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feeling blue, but——青春は晴れのちフォンデルパーク

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2013年04月03日 17:59

更新: 2013年04月03日 17:59

ソース: bounce 353号(2013年3月25日発行)

構成・文/藤本もこ

 

青春は晴れのちフォンデルパーク

 

 

「これから大人になる若い人たち向けの作品だと思う。歳を重ねて置いていく何か、そしてそこから築き上げる何か。聴いてくれる人たちが僕らの曲のテーマに共感して、10代の頃の遊び心を思い出してくれると嬉しいね。初めて女の子を乗せてドライヴして、夕日が沈むのを見たときみたいな時代をさ」。

誰もが通過してきた、そしていまでもベッドルームへ不意に訪れるブルーなフィーリング。『Seabed』=海底と名付けられたデビュー作について、ヴォーカルのルイス・レインズバリーはこう語る。彼が幼馴染みのアレックス・バレー、マット・ロウと共に結成したこのフォンデルパークは、2枚のEP『Sauna EP』『NYC Stuff And NYC Bags EP』でも顕著だったように、時代に素直なメランコリーを纏い、今年30周年を迎えるR&Sの新たなフェイズを象徴するバンドとして注目を集めてきた。

ダンスフロアではなくベッドルームに向けられたノスタルジックな情感は、昨今の匿名性を個性とするチルな潮流にも乗りながら、オランダに実在する〈フォンデル公園〉をバンド名に冠していることについては――「バンド名を決めるのって大変だよね。いろんな意味でバンドのムードやトーン、ペースとかのイメージが付いて回るし。特にバンド名によって人々が抱く錯覚を心地良く思えないことだってあるだろうし。だから〈フォンデルパーク〉って名前を使うことで、そういう心配をできるだけしないで済むかなって思ったんだ。匿名性をキープできそうというか。僕らの音楽みたいに、繊細なイメージがあると思う。でも僕らのイメージが定着すればいいなって思ってるよ」と、取り立てて悪戯な意図はないようだ。

しかしどうだろうか、完成したファースト・アルバム『Seabed』では、早くもその匿名性というカンヴァスに、自身の色を鮮やかに塗しはじめている。特筆すべきは一聴して耳を奪われてしまう、レインズバリーの滋味深いヴォーカルだろう。EPではピッチベンドやエフェクトを多用し、あくまで楽曲におけるメランコリックな符号としてフィーリングを添えるように機能していたその声は、一糸纏わぬ姿を露わにして聴き手へ寄り添い、そしてベッドルームのあまねく孤独を温かく代弁する。本作のプロデュースも行ったレインズバリーは、レコーディング中はバンド・メンバー以外の人とほぼ会わなかったそうだ。

「それは事実だね。でも意図的ではなかった。とはいえそれが影響して、静かでダウンテンポなものになった曲もいくつかあると思う。いままた盛り上がってるダンス・カルチャーから距離を置いてしまったからね。いまの世の中にフィットしたアルバムだと思うけど、R&Sのなかで言えば、長い夜が終わる頃に聴く作品になるんじゃないかな」。

海外では〈まるでXXがリミックスしたシャーデーのよう〉とも言われている彼らだが、レインズバリーの歌声をよりストレートに聴き手へ届けるよう、バンド・サウンドの再生を促したのは、何を隠そうジェイムズ・ブレイクを育て上げた彼らのマネージャーの進言だったそう。先述の『Sauna EP』に収録された“California Analog Dream”の再録は、オリジナルではあくまで素材としてレコーディングされたバンド・サウンドが、空気を震わせるように歌うヴォーカルと有機的に絡み合って、新たな魅力を携えている。

また、本国で昨年2マン・ライヴを行ったというジェイムズ・ブレイクとは、今後良くも悪くも比較を余儀なくされるであろう状況についてはこう語っている。

「ジェイムズ・ブレイクは素晴らしいプロデューサーだよ。だけど僕らの好きなアーティストっていうのは、ティンバランドからテイム・インパラ、ロバッグ・ルーメ、ポール・ホワイト、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、レディオヘッドまで幅広く存在してる。そしてその幅広い影響をそれぞれ反映させて、僕らの音楽のなかでどう関連付けていくかが大切だと思ってるよ」。

そう釘を刺しながらも、「音作りに関してはピュアでオーガニックなものにしたいんだ。圧縮したサブベース、フラットなキック、人工的なリヴァーブを使う流行には乗らずにね。僕らが好きなモータウン作品のサウンドの特徴にも通じる部分があると思ってて、それを上手く進化させていきたい」と前を向く。

アーサー・ラッセルをお手本に、とにかく普遍的かつポップであることに注力したというこのアルバムは、プロフィールやシーンという暖簾をくぐらずとも、彼らの音楽がそこに辿り着いているのは自明だ。それを表すのが、ムーディーなダウンテンポ・ソウルを奏でる本作の終盤にある、陽光をたっぷり吸いこんだようなダンス/トラック“Bananas(On My Biceps)”。

「聴く人を心地良くさせるのはすごくエキサイティングだし、この次は人をダンスさせることも意識したいって思ってるよ」。

空中キャンプならぬ、〈海底キャンプ〉とも言うべき傑作を生み落とした彼らには、すでに次のヴィジョンが見えているようだ。

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