こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

NEW WAY NEW LIFE——旧友と再会し、次なる戦いに向けて新たな道を切り拓く!

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2013年07月31日 18:00

更新: 2013年07月31日 18:00

ソース: bounce 357号(2013年7月25日発行)

インタヴュー・文/青木正之



AsianDubFoundation_Amain



Drダス(ベース)、ゲットー・プリースト(MC)、ロッキー・シン(ドラムス)と元メンバーが一挙に集結したADFのニュー・アルバム『The Signal And The Noise』。今作の誕生には、95年公開の映画「憎しみ(原題:La Haine)」が深く関わることになった。前作『A History Of Now』のリリース後、バンドはある団体から「憎しみ」の上映イヴェントでのプレイを打診される。その団体とはフューチャー・シネマで、彼らが主催する〈シークレット・シネマ〉への参加だった。

「場所はブロード・ウォーター・ファーム。一昨年のロンドン暴動が始まった場所だ。ADFにぴったりの企画で、それを実現してくれた〈シークレット・シネマ〉は本当に素晴らしいと思う。あの企画はADFのキャリアにおけるハイライトだよ」。

バンドのリーダー、チャンドラソニック(ギター、発言:以下同)が手放しで賞賛する〈シークレット・シネマ〉はインタラクティヴな映画上映会としてロンドンで話題の企画だ(詳しくはネットで検索してみて!)。

「イヴェント主催者から連絡があって、俺にこう言った。あなたたちが2001年にバービカン(商業施設の名前)で映画〈憎しみ〉のサントラをライヴ演奏したときは感動しました。私にとって大きなインスピレーションとなり、それがきっかけで〈シークレット・シネマ〉を立ち上げることにしたのです──と。それを聞いてビックリしたよ。冗談だろと思った」。

そんな経緯から、ふたたび映画「憎しみ」のサントラを演奏しようと決意したチャンドラソニックは、当時のメンバーに声をかけることに。

「このイヴェントがあったから、ふたたびプレイすることになり、それ自体がとても刺激的だった。いっしょに演奏できて気持ち良かったよ!」。

ここでの再会がアルバム制作へと直結していく。そして、復帰メンバーと共に新作へ大きな影響を与えたのが、プロデューサーのエイドリアン・シャーウッド。2001年に行った「憎しみ」のサントラをカヴァーするプロジェクトを経て作られた、2003年作『Enemy Of The Enemy』以来となる顔合わせだ(ちなみに、同作には映画にインスパイアされたその名も“La Haine”を収録)。

「エイドリアンの良いところは物事の進め方が非常に早いこと。今回のアルバムでは、俺たち全員を大きな視野で見てまとめ上げる存在が必要だったんだよ」。

これまでゲスト・プレイヤーとして魅惑的なフルートやヒューマン・ビートボックスを披露してきたネイサン・リーの正式加入もあり、バンドのポテンシャルが飛躍してADFの構想も膨らんだそうだが、「拡散するさまざまなアイデアのなかから、具体的な何かを生み出すという作業はとても時間がかかった」という問題も発生した。それを救ったのが〈大きな視野でまとめ上げ〉、良い方向へと導いたエイドリアンに他ならない。スペイシーなダブに刺激的なギター・プレイとノイズが交錯した先行シングル“Radio Bubblegum”は、もしかしたら彼なくして出来上がらない曲だったかも。

「あれはクレイジーな話だよ! “Radio Bubblegum”の元はジャムった時に生まれたんだ。気に入ったから〈シークレット・シネマ〉の最後にプレイしたんだよ。ジャムだから構成がまったくなく、ギターのモチーフだけなんだけど、せっかくだからレコーディングも行った。そのヴァージョンは11分。それはそれで結構おもしろい出来だった。エイドリアンはそのトラックを他のトラックといっしょにLSKに送ったらしいんだよ。で、エイドリアンとLSKのどちらの仕業かはわからないけど、戻ってきた曲は3分半にまとめられ、歌詞も付けられてキャッチーになっていた。素晴らしいサプライズだったね!」。

こうして完成したアルバムには、ダスの重厚なベース、ネイサンのワイルドなフルート、チャンドラの鋭いギターが絡んで混沌とした世界を描く“Zig Zag Nation”、ヴォーカルとギターの一部をカルカッタで初めてレコーディングしたというインディアン・ジャングル“Bnadh Bhenge Dao”、ヒーリング効果のある穏やかなヴォーカルが印象的なアンビエント・ダブ“Your World Has Gone”など、新体制ならではの活き活きとしたサウンドが詰まっている。とりわけベースとフルートの活躍ぶりは特筆すべきで、それらにつられたか、チャンドラのギター・ワークに普段以上のキレを感じるのは気のせいじゃないだろう。それにしたってメンバーの入れ替わりがあるとはいえ結成してから20年、いまだ衰えない、いやむしろ若返った感もあるADFのフレッシュさは驚異的である。



▼関連盤を紹介。
左から、エイドリアン・シャーウッドの2012年作『Survival & Resistance』(On-U)、LSKの2003年作『LSK』(Epic)

インタビュー