こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2013年03月27日 18:00

更新: 2013年03月27日 18:00

ソース: bounce 353号(2013年3月25日発行)

文/金子厚武

 

福岡から全国へとその名を急速に拡大中の、大胆不敵な3人組!

 

 

誰もがまた新たな女性シンガー・ソングライターの登場だと思うだろう。しかし、それは半分正解で、半分はずれ。黒木渚とは、全曲の作詞作曲を手掛けるフロントマンの黒木渚を中心とした3ピースなのである。例えば曽我部恵一BANDのように、名前をバンド名に使うケースは珍しくないものの、名前がそのままバンド名になっているというのはなかなかに大胆不敵で、彼女たちのキャラクターをよく表している。

ファースト・シングル“あたしの心臓あげる”が話題を呼ぶなかでリリースされる初のミニ・アルバム『黒キ渚』は、USオルタナティヴ・ロック譲りのざらついたギター・サウンド、エモーショナルで艶のあるヴォーカル、リリカルで美しいメロディーといったバンドの魅力がギュッと凝縮された一枚だ。サウンド・プロデューサーに根岸孝旨と會田茂一、ゲスト・ギタリストに同郷・福岡出身の田渕ひさ子(bloodthirsty butchers/LAMA他)と、會田とは髭で同じバンド仲間の斉藤祐樹。その道のトップランナーを揃え、盤石の体制で制作されている。

根岸と田渕の関わった“あたしの心臓あげる”が、メロディーの良さをストレートに活かしたミディアム・チューンであるのに対して、會田と斉藤の関わった2曲──バンジョーとトランペットによるジプシー風の“クマリ”やサイケデリックな“エスパー”は、髭に通じる捻くれた遊び心があっておもしろい。一方、オルガンと昭和歌謡風の歌い回しがキノコホテルにも近い“赤紙”や、ラストを締め括るピアノ・バラード“砂金”などでは鍵盤も効果的に用いられ、楽曲ごとの個性を上手く引き出しているのも見逃せない。

最近シーンに登場する新世代の女性アーティストの多くがそうであるように、人間の持つ影の部分を前提とした歌詞は、ダークな色合いが強い。しかし、戦争で父親を亡くした踊り子の悲哀を描いたかと思えば、スプーン曲げをするエスパーについて歌ってみせたりと一筋縄ではいかない部分もあり、本作で随一の伸びやかな歌声を聴かせる“骨”からは、決して後ろ向きではない、固い信念のようなものも感じられる。九州から全国へと知名度が上がるなかで、きっと表現者として腹を括りつつあるのだろう。その行く先を見届けたい。

 

▼関連作を紹介。

黒木渚の2013年のシングル“あたしの心臓あげる”(ラストラム)

インタビュー