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Never Stop——再臨したブランニュー・ヘヴィーズ

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2013年06月19日 18:01

更新: 2013年06月19日 18:01

ソース: bounce 355号(2013年5月25日発行)

文/出嶌孝次



再臨したブランニュー・ヘヴィーズ



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アシッド・ジャズ(・レーベル)の勃興とほぼ同時に表舞台に登場し、そのムーヴメントの発展と歩みを同じくしてビッグになってきたブランニュー・ヘヴィーズは、本人たちが望まなくてもアシッド・ジャズという言葉を体現する存在だと思われてきただろう。このたび登場した7年ぶりのオリジナル・アルバム『Forward』が同時期に登場する諸々と結びつけて語られるのも、BNHの存在こそがムーヴメントの現在地を示しているという証拠なのかもしれない(逆にほぼ毎年リリースのあるインコグニートがアシッド・ジャズとそのままイコールで語られることが少ないのもおもしろい)。とはいえ、彼らは90年代半ばにブームが沈静化してからもストップしたことはない。

80年代半ば、レア・グルーヴで盛り上がるロンドンのクラブ・シーンにおいて、昔のレコードをプレイする代わりにバンドでレア・グルーヴ的なジャズ・ファンクを奏でたBNHは、88年にクールテンポから最初のシングル“Got To Give”をリリース。翌年にアシッド・ジャズに移籍すると、90年にはジェイ・エラ・ルースをヴォーカルに据えてアルバム・デビューを果たした。この時点では鍵盤奏者のセリ・エヴァンス(後のサンシップ)やサックス奏者らを含む大所帯だったが、USで契約したデリシャス・ヴァイナルとの縁からエンディア・ダヴェンポートがパーマネントなシンガーとして定着していく過程で、演奏メンバーはヤン・キンケイド(ドラムス他)、サイモン・バーソロミュー(ギター他)、アンドリュー・レヴィ(ベース他)のトリオに固まっていく。相性抜群なシンガーを得たバンドは“Dream Come True”などをヒットに導き、日本でもポピュラーな存在となった。が、人気の“Dream On Dreamer”を収めた『Brother Sister』(94年)を最後に、ソロ活動への復帰を望んだエンディアが離脱。しばしの空白を経てサイーダ・ギャレットを新ヴォーカリストに選んだBNHは『Shelter』(97年)を発表、そこからは“You've Got A Friend”がチャート上で最大のヒット(全英9位)を収めている。以降はアシッド・ジャズ時代を共に生きたカーリーン・アンダーソン、フューチャリスティックなソロ作で知られるサイ・スミス、ワイルドスターからデビューしていたニコール・ルッソ……と作品ごとにシンガーを替えながらコンスタントに作品をリリース。そして2006年にはエンディアが復帰して『Get Used To It』を発表し、変わらぬコンビネーションの良さを見せつけた。今回の『Forward』はそれ以来のオリジナル作となる。

写真からもわかるように、今回のエンディアはゲスト参加の扱いになり、新顔のドーン・ジョセフとそれぞれ3曲ずつのリード・ヴォーカルを任されている(他にはヤンが3曲、サイモンが2曲でリードを担当!)。サウンド的には何も変わらないようでいて時代の空気を吸収しているのは確実だろう。ブギーとして再定義されるようになったディスコ・フレイヴァーを意識したような楽曲もあるし、ハウスもレゲエも取り込むセンスの良さは相変わらず。サルソウルの翻案めいたインストもあるし、ダフト・パンクの新作と並べてもらってもいいし、邦楽で言うところの〈アーバン〉味もあるし……流石はレア・グルーヴ育ちのバンドというか、単なる懐古演奏隊とは背骨の入り方が違う。このセンスこそをアシッド・ジャズと呼ぶなら、その通り、BNHこそがアシッド・ジャズだ。

今後はラッパーとのコラボ作第2弾『Heavy Rhyme Experience Vol. 2』が期待されるBNH。彼らもアシッド・ジャズも、余裕で健在である。



▼ブランニュー・ヘヴィーズの作品を一部紹介。

左から、97年作『Shelter』(FFRR)、2006年作『Get Used To It』(Delicious Vinyl)、20周年記念ベスト盤『The Best Of 20 Years』(Rhino)

 

▼関連盤を紹介。

左から、サイ・スミスの2012年作『Fast And Curious』(Psyko!/Purpose)、サイーダ・ギャレットの88年作『Kiss Of Life』(Qwest)、カーリーン・アンダーソンの2005年作『Soul Providence』(Dome)

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