NOW, THEN AND...――現EW&Fについて関連作を紹介
各メンバーのソロ展開、外部活動という話になった時にも、どうしたってモーリス・ホワイトの話が多くなってしまうのは仕方がない。が、カリンバ・プロダクション〜ARC関連作品の紹介は本誌2011年8月号のソウル・ミュージック連載でまとまっているので、ここでは現在のコア・メンバーについて関連作品を紹介しておきたい。この活動履歴こそが、EW&Fがモーリス・ホワイトのワンマン軍団ではなく優れたシンガー/ミュージシャンの集合体であることを証明してくれるだろう。
まずはモーリスと双頭ヴォーカルを担ってきたバンドの顔=フィリップ・ベイリー(写真中)はフロントマンだけに当然ソロ・アルバムが多く、ゴスペルやジャズなど固有のテーマを設けたものも含めてすでに10枚近いソロ作をリリース済み。世俗音楽での初作となる83年の『Continuation』はジョージ・デューク制作のEW&Fにニアなアプローチだが、別掲した『Chinese Wall』からはチャレンジ精神も増し、世俗3作目の『Inside Out』(86年)ではナイル・ロジャーズをプロデューサーに招いている。EW&F×シックというのもなかなかないだけにこれは廃盤になる前に入手してほしい。近年はソロこそ途絶えているものの、往時のフォープレイに始まり、ボニー・ジェイムズやジェラルド・アルブライトといったスムースジャズ系の大物から声を求められることも多い。また、彼は70年代には創作意欲を外に向けて発散していたのか、ロバート・ナン(後のボビー・ナン)がリード・ヴォーカルを担当する7人組バンドのスプレンダーの79年作『Splendor』や、ダズ・バンドの前身にあたるキンズマン・ダズの78年作『Kinsman Dazz』においてはプロデューサーとしても腕を振るっていた。
そして、そのキンズマン・ダズ作品でフィリップと共同プロデュースを担当していたのがパーカッショニストのラルフ・ジョンソン(写真右)だ。EW&F休止中に成果を上げたラルフの外部仕事と言えば、先に脱退していたアル・マッケイと共同で手掛けた80年代テンプテーションズ屈指の名曲“Treat Her Like A Lady”に尽きるだろう。アルとの仕事ではフィニス・ヘンダーソンの『Finis』でもサポートに回っていて、なかなかの名コンビぶりを見せていただけに後が続かず残念ではあった。
そして、40年間風貌が変わらないヴァーディン・ホワイト(写真左)は、基本的に兄モーリスのプロデュース作で演奏するなど前に出る感じではなかったが、EW&Fの弟分バンドと呼ばれたカリンバ・プロ所属のバンド=ポケッツをロバート・ライトとのコンビで面倒を見ていた。トム・トム84など周辺の人脈を贅沢に動員した77年の初作『Come Go With Us』は〈ボトムの効いたEW&F〉という感じでイケるはず。また意外なところでは、英国のシンセポップ・バンド、レヴェル42のプロデュースをラリー・ダンと手掛けたのも重要だ。
そのラリー・ダンは83年のバンド休止期に離れて以来いちども復帰はしていない鍵盤奏者だが、今回の『Now, Then & Forever』では助っ人的に特別参加……のわりには大活躍している。外部仕事ではラムゼイ・ルイスの快作『Tequila Mockingbird』(77年)において単独で3曲を手掛けていたり、レニー・ホワイトやスタンリー・タレンタインなどジャズの面々と演奏することが多い。自作としてはラリー・ダン・オーケストラとしてのアルバムも残している。それ以外のEW&Fメンバー関連曲はCD化のないものも多いが、楽曲単位ならコンピ『Wonderland - The Spirit Of Earth Wind & Fire』で容易にチェックが可能だ。
なお、現在のネオ・ソウル的な再評価を決定づけたスタックス発のEW&Fトリビュート盤『Interpretations: Celebrating The Music Of Earth, Wind & Fire』、EW&Fとしての最新客演作としてLLクールJのアルバムがあることもお伝えしておきたい。
*モーリスのプロデュース作やカリンバ・プロの作品詳細はこちらの過去記事をご覧ください!
▼関連盤を紹介。
左から、フィリップ・ベイリーの83年作『Continuation』、フィリップ・ベイリーの86年作『Inside Out』、スプレンダーの79年作『Splendor』(すべてColumbia/ソニー)、キンズマン・ダズの78&79年作の2in1『Kinsman Dazz/Dazz』(Expansion)、テンプテーションズの84年作『Truly For You』、フィニス・ヘンダーソンの83年作『Finis』(共にMotown)、ポケッツの77年作『Come Go With Us』、ラムゼイ・ルイスの77年作『Tequila Mockingbird』(共にColumbia/ソニー)、EW&Fメンバーの関連ワークスを集めたコンピ『Wonderland - The Spirit Of Earth Wind & Fire』(Expansion)、モーリス・ホワイトが監修した2007年のEW&Fトリビュート盤『Interpretations: Celebrating The Music Of Earth, Wind & Fire』(Stax/Concord)、EW&Fが客演したLLクールJの2013年作『Authentic』(429)あ