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JUST WANT TO BUILD UP TENSION!!!——UKを中心に世界中を席巻した〈エイジアン・マッシヴ〉とは何だったのか?

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2013年07月31日 18:00

更新: 2013年07月31日 18:00

ソース: bounce 357号(2013年7月25日発行)

文/池田謙司



90年代半ばに起こった〈エイジアン・マッシヴ〉とは、UKに住むインド系のアーティストが中心となり、南アジアの伝統的な音楽とエレクトロニック・ミュージックを融合させたムーヴメントのこと。ちなみにここで指す〈エイジアン〉は、インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカをルーツに持つ人々で、その他のアジア圏は含まないのでご注意を。もちろんそれ以前にも、例えば70年代末にはパンジャブ地方の古典音楽であるバングラをモダンに解釈したバングラ・ビートが隆盛し、在英アジア人のユース・カルチャーとしてアンダーグラウンド・レヴェルで支持された……という例はあります。しかし、コミュニティーの外側を巻き込んでの大きな動きには至りませんでした。

それが90年代に突入すると、ビョークが『Debut』でタルヴィン・シンをゲストに招いたり、ジェイムズ・テイラー・クァルテットがニティン・ソーニーをメンバーに迎え入れたり、キレ者たちのフックアップもあって注目を集めるようになります。さらに、〈バングラガ〉を標榜するアパッチ・インディアンが93年に“Boom Shack-A-Lak”を大ヒットさせ、イレイジャーやスージー&ザ・バンシーズがリミキサーに南アジア系のクリエイターを次々と起用するなど、広い意味で〈インド感〉みたいなものが求められるようになっていきました。そして、強烈なアジテーションでADFの兄貴分として位置付けられていたファン・ダ・メンタル、ギター・ポップとクラブ・ミュージックを結び付けたコーナーショップらが間髪入れずに紹介され、シーンは短期間でどんどん拡大。〈エイジアン・マッシヴ〉という言葉自体は、2000年以降にはほとんど使われなくなりましたが、ブームが去ったというより、音楽シーンのなかに定着したと僕は考えています。それを裏付けるように、上記で名前を挙げた面々や本特集の主役であるADFをはじめ、トランス・グローバル・アンダーグラウンドにパンジャビMCなど、〈エイジアン・マッシヴ〉括りで同時期にデビューしたアーティストのほとんどがいまも現役で活躍していますからね。

最後に若手に目を向けておくと、キャッシュ・マネーの一員であるジェイ・ショーン、カレン・カーペンターやキャロル・キングを引き合いに出されるルーマー、ビョーク的な音世界で話題のバッド・フォー・ラッシェズなどが奮闘中。「The X Factor」で人気を博した〈魚売りラッパー〉ことワン・ポンド・フィッシュ・マンは例外として、意識的に〈インド感〉を打ち出すことなく、いまでは普通に楽しまれているのがおわかりいただけるでしょう。



▼関連盤を紹介。
左から、タルヴィン・シンの98年作『OK』(Universal)、ニティン・ソーニーのニュー・アルバム『One Zero』(Metropolis/Cherry Red)、ファン・ダ・メンタルの2006年作『All Is War』(5 Uncivilised Tribes)、8月7日に日本盤化されるジェイ・ショーンのニュー・アルバム『Neon』(Jayded/Cash Money/Republic/ユニバーサル)、ルーマーの2010年作『Seasons Of My Soul』(Atlantic UK)、バッド・フォー・ラッシェズの2012年作『The Haunted Man』(Capitol)

 

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