シーンに現れたサリンジャーのように感じます。日々の痛みをイギリス的な歴史観で歌う“End Of A Century”や“Country House”が凄く好きです。〈カントリーハウスに住む若きビリオネアがプロザックを飲んでバルザックを読む〉——あんなにあっけらかんとしたポップソングから、若きロックスターの苦悩が生々しく伝わってきて、グッときます。少し踏み込んだ知的欲求に応えてくれるジョークがスコッチのように、強く長く効く味わいがある。いろんな視点から、現在もっとも刺激的なバンドであると思います」

 

都市と呼吸するフェス

――そんななかで登場するのがillionです。〈ROCKS TOKYO 2010〉にRADWIMPSが出演されて以来の縁だと思いますが、彼の音楽をどのように評価していますか?

「“オーダーメイド”は圧倒的な体験でした。“Imagine”以降、初めて真理をアップデートした曲だと思います。“BRAIN DRAIN”で姿を現した独創的な才能は、これから日本を代表するオピニオンとして、音楽界だけではなく、多くの文化に影響を与えるであろうと考えています。野田洋次郎登場以降、日本文化の機微や痛みの時代感や、従属変数的にさまざまなコントラストが変わってしまったと思います」

――アートディレクションはTOMATOのサイモン・テイラーが担当していますね。

「ロンドンで出会ったのが94年だったと思うので、サイモンとも20年の友人です。何かクリエイティヴのことで相談すると、想像以上の解を提示してくれるので、いつも刺激的な関係です。毎週のようにどこかで遊んでいたりするので、純粋な友人でもありますが。ロックは、音楽とライフスタイルでイデオロギーを体現するプロセスだと信じています。今回のメイン・ヴィジュアルのテーマは、〈10年以上生き続けられるモダン・アート〉。テイト・モダンにコレクションされるような純度の高い表現をしてみようと話しています。ファースト・プレスはカンヴァスに刷って、アーティストや友達にプレゼントします。欲しいというお客様がいらっしゃれば、大量生産は困難ですが、できるだけ皆様にお届けしたいと思っています」

――そのように大掛かりなイヴェントを、いまの東京で開催することについてのこだわりを教えてください。

「都市と呼吸する、ということが大義としてあります。アジア最大の都市に熱量を付加できたら嬉しいです。僕は過去、英国ではロンドン、ウェールズ、他にもパリや東京と、いろんな街でボヘミアンのように生活した時期があったのですが、それらの記憶を照らし合わせて見てみると、東京は都市としてのインフラは世界最高レヴェルだと感じました。しかし、同時に文化的な出来事やその理解は、極端に少ないという現実も感じます。だから、自分たちのような若い世代が楽しめるように始めてみる試みが、〈TOKYO ROCKS〉です」

 

▼矢野貴志の関連盤。

左から、2003年のコンピ『FIVEMAN ARMY』、スチャダラパーの2005年作『CON10PO』(共にFIVEMAN ARMY)

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